【BMW i8 試乗】スーパーカーのようでスーパーカーに非ず…中村孝仁 | Push on! Mycar-life

【BMW i8 試乗】スーパーカーのようでスーパーカーに非ず…中村孝仁

PHVばかりを一堂に会して行われた試乗会。そんな中でひときわ目を引く存在なのがBMW『i8』であった。

自動車 試乗記
BMW i8
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PHVばかりを一堂に会して行われた試乗会。そんな中でひときわ目を引く存在なのがBMW『i8』であった。

見るからにスーパーカーと呼べる佇まいのそれは、ドアを開ければいわゆるガルウィング風に上方に開く。上方に開く分、比較的少ないスペースでも乗降が可能だ。同じサイズのドアがヒンジで開いた場合、かなりのスペースを取ってしまうからソリューションとしてはこちらの方が良い。ボディはご存知の通りカーボンファイバーで出来ている。そしてシャシーの方はというと、これはオールアルミ製。というわけで、成り立ちとしては同じiの血統を持つ『i3』と同じである。

まあ、止まっているクルマを見てこれをスーパーカーだと思う人は99%、否、100%かもしれない。そんなわけで、恐る恐る乗り込んでみた。何よりその価格1966万円を知ってしまうと、益々恐る恐るだ。恐る恐るになるのは、スーパーカーのけた外れのパフォーマンスに対してと、もう一つはその奇抜なデザイン(多くの場合)による視界の悪さに伴う扱いにくさによるものだ。

で、i8の場合どうだったかというと、先ず桁外れたパフォーマンスと呼ぶには当たらないと思う。実際フロントに搭載した電気モーターがフロントを駆動し、リアに搭載したガソリンエンジンが後輪を駆動するこれまたハイブリッド4WDなのだが、そのどちらもが、桁外れというわけではなく、両方合わせても362psというパフォーマンスだから、最近のけた外れパフォーマンスから比べたら大人しいもの。なので、静々と走り出せば当たり前だが電気駆動のFWDで、まあ大人しいったらありゃしない…なのである。

そして二つ目。前方視界、後方視界ともに、この種のモデルとしてはすこぶる優れている。それに全体的に見切りが良いから、乗り込んですぐにほとんど普通のクルマとして違和感なく乗れた。これは大変大きな収穫であった。

街中での試乗ということで、本格的なパフォーマンスについてはここでは語れないが、前述した362psについて、大したことないじゃん?と高をくくって踏み込むと、これまた驚くような加速を示す。電気の威力がこうしたところで発揮される。つまり、おお~!となるわけで、スーパーカー的アピアランスの顔を潰さない性能も見せるのである。しかし、少なくとも街中の走りにおいて、これほど気を遣わず、そして快適で、運転が楽で、同時に周囲からは間違いなくスーパーカーとして認知されるクルマは他にあるまい。そうした点でi8は周囲に対して見せる顔と、ドライバーに対して見せる顔が全く異なるクルマだった。

PHVとしては元々バッテリーをそれほど多く搭載していない関係で、フル充電で35km走れるそうだが、これに7割レート(たいていの場合、メーカー公表値の7割ほどしか走れないという)を当てはめると、24.5km。まあそんなもんかと思う。例によって、スポーツモード、エコプロモード、それにコンフォートモードの走行モードが選択できるのはBMWの公式通り。加えて電気のみで走る「e drive」が存在する。

走り出しでほぼ電気は使い果たした状態だったので、ちょうどお隣にBMWのディーラーがあって、そこで緊急充電。30分ほどでひと目盛回復してスタートである。因みにシフトレバーをマニュアル側に倒して走行すると、一種のチャージモードとなって、比較的早くチャージしてくれる。電気とガソリンエンジンのやり取りは全くスムーズで、何の違和感もないのだが、電気の時はFWDで走行というのは俄かに信じ難い。果たして滑り易い路面でどう対処するか、雪道で走行したいという思いに駆られた。

テールゲートを開けて現れるラゲッジスペースは、極めて物足りないものだが、いざとなればリアシートにかなりのものを置けるので、2人乗りとして考えれば十分なラゲッジが置ける。ただし、このクルマ、驚くなかれ4人乗りなのである。

とまあ、あらゆる面で見た目はスーパーカーだが、実用面では普通のクルマとして使えることに恐れ入った。個人的には十分にファーストカーとして供することが出来る。ゴルフバックも詰めるし…。

■5つ星評価
パッケージング ★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来38年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

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