【プジョー リフター 新型試乗】遊び心と実用性のバランスが面白い…中谷明彦 | Push on! Mycar-life

【プジョー リフター 新型試乗】遊び心と実用性のバランスが面白い…中谷明彦

プジョー『リフター』は、本国フランスで主に商用バンとして使われており、リアが観音開き仕様で荷物の配送等に使われるような車だ。それを乗用車用にリファインしたのが今回登場した『リフター GT Line』だ。

自動車 試乗記
プジョー リフター GT Line
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プジョー『リフター』は、本国フランスで主に商用バンとして使われており、リアが観音開き仕様で荷物の配送等に使われるような車だ。それを乗用車用にリファインしたのが今回登場した『リフター GT Line』だ。

日本のマーケットには商用モデルは入ってこないのだが、本国フランスでは「リフター GT Line」と「商用モデル」の両方が販売されている。

性格的にはSUVとMPV(マルチパーパスビークル )をクロスオーバーをさせた新しいジャンルの車だ。

旅客機に乗っているかのような快適な空間


外観は元が商用車なので、同じジャンルのルノー『カングー』と似ている。大柄なボディで、国産でいうトヨタ『ハイエース』と日産『キャラバン』に似たような位置づけで、ボンネットバンタイプのデザイン的特徴が個性になっている。競合他車と同じようなデザインにすることで商用車のイメージがある程度統一的に構築されるが、今回それをあえて乗用車用にしたところが遊び心として面白いのだ。

一見3列シートが隠れているように見えるが、リフターは2列シートの5人乗りである。もともと商用車なので荷室スペースがとても広く、大型のスーツケースがいくつも詰め込めるようなラゲッジスペースとなっている。

室内スペースも広く、大柄な方が乗っても広さを感じるだけのスペースユーティリティがある。シート座面は固めで長時間乗っていても疲れない。特に、後席が3席分きちんと同じ大きさで仕切られているため、例えば後席の真ん中に座っても非常に座り心地がいいし開放感も十分にある。


乗用車化するにあたり装備面の充実を図っている。例えばこの試乗車でいうと大きなガラスサンルーフが装備されていて、かつルーフセンターにヘッドコンソール(実は小物収納スペース)が前席から後席にかけて取り付けられ、半透明のケースが光とりになっている。まるで旅客機に乗っているかのような特別な空間の演出がされている。

低速トルクの出し方が非常に上手い


パワートレインは1.5リットルの4気筒クリーンディーゼルターボエンジンで、アイシン製8速ATと組み合わせてFF(前輪駆動)としている。プジョーのラインアップ全般的なパワートレインと共用しているものだ。

車両重量は1610kg以上あり、1.5リットルのエンジンで足りるのかと思いがちなのだが、欧州車(特にプジョー車)は低速トルクの出し方が非常に上手い。市街地等で2000回転以下で走るような状況でも、十分トルクが出せていてパワー不足感を全く感じさせない。

一方で、高速道路を走行しても3000~3500回転くらいの回転域でも十分なパワーを出せており、加えて8速ギアがあるため、オーバードライブ系にシフトアップしていくことで高速域も十分静かでトルクフルな走りをカバーできている。スポーツカーなどと最高速度を競うようなことは出来ないが、実用上全く問題を感じることなくできている。


ステアリングホイールは、他のプジョー車と共用している変形楕円タイプでスペースのあまり必要のない小径のものになっている。さらにメーターのレイアウトが良く非常に運転しやすい。

他のプジョー車はシフトレバー方式で変速するが、リフターはダイヤル式のシフトセレクターが付いている。回転させながらリバースやパーキング、ドライブというようにレンジが選べるので、スペースも取らず操作性も良い。本来AT車は全部こうしたらいいのにな、と思わせるような作りになっている。

ダッシュボードのデザインも商用車ベースなので物置が沢山あったり、ナビゲーションモニターやメーターが見やすかったり、操作系も操作しやすい。

ヒップポイント(着座位置)が高いので見晴らしも良いし、車高の高いSUVに乗っているのと同じような感覚がある。

高級感を感じられるほどの乗り味


走り始めるとボディの剛性感が非常に高いことに驚かされる。商用車ベースで元々重い荷物を積み長距離を走るため、車体の骨格が頑丈にできているという印象を受ける。走りの質感や路面からのハーシュネス(突き上げ感)、さらに路面の悪い場所の通過時の振動の抑制も良くできていて、むしろ高級感さえ感じられるほどの乗り味をしている。

ダンパーやスプリングの設定も比較的柔らかく、いわゆる「プジョーの猫足」的なダンピング特性が感じられるのも魅力だ。

これまでのミニバンあるいはクロスオーバー系のSUVと比べると、実用性能が非常に高く、それでいて遊び心もあり他には無い個性的な仕上がりになっているリフターは面白い存在だ。

価格もこれだけの装備が揃っていて380万円台ほどの設定になっているため、国産車と比べてもお得感がある。輸入車でありながら価格の安い軽油で走れるのでランニングコストも安く抑えられるし、1.5リットルという小排気量のおかげで実質的な走行燃費も良い数値が期待できる。多角的な面から魅力を感じる車である。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★★

中谷明彦|レース&テストドライバー/自動車関連コンサルタント
大学在学中よりレーサー/モータージャーナリストとして活動。1988年全日本F3選手権覇者となるなど国内外で活躍。1997年よりドライビング理論研究会「中谷塾」を開設、2009年より東京大学と自動車新技術の共同研究に取組む。自動車関連の開発、イベント運営など様々な分野でのコンサルタントも行っている。

《中谷明彦》

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