【ボルボ S60 新型試乗】セダンは今となっては贅沢なのかもしれない…中村孝仁 | Push on! Mycar-life

【ボルボ S60 新型試乗】セダンは今となっては贅沢なのかもしれない…中村孝仁

◆「非常~にイイ!」
◆S60のキャラクターを引き立てる素直な走り
◆今やセダンは贅沢、だからこそ端正な姿を生む

自動車 試乗記
ボルボ S60 新型(T5インスクリプション)
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「非常~にイイ!」

最近テレビドラマ『同期のサクラ』というやつに嵌っている。主人公の高畑充希扮する北野サクラが写真を撮る際に発する「非常~にイイ!」という言葉が面白く、つい録画してみてしまう。

まあ、主人公のようなキャラだったら、間違いなく世の中では生きていけないだろうなぁと思いつつ、現実離れしたストーリー展開が面白い。

で、ボルボ『S60』の話だが、一言で表現すると「非常~にイイ!」となるわけだ。俗に言うDセグメントハイエンドのカテゴリーには、メルセデスベンツ『Cクラス』、BMW『3シリーズ』、アウディ『A4』ジャガー『XE』などが含まれ、これらと競合するのがS60であるという認識なのだが、S60を除くすべてのモデルは何かが足りない。

全部満たしているのは個人的にCクラスと3シリーズだと思うのだが、Cクラスは少し古さを感じてきているし、3シリーズは内装がピンと来ない。そこへ行くとS60はすべての部分を満遍なく高次元で満たしてくれている。

S60のキャラクターを引き立てる素直な走り


FWDなのだが横から見ても頭の重さを感じさせないデザインは、現行のモジュラープラットフォームであるSPAで拘った、Aピラー付け根からフロントホイール中心までの距離を一定にした(長く取った)結果。いわゆるフロントオーバーハングの長さを感じさせないうまいデザインにまとめることが出来、これを使った『XC90』以降のボルボデザインは、どれを見ても端正な落ち着きと、独特なキャラクターを持った美しいデザインに仕上がっていると個人的には思うわけで、特にこのS60の美しさは際立つ。

ライバルの中で最も抜きん出ていると思うのが内装のデザイン。流木を模したような風合いを持つドリフトウッドのダッシュボード。珍しく縦長のディスプレイを使ったセンタースタック。押すではなく回すというこだわりのスターターボタン等々、最近のボルボ共通の個性もまあ自分の趣味に合っていて好ましく思えるというところもある。


一昔前まで、その走りのつまらなさをいつも指摘されていたボルボだが、最近のモデルはのんびり走っても、少し神経を集中してワインディングなどを軽快に走ってみても、とても素直でライントレース性も高く、アクセルレスポンスもドライバーの意思に忠実に反応してくれる。運転する面白さという点では3シリーズに譲るように思うが、S60の持つキャラクターを考慮すれば、このあたりのセッティングがむしろ好ましいと思え、それが逆にS60のキャラクターを引き立てているようにも感じられる。

今やセダンは贅沢、だからこそ端正な姿を生む

SPAデビュー当時に感じられた突き上げ感の強さは完全に影を潜め、しなやかで軽快な走りを披露してくれる。そんな走りに一役買っているのではないかと思えるのがタイヤだ。銘柄を記せば、コンチネンタル・プレミアムコンタクト6だから、何だよどこにでもあるじゃん?という話になるのだが、実はそうじゃない。


そのプレミアムコンタクト6というレターの下に「VOL」と書かれているのだ。即ちプレミアムコンタクトでもボルボ専用を意味する。つまり乗り心地や走りに拘ってタイヤを共同開発する…ここまではどこのメーカーでもやっていることだが、敢えて名前を入れたタイヤを履かせているのはボルボを置いて他に知らない。

というわけで、このクルマにはその質感や性能(運動)、あるいはキャラクター付けにかなり拘った印象があるわけである。

セダンというクルマの形は今、世界中で存在意義そのものを問われているような状況で、世の中、総SUV化に走っている印象すら受ける。小さなクルマになれば機能性を最大限に発揮させるためにハッチバックという形を取る。つまり、メカニズムのスペース、乗員のためのスペース、そして荷物のためのスペースを個別に取るセダンという形式は、今となってはとても贅沢なのかもしれない。だからこそ端正でフォーマルな姿を生む。そんな理由でこのセダンという自動車の形が好きだ。

最近プジョー『508』がとても美しいセダンだと思った(と言ってもテールゲートがあるが)。ボルボは純粋なセダンとして最も端正な形をしたモデルだと思う。「非常~にイイ!」

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める

《中村 孝仁》

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