【シトロエン C3 新型試乗】乗り心地はBセグメント「西の横綱」…中村孝仁 | Push on! Mycar-life

【シトロエン C3 新型試乗】乗り心地はBセグメント「西の横綱」…中村孝仁

シトロエンというブランドは、クルマ作りの根底に「車を揺らさない」という信念を持っているのだと思う。それは例えばかつての『2CV』。あの車は朝摂れた卵を乗せて割らないように走れるように作ったそうだ。

自動車 試乗記
シトロエン C3 シャイン
  • シトロエン C3 シャイン
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シトロエンというブランドは、クルマ作りの根底に「車を揺らさない」という信念を持っているのだと思う。それは例えばかつての『2CV』。あの車は朝摂れた卵を乗せて割らないように走れるように作ったそうだ。

あるいはDS(現代のDSではなく1955年に誕生したDSだ)。その宣伝ポスターには水面に4つの大きな球とその上に乗ったDSのボディで、揺れが少なく乗り心地が良いことが表現されていた。勿論この時誕生したハイドロニューマチックサスペンションはクルマに革命的な乗り心地を与えたことは言うまでもない。

残念ながらそのハイドロニューマチックシステムは複雑すぎる機構故に、コストも高くメンテナンスも大変ということから今は使われていない。しかし、シトロエンの技術者たちは常に何とかハイドロニューマチックの乗り心地を再現しようとあの手この手を使って揺れないクルマ作りに血道をあげている。

乗り心地は「西の横綱」、シートもやり過ぎ?


『C3』に採用されているサスペンションは、何の変哲もないBセグメントなら当たり前に使われるであろうマクファーソンストラット/トーションビームという仕様である。しかし、その乗り心地と来たらそれはまさにハイドロの再来かと思えるほどに快適。恐らくこれほどまでに高いフラット感を醸し出すBセグメントのモデルは他に存在しないと思う。その意味では性能面では他のもっと力強いモデルに譲るが、こと乗り心地に関しては断トツ。だから「西の横綱」と言って過言ではない。

このクルマ、現行モデルが誕生したのは2016年(日本導入は2017年)。そして2020年にマイナーチェンジを受け、そのマイチェンモデルが日本に登場したのは今年の初めであった。簡単に説明するとフロントエンドのアップデートとエンジンの改良による燃費の向上、さらにADAS系のブラッシュアップなどで、新たにいくつかのドライバー支援システムが装備された。相変わらずパーキングブレーキがメカニカルであるため、ACCは装備されない。ただし普通のクルーズコントロールは付いている。


実はこのクルマの性格を決定づけるもう一つのアイテムが、ある意味では今回の目玉といって良い。それが「アドバンストコンフォートシート」の装備である。すでに上級モデルにはこのシートが使われているが、Bセグメントではやり過ぎといっても過言ではない。このシート、生地裏のフォームのボリュームも従来の2mmから15mmへと大幅にアップしていて疲労につながる車体の微震動をシートが吸収しているのだという。つまりここでも「揺れない」に拘り、オーバークォリティーな装備を奢ったわけで、如何にシトロエン・エンジニアがこの点に拘り続けるかを如実に示している。

この新しいシート、座ってみるとフォームボリュームが増しているのがすぐにわかる。というのも、ゆっくりと腰かけてじわっと背中をシートバックに押し付けてみると、まずは点で当たる感触。その後その接触範囲が背中全体に広がっていくのが感じられ、結果としてまさに包み込まれるような座り心地を実現しているのである。走らないでただ座っているだけでも快適だ。


ただし、テンションは意外と強い。昔のシトロエンのシートはそのテンションが無くて、座ると体がシートにのめり込んでしまうほどふわふわフカフカであったのだが、今はちゃんと運転をするための適度なテンションがある。それに以前のシートと比べてサイドのサポート性能も上がったように思える。

さぞやリアシートも快適かと思って座ってみたが、正直それほどではなかった。理由はBセグメントゆえのスペース効率からか、シートの座面長が短めだし、バックレストは少し立ち気味で、いつまでもいたくなるようなレベルではなかった。

フラット感の高さは「超絶」


例によってそのフラット感の高さはBセグメントの枠をはるかに超えて、「超絶」としか言いようがない。そしてエンジンだが、以前と変わらない1.2リットル3気筒のピュアテックで数値的な変化もないのだが、何故か以前よりも発進加速が速いように感じられた。多分気のせいだと思う。それとも少しメーターが甘いのか…。

2017年に初めて乗った時、このC3は大ヒットの予感がすると書いたが、当たった。メーカー広報によれば、先代は 7年弱のモデルライフで6482台販売したのに対し、現行モデルは昨年暮れまでの3年あまりで7625台を販売したそうだ。しかも今もシトロエン販売のトップを快走している。

同じセグメントのプジョー『208』は生まれ変わって新しいプラットフォームを得ているが、C3はまだ古いプラットフォームのままだ。願わくはこの乗り心地をキープしたまま新しくなって欲しいものである。そしてACCを含むADAS系がさらに充実すれば、もしかすると「東の横綱」になるかもしれない。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

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