【ベントレー ベンテイガ 新型試乗】超高額SUVの先駆者 堅実なブランド化へ向けてさらなる威厳強調へ…渡辺慎太郎 | Push on! Mycar-life

【ベントレー ベンテイガ 新型試乗】超高額SUVの先駆者 堅実なブランド化へ向けてさらなる威厳強調へ…渡辺慎太郎

◆ベントレーはきっとほくそ笑んでいる
◆英国の格式と今後のベントレーの方向性を感じるデザイン
◆安定した快適性とEV級の静粛性 ポルシェ主導によるプラットフォームの影響は大きい

自動車 試乗記
ベントレー ベンテイガ 新型 V8モデル
  • ベントレー ベンテイガ 新型 V8モデル
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  • ベントレー ベンテイガ 新型 V8モデル
  • ベントレー ベンテイガ 新型 V8モデル
  • ベントレー ベンテイガ 新型 V8モデル(渡辺慎太郎氏)
  • ベントレー ベンテイガ 新型 V8モデル
  • ベントレー ベンテイガ 新型 V8モデル(0-100km/h:4.5秒/最高速度:290km/h)
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ベントレーはきっとほくそ笑んでいる

いまでこそ、ロールス・ロイスやランボルギーニやマセラティといった、それまでは無縁と思われていたメーカーがこぞって超高額SUVをラインナップに加えているけれど、その先駆者的存在はベントレーであり、『ベンテイガ』である。誰もやらなかったことを最初にやるというのは大変勇気のいることだし、それなりの批判や否定的見解も覚悟しなくてはならない。ベンテイガも発表直後は「本当に大丈夫か?」などといった反応が少なくなかったが、現在のSUVマーケットを眺めながらベントレーはきっとほくそ笑んでいるに違いない。

そもそもベントレーは、その歴史にいくつもの「先駆者」という文字を刻んできたメーカーである。創業者のウォルター・オーウェン・ベントレーは英国車の先駆的エンジニアとして広く知られているし、ルマン24時間耐久レースを量産車のテストフィールドとして捉え当初から積極的に参戦したり、GT=グランツーリズモという概念をいちはやく具現したのもベントレーだった。だから超高額SUVを最初に世に放ったのがベントレーというのも必然と言えるかもしれない。

英国の格式と今後のベントレーの方向性を感じるデザイン

2012年のジュネーブショーで公開された『EXP 9 F』と呼ばれるコンセプトモデルがベンテイガの原点だった。コンセプトモデルとはいえディテールまでほぼ完成しており、ベンテイガとして発売する準備は整っていたものの一応市場の反応を確認したかったのだろうと、会場で実車を目の前に思ったことを覚えている。2015年9月の正式発表時はW12ツインターボエンジンのみを搭載していたが、後にV8やハイブリッドも追加。現在日本ではV8搭載モデルのベンテイガと、W12搭載モデルの『ベンテイガ・スピード』が販売されており、後に『ベンテイガ・ハイブリッド』も加わる予定である。

発売から5年以上が経過しているベンテイガは昨年、いわゆるマイナーチェンジを受けている。『コンチネンタルGT』や『フライングスパー』とデザイン言語を統一することで、ベントレーファミリーとしてのブランド力をより堅実なものとするのが狙いだろう。ベンテイガの顔を印象付けるマトリクスグリルは従来型よりも大型化されただけでなくほぼ垂直に近い角度に修正されて、押し出し感と“威厳”のような雰囲気がより一層強調されるようになった。

ライトは前後ともに楕円形だが、リヤはコンチネンタルGTとの繋がりを主張するいっぽうで、楕円形のヘッドライトを採用するのはベンテイガが初めてで、ひょっとすると今後コンチネンタルGTやフライングスパーも右にならうかもしれない。また22インチまでのホイールを収める理由もあってかリヤのトレッドは20mm拡大され、後ろ足の踏ん張り感がさらに増したスタイリングとなった。

インテリアはセンターコンソール/シート/ドアトリムが刷新され、4人乗り仕様の後席の膝周りスペースが通常時で30mm、リクライニング時で100mmそれぞれ広くなっている。クルマの装備の中でもっとも進化の早いインフォテインメントもアップデートされ、10.9インチの高精細タッチスクリーンが装備された。ウッドパネルや本革のしつらえは相変わらずため息が漏れるほど見事である。個人的には、いまやずいぶんとモダナイズされてしまったロールス・ロイスよりも、ベントレーのほうが英国の伝統や格式を強く感じるインテリアの演出になっていると思う。

安定した快適性とEV級の静粛性 ポルシェ主導によるプラットフォームの影響は大きい

試乗車は550ps/770Nmを発生するV8ツインターボを搭載したモデルで、オプションの「ダイナミックライドシステム」が装着されていた。これはいわゆる電動スタビで、電動式アクチュエーターが前後のスタビライザーのばね定数を状況に応じて可変する。通常のスタビライザーを装着すると主にロール方向の動きが抑えられるが乗り心地は悪化する傾向にあるので、コーナリング時にはばね上の動きを抑制しながらも、マイルドな乗り心地をキープできるのがこの機構の特徴である。作動に48V電源を使っているのは、12Vよりパワフルなアクチュエーターを迅速に稼働することができるからだ。

この制御が素晴らしく、まさしく額面通りのハンドリングと乗り心地になっている。ステアリングを切ってコーナリングフォースが立ち上がり、本来ならばね上がアウト側に傾くはずなのにそれはほとんど感じられず、ボディはほぼ水平を保ったまま向きを変えていくという挙動を示す。こうなると重心の高さはほとんど感じられないし、全長5m以上でホイールベースが約3mというボディサイズも実際よりも小さく思えてしまう。乗り心地は速度依存度が低く、終始一定の快適性が保たれていた。ダイナミックライドシステムはコンチネンタルGTと共にデビューしたが、ベンテイガのほうがその効果は顕著に現れている。ベントレー ベンテイガ 新型 V8モデル(3,996cc/550ps/770Nm)

V8ツインターボはひと言でいえばモーターのようである。スロットルペダルを踏むと瞬時にトルクが立ち上がり、それが間断なくスムーズにずっと続く感触は、私達が擦り込まれている内燃機のパワーデリバリーとは一線を画すもので、まるでEVに乗っているかの錯覚に陥るほど。EVだと勘違いするのは、静粛性が極めて高いことも影響しているはずである。

ポルシェが主導して開発したとされるこのプラットフォームは、ご存知の通り『カイエン』や『ウルス』や『Q8』も共有している。同じ材料でもシェフが違えばお皿に盛り付けられる料理の味も異なるわけで、ベンテイガはSUVの格好をしていても紛れもないベントレーの風情と乗り味を備えていた。ベントレー ベンテイガ 新型 V8モデル(渡辺慎太郎氏)

■5つ星評価
パッケージ:★★★★★
インテリア:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

渡辺慎太郎|ジャーナリスト/エディター
1966年東京生まれ。米国の大学を卒業後、自動車雑誌『ル・ボラン』の編集者に。後に自動車雑誌『カーグラフィック』の編集記者と編集長を務め2018年から自動車ジャーナリスト/エディターへ転向、現在に至る。

《渡辺慎太郎》

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