アンティフォン 松居邦彦の『カーオーディオ そこんとこ、実際ど~なのよ?』 No.99 新「デモカー・製作記」#04 | Push on! Mycar-life

アンティフォン 松居邦彦の『カーオーディオ そこんとこ、実際ど~なのよ?』 No.99 新「デモカー・製作記」#04

話題のハイエンドスピーカー、ダイヤトーン・DS-SA1000を搭載する、アンティフォンのニューデモカーの製作記をお届けしているのだが、そのスピーカーと同じくらいに今、松居さんが注目しているシステムがある。クラリオンの『Full Digital Sound』がそれだ。

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話題のハイエンドスピーカー、ダイヤトーン・DS-SA1000を搭載する、アンティフォンのニューデモカーの製作記をお届けしているのだが、そのスピーカーと同じくらいに今、松居さんが注目しているシステムがある。クラリオンの『Full Digital Sound』がそれだ。

実を言うとアンティフォンでは今、これを搭載するデモカーの製作も、密かに計画されている。なので今回の新「デモカー製作記」では、この2つの新システムについて、横断的に話を進めていきたいと考えている。

というわけで引き続き今週は、松居さんが『Full Digital Sound』に注目しているその理由を、じっくりと綴っていただこうと思う。このシステムのどこに、松居さんは可能性を感じているのかというと…。

■最近は、レコードを聴く機会が増えている。なぜならば…。

前回の記事で、『Full Digital Sound』にも注目している旨を綴らせていただいた。その中で、「オーディオ再生においては、アナログレコードの再生が他の何よりも心に響く。『Full Digital Sound』のメカニカルなD/Aコンバーターは、この状況を象徴する、または、この状況に対する答であるような気さえする」と記させていただいた。

今回は、こう記述したその心を、もう1歩踏み込んで解説してみたいと思う。

ところで最近の僕のオーディオリスニングは、レコードを聴く機会が多くなっている。そのきっかけは、ベルリンフィルのダイレクトカッティングを手に入れたことにある。

通常は、演奏をマスター(HDD)に収録、編集をしてからカッティングするのであるが、このダイレクトカッティングという録音方法では、演奏会場へカッティングマシンが持ち込まれ、演奏がそのままダイレクトにラッカー盤にカッティングされる。テープレコーダーがないSPレコード時代と変わらない方式ではあるのだが、もっともシンプルであり、かつ、鮮度が高く保てる録音方法なのである。

ちなみに、LPの時代にも、オーディオファイル向けにHi-Fiの限界に挑む方向性のダイレクトカッティングは存在していた。ただ当時のディレクションでは演奏への配慮を最優先にできなかったからなのか、名演奏は生まれなかったように思う。

しかし今回のこの作品は、それらとは明らかに違っている。サイモン・ラトルがヨーロッパの名門ベルリンフィルを指揮し、ブラームスの全集が演奏され、それがこの方式で録音されている。演奏内容と録音のクオリティ両方共に素晴らしく、過去には到達できなかった領域を克服した快挙と言って良い作品だと、僕は感じている。

この「録って出し」の無修正な録音では、まるで見えているかのように目前に立体的なオーケストラの存在を感じられる。それは決して心地良いというわけではないのだが、とにもかくにも、好奇心を満たしてくれるのだ。ステージの中の音はこんな感じなのか、と通常は“覗けない”指揮者のポジションに身を置くことができ、指揮者が聴いているバランスが感じられるのだ。そしてこの作品を聴くことで改めて、通常の録音は、ホールトーンも適度に感じられる特等席で鑑賞しているかのようなバランスが考えられて制作されていることがよくわかる。

さて。CDが開発されてからのオーディオ界は、電気回路を中心にイノベーションが繰り返されてきたような気がする。デジタルイコライザー&クロスオーバー、ハイサンプリング、DSD…。特に日本では、デジタルがアナログを追い越したかのような風潮となっていた。CDがアナログレコードの次世代のメディアであるかのような雰囲気だったのだ。

そんな時代のさなかだった95年に、僕は初めてアメリカのオーディオショーを体験した。そのとき、ハイエンドオーディオの世界ではアナログがメインソースであり、デジタルはBGMという扱われ方をしていて、そのことにいたく驚いた。

そして今では、デジタルのハイレゾ化が進みつつあるのだが、それは、“デジタルがアナログになるため”に行われていることだと言っていい。しかしながら、それを推し進めたところでも、機械の工作精度の向上につれて進化し続けるアナログレコードを再生する装置には、追いつけていない。それがデジタルの現実なのである。

そんな中、機械式D/Aコンバーターである『Full Digital Sound』(D-NOTE)は、メカニズムとデジタルアルゴリズムを同時進行で開発でき、結果をダイレクトに反映させられる装置となっている。電気回路でデジタルをアナログに戻すのではなく、スピーカーという機械が、デジタルをアナログに戻すのだ。その仕組みは、ダイレクトカッティングの醍醐味と、とても似ているような気がしてならないのである…。

《松居邦彦》

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