【VW ゴルフGTI 新型試乗】先代の荒々しさは消え、歴代最上の洗練度に…島崎七生人 | Push on! Mycar-life

【VW ゴルフGTI 新型試乗】先代の荒々しさは消え、歴代最上の洗練度に…島崎七生人

◆マニアックなクルマとしては異例の販売台数
◆洗練されたハイテクコンパクトスポーツ
◆ファミリーカーとしても通用する懐の深さ

自動車 試乗記
VW ゴルフGTI
  • VW ゴルフGTI
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初代VW『ゴルフ』が日本に導入されたのは1976年。以来、2020年末までのシリーズ累計販売台数は91万5000台だそう。このうち「GTI」は6万4000台以上というから、なかなかのボリューム。ひと頃TVで流行ったリアクション風に言えば「へえ~!」である。

マニアックなクルマとしては異例の販売台数

もともと初代GTIは75年のIAA(フランクフルトショー)で初公開、市場の反響を受けて当初5000台の生産計画から、最終的に46万1690台(!)が生産された。「GTIクラス」なる言い方まででき、同様のライバル車が追従したのはご承知のとおり。7型までの累計販売台数はグローバルで実に230万台以上という。マニアックなクルマとしては異例の台数が世に出たことになる。

ところで初代GTIには、筆者も並行輸入で日本に入ってきた個体……小さいバンパーのごく初期型だった……の試乗経験がある。1.6リットル、ボッシュKジェトロニック、110ps。回すとパワーが炸裂する実にピーキーなエンジンだったが、(昭和な表現で恐縮だが)とてもゴキゲンなクルマだったと記憶している。

赤いグリルの縁取りや黒いフェンダーアーチモール、ブラックアウトされたリヤゲートなどでさりげなく差別化したGTIルックの、まさに憧れの存在だった。そして晴れて正規輸入が始まった2型の最初のSOHC版のGTIは、初代とは打って変わって、出足から息の長い加速が楽しめるクルマに進化していた。

洗練されたハイテクコンパクトスポーツ

ここで最新の8型GTIに(やっと)話を移すと、新型の謳い文句は「デジタル時代に向けた、ピュアかつ効率的でハイテクなコンパクトスポーツカー」だ。確かに実車は、ドアを開け運転席に乗り込むと、チェック柄のシートこそGTIだと意識させるも、最新の8型に共通のデジタルメーター、タッチ式のスイッチ類に新世代を実感させられる。エンジン始動ボタンが(Macがノートのスリープ状態を示すために始めたのが多分、世の中で最初だと思うが)、まるで息をしているように光を強弱させるエンジン始動ボタンの赤いゆっくりとした点滅もGTIだけの演出で「おお!」と思わせられる。

が、走り出せば、そこはGTI。搭載エンジンは2.0TSI EA888 evo4と社内呼称される4気筒の2リットルターボで、スペックは180kW(245ps)/370Nm(37.7kgm)と、実はこれは先代7型時代の「GTI Performance」と同一スペック(最高出力の発生回転領域は200rpm、燃費はJC08モードの比較で0.3km/リットル低い)。とはいえメーカーの資料によれば、インジェクターの改良(200bar→350bar)フリクションの低減、ノイズ特性の改善などの特徴をもつという。

このため走らせてみると低速からスムースな加速を示してくれ、さらにアクセルを踏み込めば、小気味よいサウンドを伴いながら、鋭いレスポンスと吹け上りを見せる。ただしその雰囲気は荒々しさが残された先代に較べ、グッと洗練された印象で、7速DSGの変速も手応えを感じさせながらもより洗練されたマナーに感じられる。

ファミリーカーとしても通用する懐の深さ

さらにパワーフィール以上に、気持ちのいいハンドリングと乗り心地のよさを両立させている点に驚かされる。新型では基礎部分の改良に加え、電子制御油圧式フロントディファレンシャルロックを採用しており、これが絶大なフロントタイヤの接地性を確保してくれ、どんなコーナー、車両姿勢でも確実に駆動力を路面に伝えて、切り込むとより“速くなる”ステアリングも活かしきれる。

それと『ゴルフ』ではおなじみのアダプティブシャシーコントロールのDCCでは、各項目を任意に選べるその調整幅が広がり(細かくなり)、動力性能はスポーティにしたまま乗り心地は最良に……といった選択が可能になった。このことで試乗車は19インチタイヤだったが、超スムースな洗練された乗り味までモノにしていて、元のゴルフに何ら遜色なくファミリーカーとしても通用する懐の深さも実はGTIの魅力のひとつだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

《島崎七生人》

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