【スズキ ハスラー 新型試乗】キャッチーだけど質実剛健、ボディの進化を実感…島崎七生人 | Push on! Mycar-life

【スズキ ハスラー 新型試乗】キャッチーだけど質実剛健、ボディの進化を実感…島崎七生人

◆“ボクシィ”に仕上げられた新型ハスラー
◆座った瞬間に実感できる室内の広さと使い勝手
◆新開発NAエンジンの感触と乗り味は

自動車 試乗記
スズキ ハスラー 新型
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“ボクシィ”に仕上げられた新型ハスラー

『ハスラー』登場から6年。この間、従来モデルの人気は実に安定していた……というより最後までまったく衰えなかった。2019年1~12月を見ても販売台数は5万7840台と、軽自動車のベスト10圏内、9位に食い込んでいる。新型も初代同様になかなかキャッチーだな……が素直な第一印象。

とはいえ図面を見ると一目瞭然だが、新型は全体によりボクシィに仕上げられた。ルーフは後ろに約120mm伸ばされたそうで、幅もサイドウインドゥの傾斜がより立ったことで広がった。クラムシェル型に新しくなったボンネットも前端を20mmほど高くし、より水平になり、バックドアもこれまでより垂直に近く立てられた。樹脂製のホイールアーチもこれまでより幾分か角張っている。


とはいえボクシィといっても質実剛健な『ジムニー』風というよりも、現行『スペーシア』にも通じるボディサイドの面の張り、小気味いい“角R”は、シンプルなギヤ(道具)の趣を醸し出す。窓も角を丸めたシンプルな四角形とし、ドアガラス面をフルドアのパネルからレリーフで沈ませて奥行きを出し、堅牢なルックスを作り出している。

窓といえばリヤクオーターウインドが新設され、2トーン車ならこの窓まで色分けすることで『ジープ・ラングラー』のハードトップのような見せ方にしたのも新しい。ちなみに四輪デザイン部・エクステリア課・高羽則明さんによれば「新型の外観は、アウトドアの本格アイテムを日常使いするイメージ。ジェリ缶のような力強さ、タフさを狙った」とのこと。

座った瞬間に実感できる室内の広さと使い勝手


他方で室内について、四輪デザイン部・四輪インテリア課・竹口久志呂さんによると「インパネの丸3つのテーマはチャレンジングだったが、アウトドアギアの機能を守るベゼルからの発想。車中泊を意識した収納やシート形状も特徴」という。

今回室内空間は、ホイールベースが35mm伸ばされ広がった。前後席間の余裕は+35mm、前席は左右乗員間距離で+30mm、ショルダースペースで+32mm拡大。この効果は運転席に座ると説明を受けなくとも実感できる。運手席からはフロントガラス越しの“見上げ角”も改善されたそうで、確かに信号待ちの先頭で『クラシック・ミニ』のように信号を見上げる姿勢が、やや楽になった気はする。

インテリアで何といっても目がいくのが、かつて見たこともないインパネの3連フレーム。昔なら“水中メガネ”と呼んだだろうが、今どきは腕時計やスマホなど“精密機器のプロテクター”のイメージだそう。ちなみに3つともデザインとサイズは微妙に違っており、助手席側は加飾を兼ねたカラーコードを装着し、質量の大きくないちょっとしたモノを挟む使い方もできる。Gグレードのシンプルなポケット式も悪くない。


中央の表示部は専用のメモリーナビを装着した場合に画面を3分割で表示でき、色や画面左右の入れ替えなどカスタマイズも可能。実車で確認したが9インチ画面と大きいうえ、レイアウトもシンプルでわかりやすく、操作性は上々だった。また運転席側のカップホルダーは固定式とし、手前に開けたスリットは、ドライバーが外した自分の腕時計のベルトを通して置けるようにしたものという。

前席は左右セパレートとなり着座感が向上した。左右シート間には材着のカラフルなカップホルダー付きのポケットが設けられた。後席のスライド機構は健在で、これはラゲッジスペース側からストラップを引くことでも操作が可能。客室側でシートをリヤモーストにすればスペースの余裕は十分で、この時、新設されたリヤクォーターウインドゥがちょうど“明かり採り”の役割を果たして、ルーミーで快適な居住空間を作り出している。

装備では前席左右にシートヒーターが標準装備されるのがありがたい。またフロントドアは開ける際、中間に2ノッチが設けられているため、狭い場所でドアを開ける場合の扱いやすさを向上している。HYBRID X系はフロントドアガラスとフロントガラスにUV&IRカットガラス(ドアガラスは両方)を採用し、これは女性ユーザーに喜ばれるはずだ。

新開発NAエンジンの感触と乗り味は

試乗したのは「HYBRID X」のターボの4WDと、NAの2WDの2車。NAは新開発のR06D型でデュアルインジェクターほかの採用で、2WD=25.0km/リットル(WLTCモード)を達成したもの。今回は実際の燃費は未確認、かつ短時間の試乗となったが、同じく新開発のCVTとの組み合わせで、感覚的には効率的に仕事をこなしている……そんな印象。

Sモードを使うと加速時のキレ味も増す。ただし高回転域を使うと車内に届くエンジン音は、まだ馴染みが出る前の新車のせいか、やや大きめに感じられた。他方でターボは、NAと同じようにアクセルを踏み込むと、NAに対し加速の力強さ、速さの差が実感でき、よりストレスなくクルマを走らせていられる……そう感じた。

乗り味はまずまず穏やかなものだが、今回の2車同士では、ターボのほうが車重差(+60kg)と前後重量配分の違いで、小さな揺れが吸収されたドッシリとした乗り味だった。それと新型ではボディ剛性の向上(ねじり+30%、曲げ+50%)と吸音性のある成型天井材、全面フェルトの一体成型型フロアカーペットの採用など音・振動対策の効果で、走り出して、“軽自動車としてはスッと静かな室内”に感じられたことも付記しておきたい。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

《島崎七生人》

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