セダンに相応しい「心地いい系」の雰囲気
『シビック』のセダンと外観は一見すると共通か？と思える。が、ノーズ回りの厚みや前後の意匠、ドアハンドルの位置、サイドウインドモールの回し方などは専用。シルエットは同じだが、『インサイト』はボディ面の表情を含め、よりフォーマルでしっとりとした印象だ。
インテリアも同様。インパネは平たく言うとひと頃のホンダ車の宇宙船のようだった（!?）ガチャガチャした佇まいが影を潜め、インパネ全体とドライバー側を大きく包み込むデザインを基本に、長時間を過ごしても気持ちが乱されない（？）、セダンに相応しい心地いい系の雰囲気をモノにしている。
インパネの助手席側には触ると僅かに柔らかな感触が味わえる新しい素材がパッドとして用いられる。2眼式のメーターはオーソドックスで見やすく、1眼式の『シビック』のほうがむしろHVに思えるほど。シフトスイッチ横には、奥に2つのUSBジャックを備える、スマホを置くのにちょうどいいスペースが。あまりにちょうどよく、手持ちのiPhoneXを入れたTUMIのレザーケースが同化しすぎて、そこに置いたままインパネのカットを撮影してしまったほど（！）である。
今こそ「コンチェルト」の作風を
室内スペースは実用上の不足はない。が、運転席に乗り込む際、左足のスネをインパネの角に当てやすい（のはホンダ車でしばしば見られる傾向）。レポーターは乗り込んでから、相当、座面を高く調整し直て走り出したが、セダンとしてイニシャルのポジションは少し低めか？
昔、『シビックセダン』に対しポジションも乗り味もセダンとして上品な英国仕込みの『コンチェルト』があったが、ああいう“作風”は今こそあってもいい気がする。トランクスペースは、バッテリーを後席下に収めるなどの工夫で普通のガソリン車と変わらず、十分な容量を確保している。
ワインディングの身のこなしは「シビック」が一枚上手
一方で走らせてみると、ハイブリッドを意識させない自然さが印象的。走行モードの切り替えはNOMAL／SPORT／ECONの3種類が用意され、いずれのモードでもEVスイッチを押せば、可能な状態であれば静かなモーター走行ができる。
全体にクルマ任せの走らせ方でもハイブリッドの制御は裏方に徹している風で、やや意地悪くアクセルを強く踏み込み、エンジンを唸らせることさえしなければ、静粛性も全体に高い。今回は走行距離100km未満で、省燃費運転をまったく意識せずに走った満タン給油時の燃費は計算上21.1km/リットルほど。これはカタログのWLTC-L（市街地モード）を僅かに下回る数値だったが、走り込み、クルマの特性を駆使すれば、もちろん数値はもっと向上させられるはずだ。
乗り味は17インチタイヤのせいか、ごく限定的だが路面状況により音・振動の伝わり方が気になることがあった。また同じセダン同士で『シビック』と較べた場合、以前に乗った試乗車の記憶だと、車重が90kg軽く16インチタイヤ装着車だった『シビック』のほうが、ワインディングでの素直な身のこなしの点で一枚上手だった……とも感じた。
■5つ星評価
パッケージング：★★★★
インテリア/居住性：★★★★★
パワーソース：★★★★★
フットワーク：★★★★
オススメ度：★★★★★
島崎七生人｜AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
