【THE INSIDE】高校野球の上位校における “二極分化”のさらなる進行 | Push on! Mycar-life

【THE INSIDE】高校野球の上位校における “二極分化”のさらなる進行

近年の高校野球を見ていて特に感じることがある。高校野球の上位校は、ますます“二極分化”が進んでいるということだ。その顕著な傾向は、今年も如実に表れたのではないかと感じている。

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好投手対決の『木更津総合・作新学院』
  • 好投手対決の『木更津総合・作新学院』
  • いざ試合へ、高松商
  • ぎっしり入った高松商スタンド
  • スタンドの応援は力になる
  • スタンド全体が応援
  • ピンチに集まる八戸学院光星
  • 甲子園球場
  • 作新学院・小林虎太郎君

近年の高校野球を見ていて特に感じることがある。高校野球の上位校は、ますます“二極分化”が進んでいるということだ。その顕著な傾向は、今年も如実に表れたのではないかと感じている。

今夏の甲子園で見事に栄冠を手にした作新学院(栃木)は、実に54年ぶりの優勝を成し遂げた。決勝の相手・北海(南北海道)は、創部116年目にして初めて夏の決勝に進出した。

また、春のセンバツに10回目の出場を果たした智弁学園(奈良)は、春夏通じて27回目の出場にして初優勝を飾ったが、意外なことに決勝進出自体が初めてだった。決勝では第1回選抜中等学校野球大会の優勝校でもある高松商(香川)との対戦となったが、同校はセンバツへの出場そのものが20年ぶりだった。

これらの現象だけを取り上げれば、脈々と歴史を築いてきた伝統校がしっかりと復活を遂げている印象だ。仮の話になるが、高松商がセンバツで優勝を果たしていれば56年ぶりということになり、夏に54年ぶりの優勝を果たした作新学院とともに、半世紀以上のブランクを超えた優勝校が同じ年に誕生していたことになる。

いずれにせよ、こうした歴史のある強豪が“しっかりと伝統を維持している”ということが顕著に表れた年だった。伝統校が新しい時代の流れをくんだ形となり、「不易流行(※)」という言葉も当てはまるのかなという思いでもあった。

※:変化をしない本質的なものの中にも、新しさを取り入れて変化していくという考え。

一方、ベスト4やベスト8に進出した顔ぶれを見てみると、甲子園ではお馴染みの高校をはじめ、今年に特化した存在も顕著に見られた。センバツのベスト4を振り返ると、決勝に進出した智弁学園と高松商のほかに、龍谷大平安(京都)と秀岳館(熊本)。ベスト8に目を向けると、滋賀学園(滋賀)と明石商(兵庫)の初出場組に、木更津総合(千葉)と海星(長崎)が顔をそろえた。

夏のベスト4を振り返ると、決勝に進出した作新学院と北海のほか、センバツに続いて出場の秀岳館、明徳義塾(高知)というお馴染みの顔ぶれ。ベスト8はセンバツにも出場した木更津総合、常総学院(茨城)のほか、聖光学院(福島)、そして唯一の公立校でありながら、5年連続の出場を果たした鳴門(徳島)。ちなみに、優勝した作新学院は6年連続の甲子園出場であり、秋季高校野球地区大会の関東地区大会でも優勝。来春のセンバツ出場もほぼ確実だ。

春夏連続ベスト4の秀岳館は、鍛冶舎巧監督が就任した際、それまで指導していた中学硬式野球の強豪・オール枚方ボーイズ(大阪)のメンバーを中心とし、自身が積極的に集めた選手たちが軸になっていた。意識としては、「甲子園に出場すること」が目標ではなく、鍛冶舎監督が就任時に『3年後、一緒に甲子園で日本一を目指そう』と呼びかけていたことからも分かるように、「甲子園で勝つこと」を目指していた。

それだけ高い意識と技術に裏づけされていたということもあるのだが、彼らは中学時代に、同世代の中ではすでに抜けた存在でもあったのだ。だから、「日本一」を目指すことに何の違和感もてらいも気負いもなく挑めたのである。その結果として、あと一歩及ばなかったものの春夏連続ベスト4という偉業を成し遂げた。

初夏連続出場の木更津総合も、千葉県内では圧倒的な強さと安定感を示していた。エースの早川隆久君を軸とし、総合力に優れたチームだった。

夏の大会に7年連続出場を果たした明徳義塾は、秋の四国大会を制しており、来春のセンバツ出場はほぼ確実だ。11月に開催された明治神宮大会では、ベスト4を前に敗退したが、馬淵史郎監督は「前のチームでもあそこまで(夏の大会ベスト4)行けたんやから、それを見てきたこの子らは自信もあるやろ。春までにはもっと伸びとるから期待してください」と発言。優勝宣言ともとれるくらいの言いまわしだったが、それぐらい確かな手ごたえを感じていたのだろう。

聖光学院は、夏の大会に10年連続の出場という快挙。そのうえ、この秋も東北地区大会でベスト4まで進出している。出場枠の関係で春のセンバツは厳しいであろうが、新たなチームもチーム力としては確実に全国レベルだ。

ちなみに、その他の夏の上位校の今秋の成績に目を向けると、北海は北海道大会以前の札幌支部のブロック予選初戦で東海大札幌(旧東海大四)と当ってしまい敗退したが、秀岳館は熊本県大会を制し、九州地区大会でもベスト4入り。来春のセンバツ代表校に選出される可能性は非常に高い。

常総学院は珍しく、茨城県大会初戦で常盤大高に敗れた。また、木更津総合も千葉県大会2回戦で千葉英和に屈し、ともに3年連続のセンバツ出場は絶望的となっている。

とはいえ、上位校が定着してきているという傾向は顕著だ。明治神宮大会を制した履正社(大阪)は夏の代表校でもあり、前のチームから2人のドラフト指名選手が誕生しているほど個々のレベルも高かった。そして、チーム作りのスタートが遅れたはずの新チームだったが、岡田龍生監督が「チームの始まりが遅れた分だけ、まだまだ伸びる余地もあったし、試合をしながら、それぞれ選手が成長していってくれた」と言うように、ポテンシャルの高さを証明した。

今の時代の高校野球で確実に言えることは、中学時代の実績の上に、さらなる実績を積み重ねできているところに戦力が集中しているということ。だから、上位進出校が限られてきているという現実も否めないのではないだろうか。

《手束仁》
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