【トヨタ アクア 新型試乗】ダウンサイザーも納得、割り切り不要な「上質コンパクト」…島崎七生人 | Push on! Mycar-life

【トヨタ アクア 新型試乗】ダウンサイザーも納得、割り切り不要な「上質コンパクト」…島崎七生人

車名に擬(なぞら)えれば、新型『アクア』は、今までよりもずっと口当たりがまろやかな天然水のようなクルマになった……といったところか。10年ぶりのモデルチェンジだから当然とはいえ、その進化ぶりには目を見張らされた。

自動車 試乗記
トヨタ アクア 新型(Z・2WD)
  • トヨタ アクア 新型(Z・2WD)
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車名に擬(なぞら)えれば、新型『アクア』は、今までよりもずっと口当たりがまろやかな天然水のようなクルマになった……といったところか。10年ぶりのモデルチェンジだから当然とはいえ、その進化ぶりには目を見張らされた。

1クラス上のセグメントのクルマに乗っているかのよう


魅力はさまざまあるが、僕が1番にいいと思ったのは「乗り心地のよさ」だ。初代も途中の改良で乗り心地と音・振動性能が向上したが、新型は(こう書くのは何だが)『アクア』より1クラス上のセグメントのクルマに乗っているかのよう、だ。運転していても、後席に座っていてもそれは同様に感じられる。

低速から高速巡航時まで走行中のフラットライド、コーナリング時のジワリとしたボディの沈み込み、操舵時の自然な挙動、それと耳に障らないノイズレベルの低さと抑え込まれた微震動……。試乗車はオプションの16インチタイヤ(195/55R16 87V・BS ECOPIA EP150・2020年41週製)を履いていて、見ると指定空気圧は前/後=220/200kPaと、今どきのコンパクトクラスのエコカーとしては低めの設定。


この数値が車重、動力・運動性能と絶妙なマッチングをみせていて、余分なウエイトなど載せなくても快適な乗り味になっている。

ステアリングの操舵感も軽すぎず重すぎず、しっとりとしたフィールとインフォメーションを実現している。なので安心感が高い。前席は『ヤリス』などと共通のようだが、自然ないい姿勢が保てる。

直感操作は難しい?6ウェイパワーシート


ただ残念なのはパッケージオプションで装着する運転席の6ウェイパワーシートで、確か『ヤリスクロス』で採用された1モーターで作動させるメカニズムのはずだが、『ヤリスクロス』のそれより作動音自体はいくらか低く感じ、あれば便利な機能ではある。が、シート横の3つのスイッチの使い分けがなかなか会得できないのが残念。

スライド、座面高、背もたれ角度と、自分のしたいことがスイッチ形状だけでは直感で連想しにくく、たとえばスライドは三角オニギリのようなスイッチの上方を前後に振る(前後にスライドさせる、ではない)方式と、機能の動きとスイッチの操作方法も辻褄が合っていない。メルセデスベンツの“シート型”のスイッチのパテントがどうなっているのか知らないが、ああいう直感操作が可能なストレスフリーなスイッチを望みたいところだ。


後席はホイールベース(+50mm)と全長(+55mm)が伸びた分、レッグルームを中心にスペースの余裕が感じられるようになった。ただしサイドウインドゥの下辺が後方に向かって切れ上がったデザインのため、閉所感は多少ある(『WiLL VS』を思い出した)。

割り切りが不要な「上質コンパクト」


動力性能は、かなり運転しやすく余裕のあるものになった。最新のハイブリッド車らしく制御が洗練されているため、普通に走らせていると理屈っぽさはなく、運転しやすいガソリン車の感覚だ。走行モードの「POWER+」は、いかにもといった設定ではなく、右足とアクセルペダルが繋がったような自然な操作感でクルマをスムーズに加減速させられる。

実車のスタイルは初代のイメージの踏襲か!?と思っていたが、実はグッと洗練された雰囲気。ボディパネルのプレス、面質は平たくいうと(もう)ペナッとした印象はなく、シッカリとしたカタマリ感があり、各部に施されたディテールも決して目障りなところはない。


初代同様、フロントスクリーンが相当に寝かされたデザインだが、不思議と車両感覚のつかみにくさはなかった。

真夏の試乗ながらステアリングヒーターの効きも試したが、スイッチを入れるとごく短時間でステアリングリムが温まり始めた。親指を置くあたりのスポークの付け根まで温まる。安全支援機能、低環境負荷性能の話は別の機会に譲るが、ダウンサイザーが乗っても決して諦め、割り切りが不要な、十分に上質なコンパクトカーに仕上げられている。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

《島崎七生人》

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