講師:中江賢治さん(サウンドステーション ウイニング)
“サウンド・チューニング”の基礎テクニックを解説している。『DIATONE SOUND.NAVI』を使いながらこれまで、『バランス』 & 『フェーダー』、『トーンコントロール』についてそれぞれお伝えしてきた。今回はいよいよ、『タイムアライメント』の基礎について。講師はこれまで同様、ベテランインストーラーであるサウンドステーション ウイニングの中江さんだ。目からウロコの興味深いお話をお聞きしてきた。
『タイムアライメント』調整のコツを解説していく前にまず、初心者ユーザーに向けて、この機能が何なのかを説明しておきたい。
これは、カーオーディオの在り方に一大変革をもたらした画期的な機能である。その理由は以下のとおりだ。
左右のスピーカーから等距離の場所で音楽を聴くことが“ステレオ”の基本事項であるのに、クルマの中ではそもそも、その基本リスニングポジションが取れない。これでは正しい“ステレオイメージ”を感じ取ることが難しい…。
しかし『タイムアライメント』の登場により、これに対処することが可能となった。近くにあるスピーカーから発せられる音に“遅延”(ディレイ)をかけることで、各スピーカーから等距離の場所で音楽を聴いているのと同じ状況が作り出せるようになったのだ。
ところで…。
ハイエンドカーオーディオにおける『タイムアライメント』と、一般的なAV一体型カーナビに搭載されているそれとでは、少々違いがある。前者では、左右のツイーター & ミッドウーファー計4つのスピーカーを別々にコントロール可能なのだが、後者では、左右2chの『タイムアライメント』となっていて、ツイーターとミッドウーファーを個別に扱えないのである。
各スピーカーそれぞれを個別にコントロールしようと思えば、フロントスピーカーだけで4chが必要だ。リアスピーカー用のchもフロントに使う(リアを殺す)というやり方はあるものの、それをしない場合は、フロントに与えられたch数は2つだけ。ツイーターとミッドウーファーを1つのスピーカーとして扱うことになるのである。というわけで、マルチで扱えるものに対して、“左右2chタイプ”の『タイムアライメント』は、“簡易版”ということになる。
ちなみに、『DIATONE SOUND.NAVI』だけは、リアスピーカーを鳴らしながら(殺さずに)、フロントの2chの信号を、ツイーター帯域とミッドウーファー帯域にわけてコントロールすることが可能だ。これを可能とする機能が『マルチウェイタイムアライメント』。『DIATONE SOUND.NAVI』は特別なのだ。
さて…。当特集では『DIATONE SOUND.NAVI』を使って解説している。であるならばこの『マルチウェイタイムアライメント』の使い方をお教えしたいところなのだが、これを一般のユーザーレベルで扱うのはなかなか困難だ。今回は“基礎の基礎”として特集を展開させていただいている。なので敢えて、通常のカーナビに搭載されている、“左右2chタイプ”の『タイムアライメント』の操作方法を伝授したいと思う。
「“左右2chタイプ”の『タイムアライメント』を扱っておくと、のちのちマルチタイプのそれを触ろうとした時、役に立つと思います。お使いのカーナビに『タイムアライメント』が搭載されているならば、ぜひ、触ってみていただきたいですね。
操作のコツは、“低域重視で扱う”ことです。ツイーターとミッドウーファーの装着位置が違っていますので、ツイーターで合わせれば低域が狂い、ミッドで合わせれば高域が狂ってしまいます。これは避けようがないことなのである程度割り切りが必要なんですよ。
なので、どちらかを優先せざるを得ない。どちらを取るかとなったら、低域を優先させることをおすすめします。そのほうが全体のバランスが整いやすいんですよ。低域をセンターで定位させて、高域がちょっと右寄りに聴こえる、このくらいがもっとも“ステレオイメージ”が自然に近く、聴きやすい状態だと思います。
ここからさらに良くする方法もあるんですよ。もし、スピーカーを市販のものに換えているのなら、パッシブを良く見てください。パッシブにツイーターのレベル調整機能が付いていたらしめたものです。
もしそれが付いていたら、右のツイーターだけレベルをちょっと下げてみましょう。そうすると高域の定位も多少センターに動いたように聴こえてきます。“低域を定位させて、パッシブのレベル調整機能で微調整”、これが1つのセオリーですね。
ツイーターのレベル調整ができない場合は、低域をシビアに追い込みすぎないほうがいいと思います。低域の定位をシビアに追求し過ぎると、高域が崩れてしまいがちです。これは避けたいですね。あまりに高域が崩れてくるのならば、低域の定位を多少甘めにして、バランスを取ることを優先させてください。“低域を重視ししつつもバランスを考える”。これがこの場合の“コツ”ですね」
“左右2chタイプ”の『タイムアライメント』も、このように使うことで、ある程度の効果を発揮してくれる。決してバカにはできない機能なのだ。
「『タイムアライメント』が出現する前は、クロスオーバーやイコライザーを駆使して、さらにはツイーターをキックパネルに装着するなどもして、定位を出すために相当に苦労しました。それを思えば、“左右2chタイプ”であっても夢のような機能だと思いますよ。まずはこれを使いこなして、カーオーディオの可能性を感じていただきたいですね」
さて次週は『イコライザー』についての“基礎の基礎”を解説していく。バンド数が少ないタイプでも、使ってみると奥が深い。お読み逃しなきように。