【シボレー コルベット 新型試乗】伝統を破ってまで実現したミッドシップの恩恵…岡本幸一郎 | Push on! Mycar-life

【シボレー コルベット 新型試乗】伝統を破ってまで実現したミッドシップの恩恵…岡本幸一郎

◆待望のミッドシップ&右ハンドルコルベットに試乗
◆大排気量の自然吸気エンジンに勝るものなし!
◆極めて乗りやすいことに感心
◆伝統を破ってまで実現したミッドシップの恩恵

自動車 試乗記
シボレー コルベット クーペ 3LT
  • シボレー コルベット クーペ 3LT
  • ミッドシップに搭載されたシボレーコルベットのV8エンジンと岡本幸一郎氏
  • シボレー コルベット クーペ 3LT
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待望のミッドシップ&右ハンドルコルベットに試乗


アメリカンスポーツの雄、シボレー『コルベット』の8世代目(以下「C8」)に、ようやく乗れる機会が訪れた! この日をどれだけ楽しみにしていたことか…。

報じられているとおりC8が本当にミッドシップになったことを、まずはこの目で確かめたくなる。ちょうどエンジンが見えるあたりが透明にされたリアゲートを開けると、おそらく見た目にもかなりこだわったことをうかがわせるV8エンジンは、やはりナマで見たほうがより美しい。その手前にはゴルフバッグ2個が余裕で収まるぐらいのけっこう大きなスペースがある。


コルベットというと、低くてながーいフロントノーズがアイデンティティのところ、C8は歴代モデルとは逆で、まるでミッドシップに生まれ変わったことを強調するかのように、むしろフロントを詰めてリアを長くしているのは、この荷室を確保するためという事情もあったようだ。ちなみに小さな荷物ならフロントにも収納できる。プロポーションのバランスは変わっても、見れば見るほど、妙にコルベットらしい。エッジを多用した巧みなデザインセンスのせいだろう。

低くタイトなシートに収まると、あたかも自分の目線よりも高くにありそうに感じる両サイドの張り出したフロントフェンダーの峰が目に入るあたりも、やっぱりコルベットはこうでなくちゃと思う。

大排気量の自然吸気エンジンに勝るものなし!


インテリアデザインも、助手席との境目に縦にズラリと配されたスイッチは斬新すぎてビックリ。使い勝手はさておいて、この手があったか!と感心した。ひとつ前のC7も質感は高かったが、さらに引き上げられた。欧州勢のスーパースポーツと肩を並べられるよう、そうしたところもしっかり手をかけたようだ。

見た目にも印象的な独特の四角いシェイプのステアリングホイールのおかげで、デジタル化されたメーターパネルもよく見える。歴代初の右ハンドル仕様のポジションの違和感もほぼない。

派手なブリッピングで目覚める502psで637NmのLT2型 6.2リットルV8・OHVエンジンは、その音から抱く期待を裏切ることはない。どこから踏んでもついてくる怒涛の加速は、まさに全域パワーバンドだ。そんな優れた性能を、8速DCTがあますことなくダイレクトに引き出してくれる。


踏み込むと中速域で力強く盛り上がり、トップエンドにかけて何の抵抗感もなく勢いを衰えさせることなく吹け上がる。タコメーターは5500rpmからイエロー、6500rpmからレッド表示で、6300rpmぐらいまで回る。

往年の味わいを感じさせながらも現代的に洗練された迫力のV8サウンドとその鼓動が背後から感じられるのも一興だ。大排気量の自然吸気エンジンに勝るものなし!とあらためて痛感させられた。

極めて乗りやすいことに感心


しかもすべてが派手なだけでなく極めて乗りやすいことにも感心する。市街地ではもちろん、撮影時の速度コントロールもこれ以上はないぐらいやりやすかった。DCTは100km/h巡行でも入れようと思えば8速に入ることにも驚いたが、そのときの回転数は約1300rpmと低く、気筒休止機構も備える。今回は正確に計測していないが、実走燃費が意外とよさそうだったこともお伝えしておこう。

操縦感覚も、これまでは自分から遠くはなれたところでフロントタイヤが動いていたところが、グループCカーのように(乗ったことないけど…)もっと近くで動く感触になっている。ミッドシップ化の最大の理由はトラクションを稼ぐためであり、ひいてはそれはタイムを短縮してレースに勝つためだと関係者から聞いたのを印象深く感じたものだが、たしかにこれまではアクセルオンから一瞬遅れて猛進していたところ、そのわずかなタイムラグがなくなり即座に加速体勢に移るようになった。

踏んですぐに強大なパワーが路面に伝わって、クルマをグイグイと前に押し出していく感覚は、ミッドシップの賜物。ホイールベースが長いので、スタビリティも高い。タイトコーナーよりも高速コーナーのほうが得意という印象だ。市街地では乗り心地にやや硬さを感じた足まわりも、車速が高まるにつれて相性がよくなる。

伝統を破ってまで実現したミッドシップの恩恵


こんなに太いタイヤ(前:245/35ZR19、後:305/30ZR20)を履いていてもステアリングの切れ角が大きく取り回しは悪くない。それほど地上高も低くなく、オーバーハングも長くないので使わなくてもほぼ大丈夫だが、試乗した上級の「3LT」ならフロントリフト機構が付いているのも助かる。

車検証によると、車両重量は1670kgで、前軸重が650kg、後軸重が1020kgとなっている。フロントのイナーシャ(慣性)を感じさせない回頭感は、これまたミッドシップの賜物。これまでも重いV8を搭載するわりにはフロントミッドシップが効いていたとはいえ、やはりその感覚はガラリと変わっている。


逆にアクセルオンで荷重がリアに移っても、フロントの荷重が抜けて舵が心もとなくなる印象もない。そのあたり、GMにとっては1984年の『フィエロ』以来ひさびさの量販ミッドシップながら、いきなり高い完成度を見せたあたりにもGMの底力を感じる。

伝統を破ってまでミッドシップにする必要があるのかと最初は思った。それはGMとしても重々承知しているに違いない。それでも、誇り高きコルベットを考えうる最高の形で世に出したいという強い思いがあり、そのためのひとつがミッドシップという選択であり、乗るほどにその思いの強さがヒシヒシと伝わってきた。

最高に男らしいアメリカンスーパースポーツだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

岡本幸一郎|モータージャーナリスト
1968年、富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報映像の制作や自動車専門誌の編集に携わったのち、フリーランスのモータージャーナリストとして活動。幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもスポーツカーと高級セダンを中心に25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに多方面に鋭意執筆中。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

《岡本幸一郎》

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