【VW ティグアン 新型試乗】輸入車が“高嶺の花”になりつつある現実を見た…中村孝仁 | Push on! Mycar-life

【VW ティグアン 新型試乗】輸入車が“高嶺の花”になりつつある現実を見た…中村孝仁

昨年デビューしたVW『ティグアン』に、2リットルターボディーゼルを搭載するTDIが加わった。

自動車 試乗記
VW ティグアン TDI
  • VW ティグアン TDI
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VWで500万円?

昨年デビューしたVW『ティグアン』に、2リットルターボディーゼルを搭載するTDIが加わった。

実はガソリン車を試乗した時に、次のようなコメントを書いた。「威風堂々とした分、お値段の方もしっかり上がった。そして現状で解せないのは今のところFWDの設定しかないこと。もっともFWDでも従来の2リットル4モーションのお値段よりお高くなっているのだから、4モーションが登場すると、500万円越えは必至とみられる。」と。

そして今回のディーゼル仕様は何と4モーションのみの設定である。そしてそのお値段。ガソリン仕様で試乗したRラインを例にとると、やはりというべきか当然というべきか、予想通り500万円を超えて524万円の正札を付けた。

自動車といえども、所詮は日用品や食品などと同じ商品である。まあそこまで行くと極論と言われる方もいるかもしれないが、費用対効果というか、コストパフォーマンスは重要な要素の一つ。同時に前述した日用品や食品と大きく異なるのは、ブランドという付加価値が付く点である。そうした意味ではファッションアイテムに似ている。デフレの世の中では、ファーストファッションが大いに人気を集めた。今はどうだろう。相変わらずデフレから脱却はしておらず、庶民の懐は依然として寂しいままである。そんな中、自動車の値段だけはどんどん上がって、正直かなり手が届きにくいところまで来ているというのが、偽りのない個人的印象である。VWで500万円?これが偽らざる実感だ。

積極的なディーゼル投入を後押ししたい

と、個人的なボヤキはこれくらいにして、新しいTDI 4モーションのティグアンである。パワーユニットはEA288のコードネームを持つ、尿素SCRシステムを搭載したエンジン。日本で発売されているVWのディーゼルはすべてこれで、先陣を切った『パサート』と同じだが、チューンは異なる。まあガソリン仕様に合わせ込んだわけではないだろうが、ピークパワーはTSIと同じ150ps。しかし、トルクの方はTSIの250Nmに対して、TDIは340Nmだから、どっちが乗り易いかは自明。

車重で比較すると、TSIハイラインが1540kgに対してTDIハイラインは1730kgと、190kgの重量差があるが、これは前車がFWDであるのに対して、後者が4モーションの4WDであることが大きな差となっている。それに、エンジン重量だって当然ディーゼルが重い。さらに言うと、ガソリン仕様は6速の湿式DSGが組み合わされるのに対し、ディーゼルは7速の湿式DSGとなるから、これも重量増の一因だ。そしてその多くがフロントアクスルにかかってくるから、軽快さという点では少しスポイルされるかと思いきや、同時に試乗したわけではないから断定的には言えないが、決して運動性能的にもスポイルされた印象はなかった。むしろ重くなって、足などの最適化を行った結果、元々良かった乗り心地はさらに向上して重厚感が増したともいえる。

EA288ユニットは、150psとされても何ら痛痒を感じないレベルのパフォーマンスを示すし、何故かパサートで感じたよりも静粛性が高く感じられる。他のメーカーがディーゼル市場からの撤退を宣言する中で、遅れて参入したVWは、今後さらにディーゼル搭載モデルを増やすというから、この点は大いに後押しをしたい。

試乗車にはオプションのDCCが装備されていて、DCC装着車のみ選択可能なコンフォートモードが選べる。これをチョイスすると、もう明確に乗り心地優先で実に安楽なドライブが出来る。内外装の仕上がりぶりも、今やVWというブランドが、従来の輸入車エントリーユーザーを意識したブランドではなくなっているかのような錯覚を受けるが、それでもちゃんとVWは、国産車と比較できるような位置関係にあるとVWジャパンの広報は説明してくれた。

しかしそうはいっても、エントリーグレードですら400万の大台を突破してしまっているお値段は、やはり庶民の味方とは言い難い。同じディーゼルエンジンを搭載した国産メーカーのSUVなら最上級モデルが買える値段なのだから、やはり輸入車が高嶺の花になりつつある現実を見た気がした。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

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