【THE REAL】世代交代の旗手・大島僚太が抱く決意…ほろ苦い結果に終わったハリルジャパンの初陣を乗り越えて | Push on! Mycar-life

【THE REAL】世代交代の旗手・大島僚太が抱く決意…ほろ苦い結果に終わったハリルジャパンの初陣を乗り越えて

悲壮感を漂わせているわけでも、ましてや黒星を喫した責任の重さに打ちひしがれているわけでもない。所属する川崎フロンターレの試合後と同じように、大島僚太は端正なマスクにかすかな笑みをたたえながら取材エリアに姿を現した。

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大島僚太 参考画像(2016年5月27日)
  • 大島僚太 参考画像(2016年5月27日)
  • 大島僚太 参考画像(2016年9月1日)
  • 大島僚太 参考画像(2016年6月25日)
  • 大島僚太 参考画像(2016年9月1日)
  • 大島僚太 参考画像(2016年9月1日)
  • 大島僚太 参考画像(2016年5月27日)
悲壮感を漂わせているわけでも、ましてや黒星を喫した責任の重さに打ちひしがれているわけでもない。所属する川崎フロンターレの試合後と同じように、大島僚太は端正なマスクにかすかな笑みをたたえながら取材エリアに姿を現した。

「負けたので悔しいです。自分の持ち味を出せなかったとも思いますし、このチームに必要とされているのは守備の部分だと思うので、そこで球際で負けて失点につながることもあった。まだまだだと思いました」

■国際Aマッチのデビュー戦

9月1日。埼玉スタジアムを埋めた満員のファンやサポーターの前で、UAE(アラブ首長国連邦)代表に逆転負けを喫したワールドカップ(W杯)アジア最終予選の開幕戦。23歳の大島はボランチとして抜擢され、A代表として初めてピッチに立った。

ただでさえ緊張感で足が震えがちな国際Aマッチのデビュー戦。大島の場合は、記念すべき初陣がワールドカップ出場をかけたアジア最終予選の初戦となった史上初めての選手となった。
UAE戦で史上6人目となる通算100試合出場を達成した、チーム最年長の32歳にして、不動のキャプテンを務めるボランチの長谷部誠(アイントラハト・フランクフルト)の相棒は果たして誰になるのか。

有力視された柏木陽介(浦和レッズ)が、8月28日から埼玉県内で始まった直前合宿中に左股関節痛で別メニューを強いられる。非公開で行われた戦術練習で長谷部と組む時間が増していくなかで、大島は自分なりの覚悟を固めていった。

「練習で何となく(先発だと)思いました。(責任が)重いことなんだろうとは思いましたけど、そこまで何かをする経験があるわけではないので、僕は僕らしくまっとうすることを心掛けて臨みました。みんながすごくポジティブな声をかけてくれたので、そこまで緊張はしなかったと思います」

大島らしいプレーとは何なのか。試合のなかで一緒にプレーした選手が、ともにリオデジャネイロ五輪を戦ったFW浅野拓磨(シュツットガルト)とMF遠藤航(浦和レッズ)、チームメートのFW小林悠に限られるなかで、大島は必死にイメージを膨らませていった。

「ボールの動かし方というのは代表のスタイルがあると思うので、そこで僕が入って川崎の(動かし方を出す)というよりは、代表スタイルの動かし方というところでクオリティーといったものを、僕ができる限り出していければ。(五輪でも)オーバーエイジの3人がぎりぎりで入ってきたなかでも何とかできたので、そんなに深く考えずにやれればと思います」

トータルで見れば、及第点のプレーを演じたといっていい。UAEの守護神ハリド・エイサの美技に阻まれたものの、後半4分にはペナルティーエリアの外側から強烈なミドルシュートも放っている。
しかし、失点に絡むプレーをふたつも演じ、結果としてハリルジャパンの黒星に結びついてしまえば――。残念ながらそれらの残像のほうが、見ている側の記憶に色濃く刻まれてしまう。

MF本田圭佑(ACミラン)のヘディング弾で先制してから9分後の前半20分。中央のやや右寄りの位置から、右サイドバックの酒井宏樹(オリンピック・マルセイユ)へ出した横パスはあまりに弱かった。

UAEのツートップの一角、キャプテンのアハメド・ハリルがインターセプトしようと、猛然と酒井との間合いを詰めてくる。ボールを奪われてなるものかと、酒井も半ば強引にボールを中央へ蹴り返す。

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ハリルの足にも当たっていたボールは、日本が最も警戒していた左利きの司令塔、背番号「10」のオマル・アブドゥルラフマンへわたり、次の瞬間、電光石火のカウンターが発動される。

縦パスを受けたもうひとりのフォワード、アリ・マブフートがDF森重真人(FC東京)を振り切って日本ゴールへ迫る。カバーに入ったDF吉田麻也(サウサンプトン)の前でバランスを崩して倒れたように見えたが、UAEの隣国カタールの主審は吉田のファウルを取る。

ゴールまでの距離は約20m。ハリルの右足から放たれた強烈な弾道は壁の右上を超えて、守護神・西川周作(浦和レッズ)の両手を弾いてゴールへと吸い込まれていった。

後半9分にはペナルティーエリア内で、MFイスマイール・アルハマディを大島、酒井、MF香川真司(ボルシア・ドルトムント)の3人で囲みながら、必死に粘る相手に縦へ抜け出されてしまう。

とっさに大島が伸ばした右足に引っかかる形で、アルハマディが倒れ込む。故意にダイブしたようにも見えたが、レフェリーのジャッジは無情のPK。逆転を告げるハリルのチップキックが、左へ飛んだ西川をあざ笑うかのようにゆっくりとゴール中央へ吸い込まれていった。
後半30分にMF原口元気(ヘルタ・ベルリン)との交代でベンチに退いた大島は、失点に絡んだふたつのシーンを淡々とした口調で振り返っている。

「横パスをかっさわれそうになって、FKになって失点しましたし、PKの場面は(最後は)僕とシンジ君(香川)のふたりで行ったので、そこは何とか止めなければいけなかった。(PKという)結果が出てしまっているのでしょうがないと思いますし、その前の段階でしっかりと弾き出さなければいけなかったという思いの方が強いです」

■手倉森ジャパンからハリルジャパンへ

ハリルジャパンに招集されるのは、6月のキリンカップに続いて二度目。しかしながら、6大会連続のW杯出場をかけた公式戦でもある今回は、濃密な経験を168cm、64kgの体に刻み込んだ。

卓越したパスセンスと得点感覚で、手倉森ジャパンが3試合であげた7ゴールのうち5つに絡んだリオデジャネイロ五輪の戦いを終えてから2週間あまり。帰国直後に発症したインフルエンザの名残となる咳がまだ出るなかで、バヒド・ハリルホジッチ監督から檄を飛ばされた。

「もっと声を出せ!」

どちらかといえば寡黙で、プレーで味方を引っ張るタイプ。指揮官に自分の意見をぶつけることこそなかったが、胸中にはこんな思いを募らせながら直前合宿を消化していった。

「声を出すというのもいろいろあると思いますし、僕は試合中とか、そういうときに出せれば。ムードメーカーというのはやれる人がやって、その人が練習に集中できるようにするのが一番いいと思う」

もっとも、態度や口調にこそ表さなかったものの、日本代表における初陣で味わわされた違和感にも近い思いを、先輩選手たちに率直に伝えることで解消させたい、という欲求も頭をもたげてきている。

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「僕が思うところもあるので、そういうところは話していかないといけない。(メディアの方から)パスがずれたというのを言われましたけど、動かずに待っていてもらえればというところもあるし、受け手としては背後を狙いたいというところもあると思うので、そういう部分の意識の擦り合わせというものは必要かなと思っています」

大島によれば、最終ラインの選手からパスを受ける位置ひとつを取っても、手探りの部分があったという。しかし、国の威信をかけた戦いの舞台で、曖昧な関係を残したままでは同じ轍を踏んでしまう。

ハリルジャパンにおける世代交代の旗手となり、2年後のW杯ロシア大会の舞台に立つ。目指す場所が鮮明に描かれているからこそ、どちらかと言えば不得手としてきた“自分を出す”という作業を率先して行いたいと思いに駆られているのだろう。

■川崎よりも速いテンポで

「今日のような試合でまだ少し恥ずかしさを見せる面はあったが、そのようなチョイスをしたのは私の責任だ。このようなタイプの試合をしたときは、とにかく監督を批判してほしい」

試合後の記者会見で、ハリルホジッチ監督は大島をかばようかのような言葉を並べた。最終ラインを束ねる吉田は「能力の高い選手であることはわかっている」と才能を認めたうえで、あえて大島に厳しい檄を飛ばしている。

「川崎でやっているようなゆっくりとしたテンポではなくて、もっと速いテンポでリズムを作れるようなパスを配給してほしい」
せめて6月のキリンカップで、A代表の独特の雰囲気やパス回しを含めたスタイルを経験していたら、また違ったプレーを埼玉スタジアムのピッチで演じたかもしれない。

ナイーブに映る大島がトラウマを抱えないようにと、指揮官を含めた周囲が見せている配慮の跡。しかしながら、大島自身が「UAEに負けた」という現実を逃げることなく、真正面から受け止めたうえで、自分の力で乗り越えようと努めて前を向いている。

「僕ができることを全力でやりたい。それは攻撃の部分においてアクセントをいろいろとつけたいと思っているし、課題の守備というところでも、特徴のある選手が大勢いるので、そういう人たちから盗むことで僕自身の成長につながるのかなと思って日々臨んでいる」

次戦は舞台を敵地バンコクに移し、タイ代表と6日に激突する。戦いは待ってくれない。胸中に募らせた悔しさと無念さを力に変えて、稀代のプレーメーカーの資質をその体に搭載した大島は新たなる道を突き進んでいく。
《藤江直人》

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