【中学受験】グノーブルに聞く「過去問」活用術<国語・算数>差をつける親のサポート | Push on! Mycar-life

【中学受験】グノーブルに聞く「過去問」活用術<国語・算数>差をつける親のサポート

 受験生にとっては天王山と呼ばれる夏。半年後には入試本番を迎える中学受験生の保護者にとって、そろそろ気になり始めるのは「過去問」のこと。過去問題対策について、「中学受験グノーブル」に話を聞いた。

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インタビューに答える中学受験グノーブル 国語科 山下倫央先生
  • インタビューに答える中学受験グノーブル 国語科 山下倫央先生
  • インタビューに答える中学受験グノーブル 算数科 盛田一樹先生

 受験生にとっては天王山と呼ばれる夏。半年後には入試本番を迎える中学受験生の保護者にとって、そろそろ気になり始めるのは「過去問」のこと。過去問題対策について、「中学受験グノーブル」に話を聞いた。

国語科 山下倫央先生

--国語の過去問にはいつから取組み始めればよいですか。

山下先生:国語の勉強は、活字が正しく読める→筆者の多様な考えや人生体験などに触れていく(内容の吟味)→志望校対策、となります。お子さんがどの段階なのかは、同じ6年生でも一概には言えません。6年生になっても活字が正しく読めない子は意外と多いです。これは低学年からの「音読」の積み重ねで磨き上げていくもので、「音読」は大変重要です。

 本文の内容がわからないのに設問が解けるということは発生しにくいので、成績が伸びない、順調とは言えないお子さんに対しては、志望校対策以前に正しく読めること、漢字、知識をしっかりやることが優先となります。したがって、過去問に取り組むにふさわしい時期はお子さんによってさまざまなので、最適なスケジュールについては塾の講師に相談してみてください。

 漢字、知識についても低学年からの積み重ねですが、6年生の夏からでも遅くはありません。毎日算数のドリルを行うように、国語の漢字と知識も入試前日まで継続して取り組んでください。

--どのように復習すればよいですか。

山下先生:一般論ですが、過去問に取り組む際には、実施時間の2倍の時間を確保したほうがよいです。まず制限時間で解いてから、丸つけ、書き直し、本文読み返し、要約などを行います。解きっ放しで終わりは避けましょう。

 記述の書き直しについては、他教科とのバランスを考える必要があります。優先順位が高い教科が他にあり、記述の書き直しに時間が取られないほうがよい場合もあれば、国語が課題で、何度も書き直して精度を上げたほうがよい場合もあります。他教科の仕上がりを見ながら、どの程度の負荷が適当か、塾の講師に相談されるとよいでしょう。

--過去問は何年分解けばよいですか。

山下先生:過去問は志望校への「下見」です。答えがとても見つかりそうもない抜き出し問題が連発するとか、その学校の形式を下見しておくことは本番に備えるうえで不可欠なことです。つまり、過去問にまったく触れないまま本番に臨むのは避けたほうがよいですが、だからといって何年分解いたかで大きな差は出ないと思います。先にも述べたように、過去問に取り組むに相応しい時期はお子さんによってさまざまなので、ご自分のお子さんが他の子より2か月遅れとなったとしても焦る必要はまったくありません。

--合格最低点はいつクリアできればよいでしょうか。

山下先生:極端な言い方をすると、合格最低点を超えるのは当日でよいと思います。子どもの学力というのは、なだらかに上がっていくのではなく、やってもやっても上がらないのだけれど、ようやく最後になって色々積み重ねてきたものが繋がって、グッと上がるということのほうが多いです。

 学校が配点を公表していない場合も多く、過去問題集に書かれている配点は出版社の予想配点に過ぎません。つまり、合格最低点自体に客観的な裏付けがないわけです。過去問はあくまでも「下見」です。過去問の出来に浮かれてもいけないし、落ち込む必要もないということです。

--子どもが解く際に気をつけることは何ですか。

山下先生:過去問を「合否占い」のように捉えてしまうと、子どもは過去問の点数を上げれば合格に近付くと考え、それを目的化してしまいがちです。答えを写すなど、子どもが恣意的(しいてき)に点数を水増しすることを防ぐ意味でも、「合否判定」として利用する雰囲気にしてしまわない、子どもが採点するときは傍らで見守る、あるいはお子さんと一緒に採点する、などの対策をお勧めします。

 よく相談を受けるのが「模試や授業の出来が振るわないけれど、過去問はとてもよくできているのですが…」というものです。実は、過去問の出来不出来よりは、模試の成績が急降下したとか、授業で集中して取り組めていないといった日常的なところで問題が生じている場合のほうが深刻です。答えを見ながら過去問を解いているというケースは毎年数多く見られます。特に国語は、子どもには到底書けないような模範解答があるため、露呈しやすいですね(笑)。

 これでは、国語の過去問を解くことが、無益どころか害悪になってしまいます。「困ったら解答を見る」というスイッチを押す作業を繰り返すと、肝心の入試本番で、難解な文章に立ち向かい、くじけずに読み切るということができなくなってしまうからです。

 国語の力は、普段の授業からの学習姿勢が問われます。「模範解答にはこのように書かれているけれど、これでもいいよね」といった、自分の頭の中で考えて書いてみるという作業の積み重ねが非常に大切なのです。これは4、5年生のころから始まっています。「模範解答っぽい」答えを書いておくと丸がもらえるような、知的作業を放棄した環境になっていないか、保護者の皆さんは日頃からお子さんのノートを見るなどして気を配っておくとよいでしょう。

 中学校の先生は、「この文章を理解できる生徒が欲しい」と思って入試問題を作問されているはずです。設問は本文が理解できているかを確認するためのものであり、小手先で正解にたどり着けるわけではありません。国語の学習では、この「本文理解>設問回答」という主従関係を覆さないことがもっとも大切です。

算数科 盛田一樹先生

--「過去問を解く」一番の目的は何ですか。

盛田先生:算数の過去問は、答えを覚えるまで何度も繰り返すことが重要なのではありません。過去問を解く最大の意義は、「入試本番で最適な『時間配分』を考える訓練」をすることです。入試本番で失敗しうる最大の要因は時間配分のミスです。あとから振り返ってみて「この問題を飛ばして次を解けば合格できたかもしれないのに、ここで慌ててミスをしたから失敗した」というのは本当に悔しい。それを極力避けるためにも、「初見」の問題に向き合ったとき、いかに時間配分を失敗せずに解くかということが重要になります。

 極論すると、過去問で合格点に達していなくても、自分がその学校を受ける際に時間配分を失敗せずに解くことができれば、自身の持つ実力を最大限発揮できると言えるでしょう。

--保護者は何をサポートすればよいのでしょうか。

盛田先生:毎回正確に時間を計り、子ども任せにしないで学習計画は一緒に立ててください。そして、保護者の方にやっていただきたいもっとも重要なサポートは「試験問題のコピーを取ること」です。

 書店で販売されている過去問題集には、時系列に各教科の問題が掲載されています。たとえばあるページで算数の問題のあとに理科の問題が続いているといった場合、算数の部分と理科の部分を切り離します。そして「平成28年度算数」という具合に、年度毎、科目毎に分けてファイルに入れておき、子どもが取り組むときにはその年度のその教科だけを渡すという形にするとよいです。解答解説についても同様です。同じページに複数教科の解答、解説が掲載されている場合は、教科別に切り離してください。

 面倒な作業だと思われがちですが、このひと手間をかけるかかけないかで大きな差が出ます。なぜなら、他教科の問題や解答が目に入ってしまうと、過去問を解く最大の意義が損なわれるからです。入試本番では見たことのない問題に向き合わなければなりません。何が出てくるかわからない初見の問題に、新鮮な気持ちで向き合えなければ、過去問を解く意味がなくなります。

 1冊まるごと、あるいはコピーを取ったとしても他教科の問題を切り離さずに渡してしまうと、お子さんは解く前に他教科の問題や解答、解説まで目にしてしまうことになります。

 先に申し上げた通り、過去問は初見の問題を最適な時間配分を考えながら解く訓練です。「あ、これ見たことある」ということがないように、先にお子さんの目に触れないよう気を配っていただきたいと思います。解答用紙は、途中式を書かせる学校については原寸大でコピーを取ったほうがいいでしょう。

--過去問にはいつから取組み始めればよいですか。

盛田先生:いたずらに早く始めればよいというものではありません。早く始めすぎてお子さんの心が折れるようでは本末転倒です。一般的には、基礎学力が十分についているお子さんについては、夏休み後、9月からのスタートが最適であると思います。基礎学力にまだ不安があるというお子さんの場合には10月以降のスタートでも構いません。

--何年分取り組めばよいですか。

盛田先生:志望順位の高い学校は、書店で売られている過去問集を1冊やればよいと思います。「形式、分量、傾向」に慣れることが目的なので、ある程度慣れたらそれ以上やってもほとんど差は出ません。

 ただし、5年生以下のお子さんについては、今から行きたい学校があれば今年分(平成28年度分)を1冊買っておくとよいです。そして6年生になってからもう1冊買うという「ダブル買い」をお勧めします。特に2次、3次試験を行う学校については1冊に3、4年分しか掲載されないため、「ダブル買い」をすることで多めに過去問を手に入れることができます。

--塾には何をお願いすればよいのでしょうか。

盛田先生:入試問題には、合否を分けるような重要な問題と、誰も解けないような難しい問題があります。解いた問題と解答用紙を塾の先生に提出し、何を復習すべきかという問題の選別をお願いするとよいでしょう。

 ただし、塾によっては、1クラスあたりの生徒数が多い場合、提出してから2週間経っても返却されないといったケースもあるようです。子どもは「○○点取れたから合格!」と「結果」しか眼中にないことが多いのですが、過去問を仕上げるためには解きっ放しでは意味がなく、そこから何かを掴み取ることがとても大切です。

 そのためにもお子さんを細かく見てくれる、信頼出来る存在を9月くらいまでには見つけておくとよいでしょう。お通いの塾の講師がベストですが、塾の外でもいい。塾の外に新たに探す場合には、秋以降はどこも繁忙期に入るため、力のある講師は新規受付を終了する場合が多いので気をつけてください。

 「この年度の問題は、あの問題には手をつけず、この問題を解くべきだった」「この分野が頻出なので他の教材で補強しよう」などと客観的に評価し、適切なアドバイスをしてくれる存在がいれば、過去問を解く効用が最大限発揮され、志望校合格に向けて盤石な実力をつけることができるでしょう。

--ありがとうございました。

 次回は、社会と理科について過去問の利用方法を聞く。

《加藤紀子》
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