【ホンダ フィット 新型試乗】「大胆・シンプル・重厚」心地よさ以上の驚きがあった…中村孝仁 | Push on! Mycar-life

【ホンダ フィット 新型試乗】「大胆・シンプル・重厚」心地よさ以上の驚きがあった…中村孝仁

◆心地よさ以上の驚きがあった
◆どっしりとした重厚な乗り心地
◆乗った印象はイイことずくめだったが

自動車 試乗記
ホンダ フィット 新型(e:HEV LUXE)
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心地よさ以上の驚きがあった

新しいホンダ『フィット』が追求したのは、心地よさだったそう。確かにそれは実現できている。しかし、乗り込んで思ったことはそれ以上の驚きだった。

初めてクルマに乗りこんでそのドライバーズシートからの眺望に、思わずこれ、自動車?と思ったものである。まあ、細いAピラーがダッシュボードの先端まで伸び、その手前にBピラーが付き大きな三角窓を構成するスタイリングは、どことなくフランス製のモデルに一脈通じるな…とは思ったものの、全く出っ張りの無いダッシュ上面とその先に一直線をなすフロントウィンドー下面の織りなす景色に、非自動車を感じてしまった。


実に大胆なデザインである。しかもそれは一本の線と大きな面で構成され、ドライバー眼前に広がる(という表現は当てはまらない)はずのメーターは、近年のクルマでは見たことがないほどコンパクトでシンプル。それでいながら昔のクルマ(昔はコンパクトかつシンプルだった)とは情報量の豊富さが段違いで、非常によくまとめられている、と感心したものだ。

次にこれは特別驚きはしなかったのだが、上質感が漲っている。最上級の「LUXE(リュクス)」という今回試乗したモデルでは、本革シートが標準装備。そしてシートと同色のソフトパッドがダッシュボードを覆う。敢えて、カップホルダーをダッシュ上に構築したのもシンプルさの表れか。そういやステリングも一般的な3本スポークではなく2本スポークだった。

どっしりとした重厚な乗り心地


走り出してみると先代では味わえなかったどっしりとした重厚な乗り心地に、今やBセグメントでもこのくらい乗り心地を確保しなくては駄目なんだなぁ、などと感心しつつ家に帰ってプレス資料他あれやこれや調べてみると、何とプラットフォーム自体は先代と同じだと言うではないか。

最近ではモジュラー型のプラットフォームで大小さまざまなクルマを作り上げ、剛性アップや軽量化を一気に推し進める開発手法が多くのメーカーで取られていて、てっきりそんなことをやったのかと思いきや、従来のまんま…だというから驚きだ。

ただそうは言っても上屋はハイテン材の使用範囲を広げて軽量化を進め、一方でサスペンションやダンパーの取り付け部は補強材を追加するなどして剛性を向上させている。上屋が軽くなって足回りが強化される。これ、僕の遊びの話を持ち込んで大変に恐縮なのだが、電動モーターで走るスロットカーの基本的チューニングとまるで一緒。上屋の軽量化はバランスに優れ、足の強化は言うまでもなく運動性能向上に繋がる。


ただ、それでどっしりとした重厚な乗り心地を作り出している点は合点がいかない。そこで行きついたのがシートであった。何と座面のパッドを従来モデルよりも30mm以上厚くしているという。同時にパッドの硬度も下げたそうだ。これがソフトな着座感を実現し、快適でどっしり感のある乗り心地を演出しているのではないかという結論である。

因みにシートフレームも全く新しいと言い、このあたりにも冒頭に記した心地良さの演出が出ている。それにLUXEはこれまた、なかなかの質感の本革シート、こいつに騙されている側面も多々あると思ったものだが、実はそうではなくて本当にこの本革シートの乗り心地が重厚であることは、次に乗った別なグレードのフィットではっきりと分かった。

乗った印象はイイことずくめだったが


今回の試乗車は前述した通り、最上級のLUXEというグレード。しかもe:HEVと称するハイブリッドモデルだ。システム自体も新しく2モーターで、それぞれ発電用と駆動用で役割を分担している。走り自体は俗に言うシリーズハイブリッドに近く、通常はガソリンエンジンで発電してモーターで駆動するシステムを取り、大出力を必要とする場合にガソリンエンジンも顔を出す。そんなわけだから普段は至って静かで、多くの場合エンジンの気配を感じさせない。

デフォルトはエコモードなのか、乗り出してすぐにそれに気付き、一旦エコモードを解除してみたのだが、そうしたところでとりわけ力強くなったとは感じられなかった。勿論とても軽快に走ってくれるのだが、1.5リットルのディーゼルエンジンを搭載する我が家のBセグコンパクトカーのようなグイグイとくる力強さはなかった。

諸般の事情から今回は距離を走ることが出来なかったので、あまり断定的なことは言えないが、燃費は相当に良い。ライバルとなるトヨタ『ヤリス』には負けているというのが一般的な結論だが、21km/リットル以上を記録した。特にエコ運転したわけでもないから、これだけ走れば十分だ。


さて、乗った印象としてはイイことずくめだったフィットではあるが、今回の試乗車は希望小売価格が245万9600円。(税込)これに9インチナビやらドラレコ、ETC、フロアマットなどの値段が加算されるから、おおよそ270万円ほどの価格になりそうだ。『マツダ2』に試乗した時もBセグメントのクルマがこの値段だと、どうなのよ?という話をしたばかり。やはり少しお高い気もするが、最近クルマの価格が上昇しているから致し方ない…と考えるのが良いのだろうか。

もちろんベーシックモデルのHOMEというグレードなら、227万4800円だし、これがガソリン車なら189万0020円(いずれも税込値段)だから、ほとんど軽自動車並み。しかも走りに関してはグレードを問わず同じであるから、どれだけ装備を盛り込むかで値段が決まる。最近はソフトな領域の値段が高い。

最後に男性目線ではとても良くできたクルマだと思ったのだが、うちの女性陣からは、お顔がね…という意見。どうやら色気に欠けるらしい。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファーデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

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