【シネマ羅針盤】今年のアカデミー賞、テーマは「生還」 “マッド”な現代社会への警鐘? | Push on! Mycar-life

【シネマ羅針盤】今年のアカデミー賞、テーマは「生還」 “マッド”な現代社会への警鐘?

エンタメ エンタメ

マーク・ライランス、ブリー・ラーソン、レオナルド・ディカプリオ、アリシア・ヴィキャンデル- 【第88回アカデミー賞】(C) Getty  Images
  • マーク・ライランス、ブリー・ラーソン、レオナルド・ディカプリオ、アリシア・ヴィキャンデル- 【第88回アカデミー賞】(C) Getty  Images
  • レオナルド・ディカプリオ&ケイト・ウィンスレット- 【第88回アカデミー賞】(C) Getty  Images
  • 第88回アカデミー賞- (C) Getty  Images
  • 第88回アカデミー賞- (C) Getty  Images
  • 主演男優賞を受賞したレオナルド・ディカプリオ - (C) Getty Images
  • ブリー・ラーソン&アリシア・ヴィキャンデル/【第88回アカデミー賞】(C)Getty Images
  • アカデミー賞- (C) Getty Images
  • アカデミー賞- (C) Getty Images
第88回アカデミー賞は2月29日(日本時間)、すべての賞を発表し、終了した。近年まれに見る激戦で、予想が困難だった作品賞をはじめ、各賞の結果にドラマがあり、非常に興味深い授賞式となった。今年の受賞作品、受賞者には共通点がある。テーマは「生還」だ。

授賞式は脚本賞の発表で幕を開け、『スポットライト 世紀のスクープ』が受賞。脚本も手がけたトム・マッカッシー監督は、「勇気ある“生還者”に感謝したい」と手にしたオスカー像を掲げた。カトリック教会による性的虐待を、新聞記者が執念の取材で暴いた実話を描く本作は、幼少期に性的虐待を受けながら、トラウマから“生還”した元被害者たちにも光を当てている。真の主人公は、自らを“生還者”と呼ぶ彼らなのだ。そして授賞式は、同作に作品賞を捧げ、幕を閉じた。セレモニーそのものに、ドラマ性がある――これぞ、アカデミー賞の醍醐味だろう。

悲願の主演男優賞を受賞したレオナルド・ディカプリオが、『レヴェナント:蘇えりし者』で演じたのは仲間の裏切りで、最愛の息子を奪われたハンターという役どころ。過酷な大自然、悪意に満ちた人間の仕打ちを前に、何度となく生死をさまよい、そのたびに生還を果たす姿は、文字通り「蘇えりし者」である。ブリー・ラーソンが主演女優賞に輝いた『ルーム』は、7年もの間“部屋”に監禁された女性とその幼い息子の生還劇を描いた。

最多6部門を獲得し、オスカーナイトの裏番長として大暴れした『マッドマックス 怒りのデス・ロード』。独創的なビジョンと決死のアクション、徹底的に構築された空間芸術が描いたのは、マッドな近未来を駆ける男と女たちのシンプルな力強さだった。すべてを失ってもなお、生きることをあきらめない主人公・マックスはこう叫ぶ――「本能がおれに命じる、生き残れと」。

今年のアカデミー賞が、生還をテーマに選んだのは、混迷する現代社会へのハリウッドなりの警鐘かもしれない。このままでは、本当に世界がマッドな状況に陥ってしまう…いや、すでにマッドな世界だからこそ、いかに生還すべきか真剣に考えるべきだと訴えているのだ。晴れの舞台で、切迫した環境問題に言及したディカプリオの姿も印象的だった。
《text:Ryo Uchida》

特集

page top