【ホンダ フリード 試乗】クルマの価値はズバリ、如何に使い倒せるか!…中村孝仁 | Push on! Mycar-life

【ホンダ フリード 試乗】クルマの価値はズバリ、如何に使い倒せるか!…中村孝仁

「ちょうどいい」を合言葉にホンダ・『フリード』が誕生したのは2008年。全長4m強で5ナンバーサイズ。そこに3列シートを構築したフリードは、ミニバン系のホンダ販売を牽引するモデルに成長している。

自動車 試乗記
ホンダ フリードプラス ハイブリッド
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「ちょうどいい」を合言葉にホンダ・『フリード』が誕生したのは2008年。全長4m強で5ナンバーサイズ。そこに3列シートを構築したフリードは、ミニバン系のホンダ販売を牽引するモデルに成長している。

今回のモデルチェンジでも、そのサイズ感はほぼ先代と一緒。全長こそ50mmほど伸びたが、あとはほぼ先代と同じだ。デザインも基本キープコンセプト。少なくとも外観からは先代との明確な違いを見つけにくい。

今回試乗したのは2列5人乗りの室内空間を持つ『フリードプラス』。先代では『フリードスパイク』と呼ばれていたモデルだ。そして試乗車に組み合わされたドライブトレーンは、1.5リットル、アトキンソンサイクルのDOHC4気筒にモーターを内蔵した7速DCTを組み合わせたハイブリッド仕様である。先代はSOHCだったユニットは、今回DOHC化された点が大きく異なるほか、モーターは世界で初めて重希土類を一切使わないネオジム磁石を使用したもので、特にナショナリズムを持っているわけではないが、中国に頭を下げないで済むから、安定的な供給が可能になった。

走りの印象は後回しにするとして、このクルマを生かすも殺すも、その本質は如何にクルマを使い倒せるか、にかかっていると思う。3列シートを敢えて2列にしたのだから、本来なら広大な荷室空間があって、如何様にも使える…と考えがちだが、実際はそうでもない。

テールゲートを開くと、大型段ボールをくりぬいたような空間が姿を現す。床面は異様なほど低い。天井までの高さは1255mm(開口部)もあって、ゴルフバックを縦積み出来るという。もっともバッグ4本立てて走れば後ろはほとんど見えないから、それはあまりやりたくない。かといって、ゴルフバッグを寝かせて積もうとしても、見事なほど四角く作られて、左右のスペースに無駄な空間が出来ているので、それはできない。横積みしようとすると、ユーティリティーボードを敷いて、その上に載せる方法しか取れず、いささか中途半端。では何故こうのような形態をとったのか…。

それは明らかにリアシートを倒して二人が横になれる空間を作るためである。震災などで家屋に入れず、車中泊をした経験がある人だと、この空間は非常に有難いだろう。それにエコノミークラス症候群の心配もない。ユーティリティーボードの下にはさらに荷物を押し込む空間があるから、例えば脱いだ靴なんかをそこに置ける(カタログの写真はまさにそうなっている)。これが、リアラゲッジスペースをこのように作り上げた最大の理由だと思う。

それ以外の使い方は、まずベッド仕様有りきの後から考えたものだろう。だから二人でキャンプに行こうとか、車中泊を前提にした使い方なら、このクルマの価値は非常に高いと思えたが、正直な話それ以上でも以下でもない。因みにここまで低い床面を作ることが出来たのは、IPU(インテリジェントパワーユニット)を従来の3列目シート下から1列目シート下に移動させたから。このクルマの場合3列目はないが、要するに一番後ろにあったものを取り去った結果、というわけである。

後回しになった走りについて。先代がデビューした時、そのあまりのステアリングの軽さに、「これだと車庫入れなんかは楽でも、通常走行で直進性に問題があるんじゃないか?」と質問したのを覚えている。それほど衝撃的に軽かった。ホンダ車は基本、超軽ステアリングの傾向が強いが、今回のフリードプラスはそれなりの節度があった。しかし、依然として軽すぎて直進安定性は出しにくい。気付かないほどの僅かな入力でも、クルマはいつの間にかあらぬ方向に行くことがあった。

『フィット』の時に問題があったDCTはすっかり改善されている。1.5リットルユニットとの相性も良く、加速性能はCVTと組み合わされるガソリン車の方が良いとのことだが、走行フィールは誰が何といってもCVTよりこちらが上。だから、ガソリン車にもDCTとの組み合わせが欲しいと要望を出しておいた。もっとも、個人的に今のところフリードやフリードプラスのようなクルマの購入予定はないが…。骨格はかなり強くなっている印象で、乗り心地もなかなかフラット感の強いものになった。このところ好んで使う、液封コンプライアンスブッシュがこのクルマにも採用されていて、それが乗り心地の向上に寄与していることは間違いないと思う。

最後に、いやはやと思うのは、合計で50ページもある立派なカタログに、エンジン・トランスミッションなどのいわゆるパワートレーンの解説は、たったの3分の1ページだけ。安全性には2ページ割いているものの、今やメカニズムは完全な黒子になった。クルマ選びが変わったのもうなずける。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来38年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

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