【シトロエン C4ディーゼル 900km試乗】古き良き時代のヨーロッパ産ファミリーカーの味…井元康一郎 | Push on! Mycar-life

【シトロエン C4ディーゼル 900km試乗】古き良き時代のヨーロッパ産ファミリーカーの味…井元康一郎

今年7月、仏シトロエンのコンパクトファミリーカー『C4』に1.6リットルターボディーゼル版が追加された。そのC4「FEEL BLUE HDi」で700km+200kmの計900kmほどツーリングしてみたのでリポートする。

自動車 試乗記
シトロエン C4 FEEL BLUE HDi
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今年7月、仏シトロエンのコンパクトファミリーカー『C4』に1.6リットルターボディーゼル版が追加された。そのC4「FEEL BLUE HDi」で700km+200kmの計900kmほどツーリングしてみたのでリポートする。

現行C4は2010年に欧州デビューを果たしたモデルで、フォルクスワーゲン『ゴルフ』やフォード『フォーカス』、日本車ではトヨタ『オーリス』などと同じクラスに属する。1.6リットルターボディーゼルは排出ガス中のNOx(窒素酸化物)を尿素SCRという装置で処理するのが特徴。スペックは最高出力120ps、最大トルク300Nm(30.6kgm)。変速機はアイシンAWの6段自動変速機。

ドライブルートは東京・恵比寿のシトロエンジャポンを起点に群馬・新潟間の三国峠を越え、奥只見シルバーライン経由で新潟山中の奥只見ダムへ。そこから国道352号線経由で福島に入り、裏尾瀬、南会津、栃木の龍王峡、鬼怒川温泉を経由し、ツインリンクもてぎで二輪ロードレースの世界選手権、MotoGPを観戦したりしつつ出発地に戻るというもので、総延長719.5km。全区間1名乗車、エアコンAUTO、路面状況はドライ。


◆ある程度ヨーロッパ車に乗りなれた人向けか

まずはトータルの印象から。C4ディーゼルは古い技術を使いながらも、クルマとしての仕上がりは手堅さを感じさせる良いクルマだった。郊外および高速燃費は良好で推定航続距離はゆうゆうと1000kmを超えるなど、ロングツーリングにおける利便性はきわめて高い。スクエアな荷室と快適な居住空間を併せ持つパッケージング、疲労の少なさなど、美点は多い。

一方で、基本設計の古さゆえか、今どきのクルマと違って適当に運転してもまるで自分の運転が上手であるかのように走れるわけではなく、シャシーのポテンシャルを引き出すにはドライビングセオリーをしっかり守ることが要求されるなど、フールプルーフ性は低い。

また、都市走行においてはエンジンや変速機の特性を把握した運転をするかしないかで燃費に大差が出た。また、エンジンノイズも大きめ。これらの特質から万人向けとはいかず、ある程度ヨーロッパ車に乗りなれた人向けと言えそうだった。


◆日本の道路だからこそわかる特性も

では、各論に入っていこう。ロングツーリングの最重要ファクターであるシャシー性能は、一般道や山岳路の制限速度が日本より格段に高い欧州での使用に耐える水準を十分にクリアしている。筆者は2012年、AVISレンタカーで回ってきたC4でドイツのライプツィヒを起点にチェコ、スロバキア、ハンガリーを周遊し、オーストリアのザルツブルクまで2800kmほど走ったのだが、高速道路は旧型1.6リットルターボディーゼルの性能一杯の200km/hで走ってもスタビリティは上々。またドイツ-チェコ間の路面の悪い山岳路を100km/h制限いっぱいで走っても操縦安定性に不安を覚えることはなかった。

日本仕様も基本的な性格は同様だったが、カーブが定常円になるよう山岳路をレイアウトする欧州の道路と異なり、山肌に沿って線形が刻々と変化する日本の道路だからこそわかる特性も垣間見ることができた。カーブが来たらハンドルを切るというフィードバック的な運転をしていると、C4の運動性能はえらく鈍重なように感じられる。アンダーステアが強く、コーナリング出口でステアリングを戻したときのぐらつきも大きい。

ところが、意を決してコーナリングの少し手前でアウトからインに若干差し込むように入ってサスペンションを沈めてやるという、一昔前のクルマを運転するときのセオリーに沿ってみたところ、C4は水を得た魚のようにシャキッとした走りを見せた。C4は金属バネのモデルだが、こうして走ったときのハンドリングは90年代に売られていたシトロエンのハイドロニューマティックサスペンションモデル『エグザンティア』に似たテイストだった。

205/55R16というちょっとノスタルジックなサイズのミシュラン「エナジーセイバー」は高級タイヤではないが、グリップのねっとり感や当たりの柔らかさについては結構いい線を行っていた。シャシーはその能力を十分に生かしており、国道17号線の群馬~新潟県境の三国峠、奥只見湖畔から裏尾瀬へと続く国道352号線のワインディング区間など、道の悪いところでもドライブをポジティブに楽しむことができた。


◆文字通り「必要十分」なパワートレイン

乗り心地は道路のシチュエーションによって得手、不得手がはっきり出た。まず良かったのは、道路の大小のアンジュレーション(うねり)の吸収で、フラット感は良好。また、国道17号線新潟側の防雪洞や奥只見シルバーラインのトンネル内のようにコンクリート舗装が老朽化して割れや欠損が多い路面におけるハーシュネス(突き上げ、ざらざら感)の処理の優秀さは特筆すべきもので、まるで良い道を走っているような錯覚を覚えるくらいであった。

一方で、比較的ピッチの大きな段差や突起を通過したときの衝撃吸収能力は、Cセグメントのアベレージを大幅に下回っていた。これは欧州でのドライブでも感じられたポイントで、たとえばチェコの首都プラハから南部の都市ブルノまでの老朽化著しい高速道路区間では、コンクリート路盤の段つきを通過するたびにガチン、ガチンというかなり直接的な衝撃を伝えてきた。日本仕様のC4も大きな段差や突起に弱いという点は解消に至っておらず、普段が滑らかなだけにいきなりドンと突き上げられてびっくりすることが時々あった。

疲労の蓄積度合いについてはセグメントのトップランナーではないが、基本設計が古いわりにはかなり優秀な部類に属していた。シート設計やドライビングポジションの設定は、こう座るべきという拘束感がほとんどなく、しっかりとした姿勢で座ってもだらしなく座ってもそれなりに許容するという印象だった。シートのホールディング性はほどよく、小さな回り込みが延々と続く奥只見湖岸のルートでも体を支えるために変に力が入るといったことはなかった。ロングツーリングへの適性は十分と言える。

1.6リットルターボディーゼル+6速ATからなるパワートレインのパフォーマンスは、Cセグメントとして必要十分という水準だった。必要十分と言うと、よく大したことがないということをマイルドに表現するときに使われたりするが、筆者はそういうレトリックは嫌いで、ダメならダメと書く。文字通り、必要十分に感じられたのだ。最高出力は120psにすぎないが力感は十分で、深夜の三国峠の急勾配でも気持ちいいくらいの速力を発揮した。

プジョー・シトロエンはよりハイパワーな2リットルターボも持っているが、制限速度の低い日本ではこの1.6リットルで十分お釣りがくるだろう。ちなみにヨーロッパで乗ったC4はこれより1世代古い110psの6速MTだったが、トップスピードはメーター読みでちょうど200km/hだった。ギア比にもよるが、日本仕様も同等以上の性能は持ち合わせていると推定される。

組み合わされる変速機はアイシンAWの6速AT。面白いのはその味付けで、トルコンスリップを多用したりせず、いったんロックアップすると運転パターンが大きく変わらない限りロックアップクラッチはリリースされない。マニュアルモード時、全自動モードともに、変速感もガシガシと明瞭だ。変速ショックを嫌うカスタマーにはまったく向かないが、変速フィールがはっきりしているのを好む向きには嬉しくなるセッティングだろう。


◆意識すれば25km/リットルも

今回は事情があって正確な燃費データは取れなかったが、平均燃費計ベースでみると、ロングランにおけるエコノミー性能はディーゼルらしく良好だった。ロングランでは山岳路を含め、速めのペースでおおむね22~23km/リットル。惰力を有効活用するなどちょっと燃費を気にして走れば25km/リットル前後で走ることも十分できそうだった。

ただし、シフトプログラムは日本の運転パターンと微妙に合っていないところもあり、下の段に滞在しっぱなしのときにはマニュアル操作でシフトアップしてやったほうが燃費は良くなる。C4は欧州Cセグメントモデルらしく、燃料タンク容量は60リットルある。ロングランでの“航続1000kmクラブ”入りは余裕。上手く走れば行程1400km強の東京~鹿児島を無給油で乗り切れるかもしれない。

一方、東京都内では運転の仕方によって燃費に大差が生じる。ダラダラとした加速をしているとかえって燃費が落ちる傾向が顕著で、飛ばしてもいないのに12km/リットル近辺まで燃費が落ちる。ある程度アクセルをしっかり踏み、加速時間が長くならないように運転すれば15km/リットルくらいで走ることができた。

室内はCセグメントファミリーカーとして十分に良い居住感を持っていた。スペース自体、広大ではないが狭くもなく、収まりが良い。ウインドウ面積は広く、視界、採光性とも十分だ。また、今回は積極的に使うシーンはなかったが、素晴らしいのはラゲッジスペースの設計。ヨーロッパでC4が回ってきたとき、67cmサイズのトランクがぴったり4つ収まり、その上にバッグなどを置くこともできた。さすがトランクルームと言うだけのことはあるなと思ったものだった。容量も400リットル超と十分だ。

先進装備の欠如はC4の弱点のひとつ。クルーズコントロールは追従式ではなく、その他のハイテク装備もほとんど持たない。筆者はハイテク装備を積極的に使うほうではないのでほとんど気にならなかったが、クルマに先進性を求めるカスタマーにとっては不満に感じられるところだろう。大きな弱点として挙げられるのは、シティエマージェンシーブレーキが未搭載であること。フロントウインドウを透かして単眼カメラのようなものが見えたので装備されていると思い込んでいたが、後でカタログを見る限り未装備。先進安全装備は今日、重要な競争領域となっているので、ここはぜひ本国に頑張ってほしいところだ。


◆緊急時にはやはり古典的な装備が役に立つ

余談だが、今回の試乗でものすごく有難かったのは、ラゲッジルーム下部にテンパータイヤが装備されていたことだった。試乗を兼ねて岩手県の平泉で行われる熱気球ホンダグランプリの取材に出かけようと夜間に国道新4号線を走っていたところ、クルマを輸送するローダーが道板を固定せずに走行していたため道板を落下させ、後続の8台が巻き込まれる多重事故が発生した。

ドライブ時には事故には細心の注意を払ってしかるべきものなのだが、前のクルマに“まきびし”をやられるといかに対処が難しいかを思い知った。3年ほど前に国道25号線、通称名阪国道で若者が運転する逆走車に出くわしたときも、相対速度が大きいことのすごさを目の当たりにしたが、まだ対処のしようがあって事なきを得た。が、まきびしはダメだ。さすがは忍法の常道である。前方で進路を乱す車両を見るのに精一杯で、落下物を踏んでしまった。落下物は過失相殺が10:0とされているのも道理だったのかと変に感心した次第だった。

8台のうち最後尾にいた筆者の乗るC4は幸運にも最も被害が軽く、リアタイヤがバーストしただけだったのだが、バーストにはタイヤパンク修理キットは無力。テンパータイヤが見えたときには、その存在が本当に神々しかった。熱気球レース取材はダメになったが、東京まで自走して帰ることができたのはまさにそのおかげ様。緊急時にはやはり古典的な装備が一番役に立つのだなあと思うことしきりであった。その1回目の走行距離は約200km。今回リポートした700kmの試乗は翌日に別のC4に乗り換え、ルートも変更して行ったものである。


◆ロングラン志向のカスタマーに

まとめに入る。C4ディーゼルは今どきの200万円台後半のファミリーカーには当たり前になりつつある先進装備を欠くものの、ツーリングへの適性はなかなか高く、ロングラン志向のカスタマーにとっては適合性の高いモデルであった。クルマの動きが把握できてくれば結構アグレッシブな走りも受け入れるだけの基本性能は持ち合わせており、移動の過程でドライビングプレジャーも味わいたいという向きにはとくに合う。一方で、ダイレクト感の強いATのフィールは見方によっては変速ショックが大きいとも受け取れることや、市街地では運転の仕方によっては飛ばさなくても燃費が伸び悩むことなど、ちょっとしたお買い物や送り迎えが中心というカスタマーにはあまり合わないのではないかと思われた。

ディーゼルエンジンを積むライバルはこのクラスでは少なく、輸入車では同じグループのプジョー『308』くらいのもの。他にライバルを探すとすれば、モデルの性格はまったく異なるが、プレミアムBセグメントのBMW『MINI 5ドア』のディーゼルが価格的に近いところにいる。排出ガス不正でディーゼルエンジン展開が遅れているフォルクスワーゲンが対策を済ませば、『ゴルフ』も競合モデルとして浮上してくるだろう。

国産車では唯一、マツダ『アクセラ』の1.5リットルディーゼルの名が挙がる。また、経済性の高さという観点ではトヨタ『オーリス』のハイブリッドモデルも対抗馬とみることができそうだ。この中でシトロエンC4をチョイスする理由は、古き良き時代のヨーロッパ産ファミリーカーの味を、以前とは比べ物にならないほど高まった信頼性のもとで楽しむことができる点にあろうか。
《井元康一郎》

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