【ホンダ シビック 新型】一服の清涼剤に、11代目コンセプトは「爽快シビック」 | Push on! Mycar-life

【ホンダ シビック 新型】一服の清涼剤に、11代目コンセプトは「爽快シビック」

ホンダは11代目となるハッチバックタイプの新型『シビック』を6月24日、ワールドプレミアした。正式発表は秋で、2022年にはハイブリッドの「e:HEV」と「タイプR」も追加される予定だ。

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ホンダ シビック 新型と開発をとりまとめたLPLチーフエンジニアの佐藤洋介氏
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ホンダは11代目となるハッチバックタイプの新型『シビック』を6月24日、ワールドプレミアした。正式発表は秋で、2022年にはハイブリッドの「e:HEV」と「タイプR」も追加される予定だ。

WOWを届けてきた歴代シビック


本田技研工業 四輪事業本部 ものづくりセンター 完成車開発統括部 車両企画管理課 LPLチーフエンジニアの佐藤洋介氏は歴代シビックについて、「1972年の登場以来、世界の人々に驚き“WOW”を届けてきた。人気を博した3代目のワンダーシビック、低全高でスポーティな5代目のスポーツシビック、グローバルモデルとして成長した8代目のシビック。そして好評の10代目では、世界のCセグメントをリードするまでに至った」と紹介。

それらシビックの普遍価値について佐藤氏は、「キビキビとした走り、市街地での取り回し、駐車のしやすさ、さらには環境との調和」と定義し、「お客様と社会のニーズをしっかりと常に考え、取り込んで来た。そうして人々の暮らしとともに(普遍価値を)長い期間一緒に育むことで、常にシビックを通して人々の暮らしや生活に喜びを提供してきた」という。そういった背景もあり、「現在は170国以上、累計販売台数は2020年度時点で2700万台という愛されるクルマになった」と述べた。

新型はジェネレーションZがターゲット


新型シビックを開発するにあたり、グローバルでのディーラー訪問やデザインやユーザー調査が行われた。さらに、「昨今情報が錯綜している中、これだけでは決してお客様の指向性を真につかむことは出来ないと考え、ターゲットユーザーや、その先行層になり得るお客様のご自宅へ訪問し、彼らがどういう生活をし、クルマとどのように結びついているのか。それらを何度もスタディしフィードバックした」という。

そのターゲットユーザーは1990年代半ばから2000年代前半に生まれたジェネレーションZと呼ばれる、「生まれながらにしてインターネット環境で育った人たちだ。彼らはSNSに親しむ中で、自身の社会的な責任、さらには社会の評価に非常に敏感だ」。また、「先進デバイスに関する高い感度もある。彼らが持つ指向性は、特別感があり、親しみやすく、心地良いものを求めている」とその特徴を説明。また、ジェネレーションZの中でも先行層になりうる人たちも調査。彼らの価値観は前記に加え、「社会的責任への意識が高く、上手に生活の質を高められる人たちだ」とのこと。

その先行層から見たシビックの強みとは何か。それは、「自分を表現するための親しみやすさ、凝縮されたシンプルな特別感、さらに居心地の良さがキーワードとして挙がった」と佐藤氏。これらの価値観や強みを踏まえ、2つのキーワードをピックアップした。それは、「“親しみやすい存在感 アプロ―チャブル”と、“充実・凝縮された特別感 スペシャリティ”。この2つがターゲットユーザーであるジェネレーションZとその中の先行層には必要だ」と答えた。

爽快シビック


新型シビックの開発の方向性について佐藤氏は、「開発初期に、ある言葉を思い出した。それは初代シビック発表の際に、あるジャーナリストから、“一服の清涼剤”のようなクルマが日本からも誕生した“と形容してもらった」。つまり、「つかの間の爽やかな気分にさせてくれる、そんなクルマを初代から10代目シビックまで語り継がれていると感じた」という。そこで開発メンバーは、「いま、そしてこれからの時代にふさわしい一服の清涼剤のようなクルマにしたいという思いで開発した」と語る。

これらのことから新型シビックのグランドコンセプトを、「“親しみやすい存在感 アプロ―チャブル”と“充実・凝縮された特別感 スペシャリティ”を掛け合わせ、人中心に全てを磨き上げ、お客様を心から爽快にしたいという思いで、“爽快シビック”と名付けた」と話す。「爽快の“爽”の字には、人という字が中心に入っている。ホンダのDNAである人中心という思いも込めたグランドコンセプトだ」とコメントした。

このグランドコンセプトをもとに、「ホンダのものづくりの進化、品質改革、製造の新技術も含めた知覚品質の向上などと、ホンダのDNAであるデザイン、ダイナミクス、HMIを高次元で融合させ完成させた」。

軽快なボディと良好な視界


デザインの方向性について佐藤氏は、「来年シビックは50年を迎える」ことを踏まえ、改めて過去のシビックを振り返った。そこでホンダのDNAを最も強く感じたのが「3代目ワンダーシビックだった。この開放感のあるグラッシーなキャビン、さらに薄く軽快に見えるボディ。これをいま、そしてこれからの時代にふさわしいシビックにどのように反映してくかが原点だ」という。

まずパッケージのコンセプトは、「アプロ―チャブルな観点では、開放的な空間、気持ちの良い視界。スペシャリティでは、進化したロー&ワイドな骨格。この2つを掛け合わせたホンダ独自の爽快パッケージを提案」している。

フロント周りは、フロントダンパー直上を25mmほど下げた。それによって、「スペシャリティの観点での、軽快なボディ。さらに、リアからフロントへの視界の連続感を提供している」。


また、Aピラーを50mm室内側に引くことにより、「Aピラーがホイールの中央にぶつかる、キャビンがタイヤに乗っているというグッドスタンスな見え方を実現するとともに、水平視野角を先代の84度から87度に広げ、お客様の爽快視界を提供している」と説明。

サイドとリア周りでは、リアのショルダーラインを35mmほど下げられた。それにより、「リアタイヤがしっかり張り出して軽快に見せるボディを実現。同時に後席視界の確保やクォーターガラスを追加することで、死角を減らしている」とした。

また、新型シビックでは樹脂テールゲートを採用。「デザインとしてもとても力を入れたところだ」と佐藤氏。まず先代のスチールから樹脂に変えることによって、「先代シビックではなし得なかった後ろ回りをスリークな形状とした」と話す。


また、「ルーフのピークポイントも先代よりも少し前に持ってくることにより、よりスリークな動きも実現」。これらは、「樹脂テールゲートとともにそのヒンジレイアウトの最適化で可能となった。このヒンジレイアウトの工夫の結果、ヘッドクリアランスはキープしながらも、ルーフを50mm下げることが出来た」とコメントした。

ボディサイズは、ライセンスプレートを含まず全長4550mm(先代比+30mm)、ホイールベースは2735mm(同+35mm)で、「後席のゆったりした足元を提供」。またダイナミクス性能向上という視点で、「高速安定性と旋回性能を高めるために、リアトレッドを片側6mm、トータル12mm増やすなど、パッケージとダイナミクスを融合したパッケージとなっている」。また、リアオーバーハングは20mm縮めたが、「VDAの容量では床上床下とも合わせて、先代シビック以上の容量を確保」されており、25インチのスーツケース、9.5インチゴルフバッグとも、それぞれ3つずつ積載可能だ。

Sokaiエクステリア

エクステリアのデザインコンセプトは、“Sokaiエクステリア”だ。「アプローチャブルでは運転しやすく、心も開放的になれるグラシーなキャビン。スペシャリティの観点では、流れるようなプロポーションと、シンプルで作り込まれたサーフェイスとディテールを提供している」と佐藤氏。スタイリングで特に力を入れたのが、「グラッシーなキャビンと軽快なボディ」だ。同時にヘッドライトからリアコンビに抜けるサイドのキャラクターライン、ホンダではC線と呼ばれるラインを、「しっかりと伸びやかに通すことによって、強いショルダーを形成している」と話す。

ヘッドライトは「LX」と「EX」それぞれ専用の仕様とされ、LXはオールLEDを採用し、ロービームの配置を先代から変えた。具体的には、「先代のロービームは内側に配置されたが、現行では内側と外側に。そしてハイビームを真ん中に設けることで、“瞳表現”を提案。


またデイタイムランニングライトポジションも、L字のシグネチャーを設け、それによって、よりロー&ワイドに見せる効果を演出している」という。EXではアダプティブドライビングビームをホンダ初採用し、「お客様への安心安全を提供」。同時にターンアクティブコーナリングライトも設定された。

リアコンビネーションランプは、「シビックのヘリテージであるCラインを踏襲しながら、ロー&ワイドに見せるような配置とし、その光り方は、ブレーキペダルを踏むと真ん中も光るように構成した」と話す。

ホイールも2仕様を用意。ベルリナブラックと切削クリアーで、「質感を高めたLX」。さらに、「上位でスポーツグレードにふさわしい切削面をダーククリアーにしたEX」となる。

ファインモーニングインテリアがコンセプト


インテリアデザインは、「朝が気持ち良いと一日が爽快に感じる。そういう思いで爽やかで気持ちのよい朝を提供したいと、“ファインモーニングインテリア”という考え方でスタートした」と佐藤氏。アプローチャブルな観点では、「ノイズを抑えた開放的な空間」。スペシャリティでは、「気持ちを刺激する質感を提供したいという思いだ」という。

まず、「世界各地で爽快な朝を体験し、そこから必要な要素を3つ抽出した」と佐藤氏。「ひとつ目は、新鮮な気分でスタート出来る清潔性だ」。これは、「すっきりとノイズレスなグッドサーフェイスを提供することで実現」。具体的には、「インパネ造形では、窓写りや落ちる影にまで考慮して本当にシンプルなインパネ上面の造形をデザイン。アウトレットのメッシュも、パンチングメタルで作成し、(中に見える)構造を隠して価値観を高めたデザインと機能との融合を図っている」と述べる。

次に、「朝は忙しいのでテンポよくタスクがこなせるリズム」とし、「気持ちに沿った使い勝手・導線」を実現するために、「瞬間認知直感操作を徹底的にこだわり、HMIに基づいて開発した」。実際には、「センターコンソールのカップホルダーとシフトレバーを並列にレイアウトした。シビックの車幅ではなかなかパッケージ上大変だったが、(CVTの)シフトレバーをドライバー側に5度傾けることによって成立させると同時に、シフトレバーの使い勝手も向上している」と説明。


最後は、「心地よい五感への刺激」とされた。「感性に響く触感とフィードバックを提供する」とし、これは、「捻る、引く、つまむといった操作方法に合わせた形状にとことんこだわって開発した」と佐藤氏。例えば、「インナーハンドルは、つい触りたくなるような指かかりのフィーリングにまでこだわり、また質感もプラチナクロームメッキを使用。さらに空調関係も、上級家電に勝るとも劣らないタッチ感を実現し、かつ操作音に関してもこだわりを入れている」とのこと。また、「ドアスイッチパネル(パワーウインドウや電動ドアミラースイッチ等)は、音、面構成において一連の動きがダイレクトに繋がるような面の角度とした」と語る。

インテリア全体でも、「アウトレットの水平基調と、パンチングメタルを合わせた開放的な空間だ。さらに、フロントピラーを手前に50mm引いたことで、さらにスクエアなガラスエリアとなり、動感視界と合わせ爽快な視界を提供出来ている」とのことだった。

インテリアカラーはEXとLXの2仕様あり、LXはスポーツブラックを採用。「軽快なシームレスアクセントにより1枚表皮で提案」。EXではブラックとレッドの組み合わせで、「上質でスポーティさ表現」。具体的には、シートバッグやクッションに、「赤いパーフォレーションを入れ、かつサイドには合皮を採用」。さらにドライバーとアシスタント側には、「赤いイルミネーションとステアリングスイッチも赤くすることで実現している」。

スポーティな走る歓びを提供


ダイナミクス性能は、「コアバリューであるエンジョイ・ザ・ドライブ、意のままドライブをもとに、爽快シビックを成し得るべく、質の高い軽快感を加えて開発した」という。

また、シビックはグローバルモデルであることから、「例えば欧州の交通環境は非常に厳しく、アウトバーンなどでの高速安定性に加え、ワインディングでも通用するようにしっかりとプラットフォームや、ボディやシャシーを鍛え上げた。そこから各地域のニーズや商品性、交通環境に合わせて開発した」とその考え方を語る。

搭載されるパワートレインは、1.5リットルターボエンジンで、最高出力が182ps/6000rpm、最大トルクは240Nm/1700-4500rpm。CVTと6速MTが用意されるが、先代のようにトランスミッションでのエンジン出力等の差異はなくなった。先代のCVT搭載車と比較すると、出力は同じだが、トルクは20Nm大きくなり、その発生回転は先代の1700-5500rpmと比較し高回転側が低くなった。



一方の6MTの場合も、最高出力数値は同じだが、その発生回転は先代が5500rpmだったので、500rpm高くなり、最大トルク発生回転は先代の1900-5000rpmから回転域全体を若干低回転側に変更された。

搭載されるCVTはトルクが大きくなったことから、トルクコンバーターの性能を向上させ、「全開加速でのステップアップシフトによる、より有段ライクな走る喜びを提供」。6MTは、「より操る喜びを提供していきたい」ということで、ショートストロークと高剛性を両立したシフトフィールを実現。ストロークは先代から5mm、セレクトストロークに関しても3mm削減し、「より操る喜びを剛性感のアップと共に実現している」という。

《内田俊一》

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