【THE SPIKE】侍ジャパン、外野手選考における4つの視点…WBCへ向けて | Push on! Mycar-life

【THE SPIKE】侍ジャパン、外野手選考における4つの視点…WBCへ向けて

プロ野球のレギュラーシーズンも佳境を迎えている。セ・リーグは広島が25年ぶりのリーグ優勝を果たし、パ・リーグではソフトバンクと日本ハムが熾烈な優勝争いを繰り広げ、今季における選手個々の成績も概ね見えてきた。

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筒香嘉智 参考画像(2015年11月19日)
  • 筒香嘉智 参考画像(2015年11月19日)
  • 筒香嘉智 参考画像(2015年11月21日)
  • 柳田悠岐 参考画像
  • 柳田悠岐 参考画像
  • 秋山翔吾 参考画像
  • 秋山翔吾 参考画像
  • 平田良介 参考画像(2015年11月19日)
  • 丸佳浩 参考画像(2014年11月16日)

プロ野球のレギュラーシーズンも佳境を迎えている。セ・リーグは広島が25年ぶりのリーグ優勝を果たし、パ・リーグではソフトバンクと日本ハムが熾烈な優勝争いを繰り広げ、今季における選手個々の成績も概ね見えてきた。

そのような状況下で注目すべき点のひとつが、来春に迫っている第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の選手選考だ。第3回WBCでは決勝ラウンドの準決勝でプエルトリコに敗北を喫し、三連覇の夢を絶たれた。昨秋に行われた第1回世界野球世界野球WBSCプレミア12では、準決勝で韓国に破れ、初代王者の座を逃した。第4回WBCでの王者奪回は至上命題となっている。

今回は各部門の選手選考の中でも、外野手の選考について4つの視点から考察してみる。

■軸となるのは、プレミア12のメンバーか

以前、侍ジャパンの小久保裕紀監督は、第4回WBCに向けたチーム作りについて「プレミア12のメンバーを軸とした構成になる」と述べていた。11月にメキシコ代表やオランダ代表との強化試合が組まれてはいるものの、侍ジャパンとして本番までに強化を図る時間は限られており、そうした意味合いからも妥当な考え方ではある。

ここで、プレミア12に選出された外野手を振り返ってみよう。数字は今季の成績(9月17日時点、以下同様)。

筒香嘉智(DeNA)打率.321/本塁打40/打点101/盗塁0
平田良介(中日)打率.248/本塁打14/打点73/盗塁4
中村晃(ソフトバンク)打率.281/本塁打6/打点45/盗塁6
秋山翔吾(西武)打率.299/本塁打11/打点61/盗塁17

第1回WBCでは外野手は6人、第2回も6人、第3回では5人が登録されており、4人というのは少なく映るが、この時は内野手の枠で登録されていた中田翔(日本ハム)が臨時の外野手として考えられていた。

この4選手の中で特筆すべきは、今季さらなる進化を見せつけている筒香だ。ハイアベレージを残しながら、自身初の40本塁打と100打点に到達。DeNA初のクライマックスシリーズ進出に向けて、チームを力強く牽引している。本塁打と打点は山田哲人(ヤクルト)と僅差ながらもリーグトップの数字で二冠を狙える位置にいる。侍ジャパンにおいても、4番候補の筆頭として誰も異論はないはずだ。

筒香嘉智 (c) Getty Images
一方、秋山は年間最多安打のプロ野球記録を更新した昨季ほどのインパクトは残せていないながらも、不調なチーム状況の中でそれなりの数字を残している。平田は現在、古傷の右肩を痛めて戦線を離脱中だが、プレミア12で見せた勝負強い打撃と安定した守備力は小久保監督も評価していた。過去に外野手では「右打者の一番手」とも。

中村は、侍ジャパンの外野手のレギュラーとして定着していた柳田悠岐(ソフトバンク)がケガによりプレミア12を辞退したことを受けて招集された経緯があるが、持ち前のシュアな打撃で指揮官の期待に応えた。今季も優勝争いを続けるソフトバンクの不動のレギュラーとして、しぶとい打撃は健在だ。

■外野手争いは熾烈を極める

プレミア12のメンバーが軸となると言っても、あくまで軸という話。短期決戦において、直近の成績やコンディションが考慮されるべきであることは言うまでもない。そこで予想されるのが、外野手争いの競争激化だ。今季、個人タイトルを争うなど印象的な活躍を見せており、外野手争いに割って入っていきそうな選手を何人か挙げてみる。

鈴木誠也(広島)打率.338/本塁打27/打点93/盗塁16
丸佳浩(広島)打率.294/本塁打20/打点90/盗塁23
柳田悠岐(ソフトバンク)打率.306/本塁打18/打点73/盗塁23
角中勝也(ロッテ)打率.346/本塁打8/打点66/盗塁12
糸井嘉男(オリックス) 打率.316/本塁打16/打点68/盗塁52

まずは何と言っても、鈴木の存在が大きい。広島のリーグ優勝立役者のひとりであり、打撃の各部門でハイレベルな数字を残している上、出塁率が.406だ。セ・リーグで出塁率が4割を超えている選手は4人いるが、外野手では筒香.432と鈴木のふたりだけ。

また、広い守備範囲とバズーカ砲とも形容される強肩は相手の脅威になる。さらには、筒香、柳田、秋山、中村ら外野手に左打者が多い中、右打者であることも大きな魅力。今季開幕前、小久保監督は鈴木のポテンシャルに期待を寄せていたが、ここまでの飛躍を見せたことは、侍ジャパンの外野手争いを激しくする最大の要因となりそうだ。「神ってる男」とも言われる天性の勝負強さも魅力だ。

丸佳浩 (c) Getty Images
丸は昨季の不振から復調し、鈴木同様に広島の優勝に大きく貢献した。走攻守三拍子がそろい、小久保監督下での侍ジャパン選出経験もあり、有力候補であることは間違いない。柳田は昨季の数字と比べると見劣りはするものの、今季も好成績を維持している。9月1日の試合で、右手薬指を骨折し離脱している影響がどう出るかが気になるところだ。

また、35歳のベテランにして、今季盗塁王争いのトップを走っている超人・糸井や、開幕当初からハイアベレージを維持し、二度目の首位打者獲得も視野にとらえる角中にも注目だ。特にこの2選手は第3回WBCに選出されており、国際舞台での経験を積んでいることも魅力だ。

【次ページ スモールベースボールの再現】

■スモールベースボールの再現

第1回、第2回とWBCを連覇した日本。その原動力となったのは、第1回大会の指揮官・王貞治氏が標榜していた「スモールベースボール」だった。

端的に言えば、ホームランに依存せず、バントや盗塁、ヒットエンドラン、犠飛などを重視し、着実に得点を重ねていく、そつのない野球。ここぞという場面でのセーフティーバントを幾度となく決めたイチロー(当時マリナーズ)を筆頭に、青木宣親(当時ヤクルト)、西岡剛(当時ロッテ)、川崎宗則(当時ソフトバンク)らが体現していた。

しかしながら、プレミア12ではスモールベースボールは影をひそめた。特に予選ラウンドでは連日、中田が神がかった活躍を見せ、劇的な勝利が続いていたことの影響もあってか、話題はどうしてもそちらへ行き、スモールベースボールという観点での議論はあまりなされていなかったように思われる。

「勝てばいい」。確かに勝敗がすべてとも言えるが、世界と戦う上での日本野球の強み、スモールベースボールを再び前面に押し出していくことが、王者奪回のための大きなポイントとなるのではないか。

例えば、プレミア12では全8試合を戦ったが、全試合1番で起用された秋山、2015年にトリプルスリーを達成し、セ・リーグの盗塁王にもなった山田の両選手はそれぞれ1盗塁(チーム全体の盗塁数は5)と寂しい数字だった。

また、チーム全体の犠打数は5だった。ちなみに第1回WBCでは同じ8試合を戦っており、チーム全体の盗塁数は13。特にイチローは4つ、西岡剛は5つの盗塁を決めている。チーム全体の犠打数は9。

第2回WBCは9試合と試合数が多いが、チーム全体の盗塁数は11、チーム全体の犠打数は7。この時、攻撃的2番として7試合に先発し、打率.364とチーム一番の打率を残した中島宏之(当時西武)は3つの犠打を決めている。

小久保裕紀監督 (c) Getty Images
なお、プレミア12で8試合に先発し、同様に攻撃的2番として全試合で先発した坂本勇人(巨人)の犠打数は1。単純に比較できるものではないが、スモールベースボールを体現しているか否かが少なからず結果に関わっているはずだ。

そうした観点で考えると、西川遥輝(日本ハム)の存在も面白い。今季はそのポテンシャルを開花させ、打率.315のハイアベレージを維持して打率部門2位。盗塁数35、犠打数19、さらには、規定打席に達している打者の中で唯一併殺打が0。出塁率も.409と高い。スモールベースボールを体現する上で、数字だけを見れば他のどの外野手よりも魅力的といえる。

いずれにせよ、侍ジャパンの原点でもあるスモールベースボールの再度の徹底を期待したいし、スモールベースボールを体現するに相応しい選手の選考にも配慮すべきと考える。

■今季の「勢い」を注入

選手としてのこれまでの実績、国際大会の経験、プレミア12の経験の有無などは、選手選考において当然重要な指標であることには間違いない。しかし、柳田や平田のようにケガの影響が懸念される選手もいるし、調子を崩している選手もいる。コンディションの好不調はもちろん、今季の「勢い」を買うという考え方もある。

第1回WBCではロッテの選手が最多の8名選出されているが、その前年にロッテは日本一に輝いた。主力だった西岡や今江敏晃らは若く、それまで実績があったわけではないが、その年にブレイクし、日本一に大きく貢献。日本シリーズで史上初の3試合連続二桁得点を記録し、阪神に4連勝した勢いは圧巻だった。

西岡、今江をはじめ、里崎智也、渡辺俊介、藤田宗一、薮田安彦らのロッテ勢はWBCでもシーズン中の勢いそのままに躍動した。まだクライマックスシリーズも日本シリーズも残しているが、今季の「勢い」という面で考えると、現段階では広島になるか。

小久保監督率いる侍ジャパンは、第4回WBCでの王者奪回を最大の目標として、2013年にスタートした。その集大成の瞬間が刻一刻と近づくが、小久保監督はどのような陣容で決戦に臨むのか注目していきたい。

《浜田哲男》
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