三菱 パジェロスポーツ 新型に見た「本格クロカンSUVの条件」 | Push on! Mycar-life

三菱 パジェロスポーツ 新型に見た「本格クロカンSUVの条件」

三菱『パジェロスポーツ』のオフロード試乗会が富士ヶ峰オフロードコースで行われた。ところでパジェロスポーツってどんなクルマ? と思われる人も少なくないだろう。じつはこのクルマ日本では販売されていない。

自動車 ニュース
三菱 パジェロスポーツ
  • 三菱 パジェロスポーツ
  • モータージャーナリスト 斎藤聡氏
  • 三菱 パジェロスポーツ
  • 三菱 パジェロスポーツ
  • 三菱 パジェロスポーツ
  • 三菱 パジェロスポーツ
  • 三菱 パジェロスポーツ
  • 三菱 パジェロスポーツ

三菱『パジェロスポーツ』のオフロード試乗会が富士ヶ峰オフロードコースで行われた。ところでパジェロスポーツってどんなクルマ? と思われる人も少なくないだろう。じつはこのクルマ日本では販売されていない。

主な販売地域は、ASEAN諸国(57%)で、そのほかアジア、ロシア(欧州含む)、中東・アフリカ、中南米、オセアニア…と、じつはかなり広範囲に売られている。

◆ASEANでの需要から独自に進化

今や世界的なSUVブームで、ポルシェの『カイエン』の成功により、様々なメーカーがスポーツサイズからラージサイズまで、様々なSUVを作っているが、最近の主流は乗用車と同じモノコックフレームを使ったタイプ。SUVを大別すると、乗用車のようなモノコックフレームを使った乗用モノコックSUVと、ピックアップトラックをベースとしたラダーフレームのクロスカントリー系SUVに分けることができる。

ラダーフレームタイプは、三菱ではパジェロが代表モデルで、クロカン4×4はこちらのタイプがほとんど。パジェロスポーツもこちらに分類される。ちなみに『アウトランダー』は乗用モノコックSUV。

ラダーフレームはその名のとおり、堅牢なはしご型のフレームを持ち、そこにサスペンションを取り付けている。キャビンもラダーフレームの上にボディを乗せている。

モノコックフレームは、ボディにフレームとしての剛性を持たせているため、フレームが必要なく軽量であるのが特徴。また操縦性の良さも特徴の一つに挙げられる。

ラダーフレームは車重が重くなりやすく、また操縦性の面ではモノコックフレームに対して有利とはいいがたいが、堅牢なフレームに直接サスペンションを取り付けているため、タフであり、またホイールストロークを大きくとりやすいのが優れている点。

ASEAN地域では、まだ道路の整備が行き届いていないところも少なくないし、また頻繁に洪水が起きたりするので、本格的なオフロード性能が求められることが少なくない。付け加えておくと、じつは乗り心地に関しては、(現代では)ラダーフレームのほうが有利といわれている。ボディとサスペンションとが独立しているため、振動がダイレクトに伝わらないからだ。

そんなわけで、とくにASEAN地域では、実用性と快適性を高いレベルで両立したラダーフレームタイプが、いまも高い人気を博している。そんなニーズから、パジェロスポーツは、ルーツを『パジェロ』としながら、スタイリッシュで高級なクロカンSUVとして独自の進化をしたクルマなのだ。

◆本格クロカンの性能をワンタッチで

4WD方式は、センターデフ式の「スーパーセレクト4WD II」と呼ばれるもので、前後駆動配分40対60の不均等トルク配分のセンターデフ式4WDで、2H(2WD)、4H(4WD)、4HLc(4WDハイギヤード+センターデフロック)、4LLc(4WDローギヤード+センターデフロック)を、電動アクチュエータを使った手元のダイヤル一つで変更できる。

つまり本格的なクロカン4×4の4WDシステムをダイヤル一つで簡単にセレクトできるのだ。しかも組み合わされるトランスミッションは8速AT。

エンジンは、新開発の4N15型2.4リットル直4 MIVECディーゼルターボ。圧縮比15.5の低圧縮比を実現。さらに吸気側にバルブタイミングとリフト量を低回転時と高回転時で2段階に制御するMIVEC機構を搭載。タービンの容量を可変制御するVGターボチャージャーも新たに採用。最高出力133kw(180ps)/3500rpm、最大トルク430Nm/2500rpmを発揮する。

ディーゼルエンジンのほか、ロシア向けに6B31型3リットルV6ガソリン(220ps/276Nm)も用意されている。

最初に試乗したのはロシア向けのガソリンエンジン。パジェロスポーツに乗り込んで、まず感心したのがそのマイルドな乗り心地だった。サスペンションからのショックや振動をフレームとキャビンの間のマウントブッシュで巧みに緩衝しているのだろう。高級車並みの心地よさがある。

しかも…というか当然ながら、オフロード性能はまんま4×4そのもの。4Hを選択するとセンターデフがロックされ、歩いて登るのにも苦労するほどの傾斜を極低速でグイグイ上っていく。もっとも傾斜のきついところで、停止して再スタートしようとしたら、リヤの片側のタイヤが空転してしまったが。こんな場合はリヤデフのロックスイッチをオンにしてやればOK。タイヤの無駄な空転が一切なくなり、スルスルときつい上り坂を登っていってくれた。

これがディーゼルだとさらに低回転域のトルクが充実しているので、アクセルをふかしこむ必要がなく、アクセル操作でさらに微妙な力加減をおこなうことができる。

山を登ればくだりもあるわけで、きつい下り坂のステージもあるが、ここではヒルディセントスイッチをオンにすれば、ブレーキ操作さえ必要とせず、ゆっくりと坂道を下ってくれる。秀逸なのは、下るスピードが足りなければアクセルを少し踏み足して加速してやればよい。速すぎる場合もブレーキを踏んで減速した時の車速に自動的に設定される。

4WDの駆動能力が試される凸凹が左右交互に配置されるモーグルステージでは、ラダーフレームのクロカン4×4ならではの性能が発揮される。ホイールストロークがものすごく長いのだ。だから走るルートにちょっと気を遣えば4つのタイヤが路面をとらえたまま走ることができるし。4WDのウイークポイントといわれる対角線上のタイヤが空転する場面では、4Lモードに切り替えればスイスイ走り切ってしまう。

パジェロスポーツは、ESP(横滑り防止装置)の機能を使って、空転するタイヤにブレーキをかけ駆動力を逃がさないブレーキLSD機能を備えている。そのためリヤデフロックを使わなくても(使ったほうがとトラクション性能は高くなるが)、楽々とモーグルステージをクリアできてしまう。

と、ここまではアトラクション的4×4の体験だが、リアルなステージでは、例えばタイやフィリピンでは、よく洪水が起こるため、渡河性能が必須(!)。パジェロスポーツも水深70cmまで水の中を走れる性能を備えているのだという。4Hまたは4Lモードに入れて、グイグイ水の中を進むパジェロスポーツの絵が思い浮かぶ。

◆日本での販売は…

最近ではモノコックボディのSUVが増え、それが当たり前になっている。もちろんモノコックボディのSUVも4WDであれば、十分以上の性能を備えてはいるのだが、改めてラダーフレームの4×4に試乗して、改めてその性能の高さに感心した。外観はとてもスタイリッシュなパジェロスポーツだが、ものすごいレベルのエマージェンシー性能を備えていた。

国内での販売の予定は今のところ未定だという。あえて予定なしという言わないところに、含みを残しているが、ともかく、4×4はいつの間にか東南アジアで洗練され、スマートで上質で高性能なSUVに進化していた。

《斎藤聡》

特集

page top