【THE REAL】ガンバ大阪の至宝、20歳の井手口陽介が秘めた可能性…究極のデュエルを演じるボランチ | Push on! Mycar-life

【THE REAL】ガンバ大阪の至宝、20歳の井手口陽介が秘めた可能性…究極のデュエルを演じるボランチ

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井手口陽介 参考画像(2016年3月2日)
  • 井手口陽介 参考画像(2016年3月2日)
  • 井手口陽介 参考画像(2016年5月3日)
  • 井手口陽介 参考画像(2016年5月27日)
  • 井手口陽介 参考画像(2016年5月25日)
  • 井手口陽介 参考画像(2016年5月11日)
3つのJクラブで、700を軽く超える公式戦に出場。日本代表としても歴代最多の152キャップを獲得している36歳の大ベテラン、遠藤保仁をしてこう言わしめるホープが、ガンバ大阪で輝きを増している。

「ゆくゆくは日本を代表するような選手になる能力の持ち主ですから」

高校2年生だった2014年3月に、ガンバ大阪ユースからトップチームに昇格して3シーズン目。今夏のリオデジャネイロ五輪の舞台に立ち、9月17日の名古屋グランパス戦では不惑を迎えた守護神、楢崎正剛からプロ初ゴールも奪った20歳のMF井手口陽介が、初めてとなる“勲章”を手にした。

井手口陽介 (c) Getty Images
ガンバが3シーズン連続の決勝進出を決めているYBCルヴァンカップ。旧名称であるヤマザキナビスコカップとして親しまれた1990年代から、著しい活躍を演じた若手に「ニューヒーロー賞」を授与してきた歴史に、今シーズンの受賞者として井手口の名前が刻まれたのは今月12日だった。

歴代の受賞者を振り返れば、MF長谷部誠、FW原口元気(ともに当時浦和レッズ)、ガンバの先輩であるFW宇佐美貴史と、ハリルジャパンの常連メンバーがずらりと並んでいる。A代表への“登竜門”と呼んでもいいタイトルを手にした井手口は、チームを通して初々しいコメントを残している。

「まさか自分がニューヒーロー賞を獲得できるとは思っていなかったので、素直に嬉しいです。過去に受賞した偉大な先輩方のなかに自分の名前が入るという実感がまだわきませんが、これに満足せず、これからも成長した姿を見せていきたい」

■口数の少ない影のヒーロー

171cm、69kgの井手口がひときわ大きな存在感を放ったのは、横浜F・マリノスのホーム、日産スタジアムに乗り込んだ10月9日のYBCルヴァンカップ準決勝第2戦の後半18分だった。

さかのぼること4日前。ホームの市立吹田サッカースタジアムで行われた第1戦をスコアレスドローで終えていたガンバは、第2戦の後半11分にマリノスのFW伊藤翔に先制ゴールを許していた。

このままでは決勝への道を閉ざされてしまう――。危機感を募らせたガンバの選手たちが前へのプレッシャーを強めるなかで、ボランチで先発していた井手口も積極的に攻撃に絡みはじめる。

DF丹羽大輝から横パスを受けると、すかさずペナルティーエリア付近にいたDF米倉恒貴に縦パスを入れる。その直後に、井手口は猛然と前方へスプリントをかけている。

「あれはボールを落としてもらって、再び受けようかなと思って前へ行きました。そうしたらボールがこぼれてきたので、そこへ行ったという感じです」

思い描いたイメージは縦パスを米倉がはたいたところを、自らが加速をつけながら拾ってゴール前へさらに侵入していくプレーだったのだろう。しかし、マリノスのパク・ジョンス、金井貢史の両DFの激しいチャージの前に米倉がボールを失ってしまう。

井手口陽介 (c) Getty Images
気がつけば目の前にはボールを支配下に収め、前へと運ぼうとしている金井がいる。井手口は瞬時にモードを攻撃から守備へと切り替え、猛然と金井との間合いを詰めた。

激しい体のぶつけ合いの末に、金井がその場に転がされる。日本代表を率いるバヒド・ハリルホジッチ監督が呪文のように求めるデュエル、日本語で「決闘」を意味するフランス語が発動された瞬間、ガンバのピンチは未然に防がれ、一気にチャンスへと転じる。

こぼれ球を米倉がヒールでゴール前へ流し、あうんの呼吸でMF藤本淳吾が飛び出す。利き足とは逆の右足で藤本が折り返すと、ノーマークの遠藤が冷静沈着に右足を合わせてゴールネットを揺らした。

スコアは同点だが、アウェーでゴールを奪っている分だけガンバが優位に立つ。つまり、引き分けでも決勝に進める。その後のマリノスの反撃を封じ、1‐1のまま試合を終えてから数十分後。取材エリアに姿を現した“影のヒーロー”は、自他ともに認めるシャイな性格からか、極端に口数が少なかった。

「あの場面はただ単に(攻守の)切り替えをしただけであって、それがうまいことそのまま得点につながったので、結果としてはよかったと思います」

いまにも消え入りそうなか細い声に、威風堂々としたプレーとのギャップを感じずにはいられない。金井とのデュエルを制した後も前進をやめず、ゴールを決めた遠藤のすぐ横にまで詰めていた背番号21は「ただ単にあそこにいただけで」と、謙遜することしきりだった。

井手口陽介 (c) Getty Images
すでに過去2シーズンの合計試合数の倍以上の19試合でJ1のピッチに立ち、ガンバが決勝トーナメントから登場したYBCルヴァンカップでも4試合すべてで先発。実戦のなかでさらに才能を研ぎ澄ませていく井手口の姿に、後方から見ている日本代表経験者の丹羽も思わず目を細める。

「まだまだ若いところもありますけど、(井手口)陽介自身、今シーズンは数多くの試合に出て、オリンピックの舞台も経験したことで、自信をつけている部分は間違いなくあると思う。もともとは負けず嫌いな性格で、それをなかなか出せなかったのが、いまはピッチの上で少しずつ表現できるようになっている。

球際の攻防にしても、周囲の人たちが見ていても『オイ、井手口って強いな』と思わせるくらいに激しくファイトしていますからね。もちろんいま現在のレベルに満足することなく、もっともっとビッグなプレーヤーになっていってもらいたいな、と思っていますけどね」

同点に追いつく直前のこと。タッチライン際には最初の交代選手として、MF大森晃太郎がスタンバイしていた。ベンチへ下がる選手は実は井手口だったと、ガンバを率いる長谷川健太監督は試合後の公式会見で明らかにしている。

「陽介はしっかりやってくれていたけど、攻撃のつなぎの部分では今野(泰幸)のほうが若干体も動いていたし、フレッシュな状態で戦っていたので。点を取りにいかなきゃいけない状況になって、守備を得意とするボランチをふたり置くよりは、ひとりを攻撃的な選手と代えようと」

大森を2列目に投入し、トップ下で先発していた遠藤を井手口に代えてボランチに下げるプランは、同点ゴールとともに封印された。井手口は闘争心あふれるデュエルで同点弾を導いたばかりか、指揮官の采配を変更させ、最終的にはフル出場を勝ち取ってもいた。

「もともと能力の高い選手ですし、しっかりと経験を積みながら順調に成長していると思いますけど。本人はウイークポイントもわかっていると思うので、そこを改善すればさらに戦える選手になると思います」

■3度目の頂点を目指して

試合後に遠藤が言及した井手口の短所とは、おそらく攻撃面で前線の選手とより積極的に絡んでいくプレーを指すのだろう。オリンピック代表を勝ち取り、ハリルホジッチ監督も高い関心を寄せる球際の強さとボール奪取術、無尽蔵のスタミナに導かれたハードワークに攻撃力が加われば、まさに遠藤の言う「日本を代表する選手」への第一歩を踏み出すことになる。

もっとも、井手口自身もマリノス戦でのプレーに納得がいかなかったのか。一時は大森との交代が決まっていたことには「わからなかったです」と苦笑いしながら、修正すべき点を掲げることを忘れなかった。

「ヤットさん(遠藤)がボランチに位置に下がってきたときは、前の選手がいなくなる分、僕が上がらなきゃいけないと意識していたんですけど、そこはあまりできなかったので」

井手口陽介 (c) Getty Images
2シーズンぶり3度目の頂点をかけて戦う、YBCルヴァンカップ決勝の相手は浦和レッズに決まった。10月1日のセカンドステージ第14節で、舞台も決勝と同じ埼玉スタジアムで対戦。屈辱的な0‐4の大敗とともに、セカンドステージ優勝とチャンピオンシップ出場の可能性をほぼ断たれた苦い記憶が残る。

「直近で負けているので、決勝で借りを返せたら、それが一番いいかと」

最後まで口数が少なかった後輩の胸中に渦巻く思いを代弁し、その背中を力強く押すかのように、丹羽が熱いエールを送った。

「自信をもってやれとか、どれだけアドバイスを送っても、やはり言葉では限界がある。その意味で一番成長できるのは、こういう大きな大会でしっかりとプレーして、タイトル獲得に絡むこと。あの若さで優勝というものを経験することで、もっともっとプレーを通して自信を発揮できるようになる。陽介自身もかけているものがあるはずなので」

キックオフは10月15日午後1時5分。両手首に巻いた白い汗止めをトレードマークする井手口がボールに絡み続け、「赤い悪魔」が仕掛ける猛攻撃を停滞させる時間帯が長く続くほどに、現状では決して芳しくない下馬評をガンバが覆す確率も上がってくるはずだ。
《藤江直人》

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