【マツダ CX-30 新型試乗】SUVが売れる理由が何となく理解できた…中村孝仁 | Push on! Mycar-life

【マツダ CX-30 新型試乗】SUVが売れる理由が何となく理解できた…中村孝仁

年末年始と、マツダから『CX-30』をお借りして800kmほど走行した。ちょうど娘家族が集まったため、子供含んで5人フル乗車であちこち走り回っても見た。その結果として、SUVを求める…と言うか売れる理由が何となく理解できた。

自動車 試乗記
マツダ CX-30 XD Lパッケージ
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年末年始と、マツダから『CX-30』をお借りして800kmほど走行した。ちょうど娘家族が集まったため、子供含んで5人フル乗車であちこち走り回っても見た。その結果として、SUVを求める…と言うか売れる理由が何となく理解できた。

マツダ3との違いをどこに求めるのか?

ご存知の通りCX-30は最新の『マツダ3』をベースとしたモデル。したがってプラットフォーム及びエンジンラインナップなどはマツダ3とほぼ共通である。となるとその違いをどこに求めるか?という話になる。

妖艶なスタイルのマツダ3は確かにそのデザインが魅力だし、インテリアの上質さやキビキビとした運動性能にも魅力を感じた。しかし、そのほとんどを実はCX-30も持ち合わせている。その上で室内空間はマツダ3を上回り、おまけにラゲッジスペース容量についてもマツダ3よりは上。そして市場ではライバルになるであろうホンダ『ヴェゼル』などに対しても上を行っている。

もっともヴェゼルは『フィット』がベースだから対等な比較とは言えない。CセグメントのSUVとなると、例えば輸入車ではプジョー『3008』とかVW『ティグアン』などが想定されるが、これらはそれぞれ520リットルと615リットルで、CX-30の430リットルを大きく凌駕するが、どちらのモデルも全幅、全長ともに長く、ボディサイズ面で比較したら、CX-30のラゲッジ容量はそこそこという判断が出来る。


つまり、CX-30はサイズ的にコンパクトで且つ、ハッチバックよりも明らかに使い勝手が良いという結論が導き出せるのである。1795mmという全幅にしても4395mmという全長にしても、それぞれ1.8mを切りたい、4.4mを切りたいという開発目標がかなり明確ににじみ出ている印象だ。しかも全高は1540mmで立駐対応。ここでもマツダ3より全長で短いCX-30の使い勝手が好結果をもたらす。

外見でもSUVとしてはかなり車高の低い部類のモデルだ。試乗車の車両本体価格は306万9000円で、これはトヨタ『CH-R』の高いモデルとほぼ同等。ヴェゼルよりは若干高いという位置関係である。

マツダが提唱する“ドラポジ”が真価を発揮

マツダCX-30
一番ロングツーリングをしたのは横浜から茂木ツインリンクまでの往復350kmほど。ここで真価を発揮したのはマツダが提唱しているペダル位置とドライバーのポジショニング。常にステアリングに真正面から向き合い、理想的な位置にアクセルペダルやブレーキペダルが配置されているから本当に疲れにくい。このメリットはやはり大きいと思う。

1.8リットルディーゼルはひとクラス下の『CX-3』と同じもの。同じFWD、「Lパッケージ」同士で比較するとCX-30が160kg重い。というわけで、ディーゼル特有のトルクフルな走りの印象は少々希薄で、恩恵が受けられるのは燃費だけ。スムーズで静かな回転フィールのガソリンと比較しても、性能的なアドバンテージはあまり感じられなかった。

因みに茂木往復の時は車載コンピューターの燃費で17.6km/リットルを記録。その後一般道と高速を50:50程度の走りをしておよそ15.1km/リットルという燃費が得られた。WLTCでは19.2km/リットルだから、3割弱モード燃費よりは悪い計算であるが、このサイズと重さならかなり妥当な線じゃないかと思う。

1週間乗ってわかること

見るからに精悍なデザインだが、Aピラーは相当に寝かされていて、小柄なドライバーがシートを前に出してポジションを取っていると、乗降の際にこのAピラーがかなり邪魔になる。それと、新しくなったパナソニック製のマツダコネクトだが、相変わらずダイヤル式の設定方式が使いにくくナビ設定がスムーズにいかなかった。

それに画面自体は横方向に大きくはなっているものの、以前のもの(CX-30に以前はないが)と比較して大幅に大きくなっているという印象はなく、強いて言うならディスプレイが綺麗になった程度の差でしかない。こうしたところは使いこんでみて初めて気が付く部分で、やはりクルマは最低でも1週間ぐらいは乗ってみないとわからないものである。

マツダ3と比較すると手ごろ感が際立つ

マツダ CX-30
一番気になっている点はやはり乗り心地だ。人の慣れとは恐ろしいもので、初期の印象でドタツキ感を感じたり突き上げ感を感じたりしても、まあそうした印象は2日も乗れば取れてしまい、これはこれでいいんじゃない?という気持ちに落ち着くのだが、より乗り心地の良い他車に乗り換えてから、改めて乗ってみるとやはり初期の印象が再び戻ってくる。その時にそれが許容の範囲か範囲外であるかに初めて気が付く。

結論から言ってCX-30の乗り心地がとても良いかと言われたらそれはNOなのだが、ではファミリカーとしてあるまじきものかと言われたらそれは無い。微妙な言い回しで恐縮だが要は個人的には満足していない、ということである。つまり乗り心地はもう少し改善して欲しい…である。トーションビームのリアアクスルは確かに固定点が少なくなって取り付け剛性アップには寄与するが、それで良くなるのはハンドリングで乗り心地自体はやはり限界があると思う。

CX-30をハッチバックのマツダ3と比較すると、やはり使い勝手と日常の足としての便利さでCX-30の方が手ごろ感が強く、しかも車高が低くて日本的に立駐に入ることを考えれば、最早ハッチバックを選ぶ理由がどこにあるのか考えさせられてしまった。どっちを選ぶかと言われたら、多分悩んだ末にCX-30となる気がする。

いずれのモデルも近年のマツダらしくとても上質で、室内にいる限りプレミアムカーに乗っている印象すら与える。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める

《中村 孝仁》

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