【ホンダ N-BOX 試乗】まさに下克上。こりゃ、ホントに軽か?…中村孝仁 | Push on! Mycar-life

【ホンダ N-BOX 試乗】まさに下克上。こりゃ、ホントに軽か?…中村孝仁

業界の盟主がその2代目を作るにあたり考えるのは、多くの場合大胆な変革は求めず、無難にキープコンセプトでやり過ごそうということのような気がする。

自動車 試乗記
ホンダ N-BOX
  • ホンダ N-BOX
  • ホンダ N-BOX(左)とN-BOXカスタム(右)
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業界の盟主がその2代目を作るにあたり考えるのは、多くの場合大胆な変革は求めず、無難にキープコンセプトでやり過ごそうということのような気がする。

確かにスタイルだけ見れば…つまり街を行くホンダ『N-BOX』の新しいモデルを見れば、多くの人はそう思うに違いない。しかしである。その見た目とは裏腹に、ホンダは2代目のN-BOXをとことん違うものに変えた。

エンジン、トランスミッションは新設計。そしてボディも新設計。スタイルこそ、概ね旧型のイメージ踏襲、と言ったところなのだが、これにしてもデザイナー氏に言わせると相当に目新しくしているのだということだった。

それにしてもその金の掛け方、尋常じゃない。ボディの作りはホンダセンシングを標準搭載するなど商品力をアップしたうえで、その骨格自体を軽量化。装備追加などを差し引いても先代より80kgも軽くしている。エンジンはあのi-VTECを採用した。勿論これ、VTECでイメージされる高回転エンジンによる高性能化という観点で使われているのではなく、燃費性能とスムーズな加速性能を両立させるために採用されたものだ。

トランスミッションも従来同様CVTではあるが、2系統吐出オイルポンプを採用する新設計とされている。そして細かい点をあれこれいじった結果として、57cmものスライド量を誇る、スーパースライドシートを実現させている。もっともこれは上級グレードのみの設定ではある。シートはベンチタイプとセパレートタイプ(フロントシート)の2種類があり、今回試乗したN-BOXはベンチタイプのもの。やわらかいテキスタイル地の表皮は実に触感が良く、快適。インパネにはハードプラスチックが使われているのだが、見た目の印象はそうとうに上質感を醸し出すことに成功している。

ご存知の通りN-BOXには普通のN-BOXとフロントフェイスを変え、少し上質感を引き上げたN-BOXカスタムがある。こちらの勝手な思い込みは、カスタムの方が同時に高性能をイメージしてしまいがちなのだが、エンジンチョイスはどちらにもNAとターボが存在し、今回はノーマルのN-BOXにターボ仕様のエンジンが搭載されていた。

NA仕様と2台つるんで出発。後ろからNAを追いかける状況となったが、追うのは実にイージー。果たして前を行くNA車がどの程度一生懸命だったかは定かではないが、まあ普通の道を普通に走る分には正直なところ、NAもターボもそれほど大きな差はないなぁ…と感じた。しかし、いざ首都高速に乗ってみると、その差は歴然。やはりターボの威力は大きかった。

それにしてもこの乗り心地の良さ。これ、ホントに軽か?という疑問符が頭の中にパッパッと点灯するほどで、過去に試乗したどの軽よりも快適でスムーズな乗り心地を持っていることは疑いもない。試乗を終えて、エンジニアの人々と話をしたが、これだとコンパクトの『フィット』との間に下剋上が起きますね…と話を向けると、うちは下克上得意ですから…との返事が帰ってきた。足の形式そのものは極当たり前の構造で、フロントをストラット、リアにトーションビームを用い、そのビームの中にスタビライザーを仕込んだだけなのだが、コンプライアンスブッシュを大きくしたり、例によってエンジンの液封マウントを採用するなどのチューニングが功を奏しているのか、とにかくしっかりとロールも抑えられ、背高ノッポのくせしてそれなりのロードホールディングも保ってくれる。

軽くなった結果としてのペラペラ感も皆無。ここでもホントに軽か?の疑問符が付いた。

スタイリングに関しては正直興味を持つ人ならば微妙な違いを敏感に感じ取るのだろうが、今のところ全く軽自動車の必要性を感じていない僕には響くところがない。それでも、いわゆるスーパーハイト系のみならず、軽自動車でNo1の販売実績をモデル末期でも誇ったほどの人気車。プロジェクトリーダーの白土さんはじめ、このクルマに関わった人々の並々ならぬ思いがひしひしと伝わるモデルであった。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

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