【シネマVOYAGE】アイスランドの美しい自然で描かれる兄弟の絆『ひつじ村の兄弟』 | Push on! Mycar-life

【シネマVOYAGE】アイスランドの美しい自然で描かれる兄弟の絆『ひつじ村の兄弟』

“北欧の旅”と聞いてまず思い浮かべるのは、オーロラを見る旅でしょうか。北欧ツアーを調べてみると、オーロラを観測できるベストスポットに案内してくれるツアーをはじめ…

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『ひつじ村の兄弟』-(C)2015 Netop Films, Hark Kvikmyndagerd, Profile Pictures 
  • 『ひつじ村の兄弟』-(C)2015 Netop Films, Hark Kvikmyndagerd, Profile Pictures 
  • 『ひつじ村の兄弟』-(C)2015 Netop Films, Hark Kvikmyndagerd, Profile Pictures 
  • 『ひつじ村の兄弟』-(C)2015 Netop Films, Hark Kvikmyndagerd, Profile Pictures 

“北欧の旅”と聞いてまず思い浮かべるのは、オーロラを見る旅でしょうか。北欧ツアーを調べてみると、オーロラを観測できるベストスポットに案内してくれるツアーをはじめ、オーロラを見つつ犬ぞりやトナカイそりなど北欧ならではのアウトドアが楽しめたり、ゴージャスなホテルの温泉やスパで身心を癒したり…どれも魅力的なものばかりです。

北欧映画においても──ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、アイスランドの映画は日本で観るチャンスは限られていますが、素敵な作品が多い。たとえば、スウェーデン映画でいうと、ラッセ・ハルストレム監督の『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』や、ヴァンパイアものをリアルな切り口で切なく描いた『ぼくのエリ 200歳の少女』。フィンランド映画『365日のシンプルライフ』は、断捨離やミニマリストという時代背景をうまく表現して日本でも話題になりました。また、デンマーク出身のラース・フォン・トリアー監督がアイスランド出身のビョークを主演にした『ダンサー・イン・ザ・ダーク』はカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞、語り継がれる名作です。個人的にはデンマーク出身の女性監督、スサンネ・ビアの『悲しみが乾くまで』『愛さえあれば』も好きな映画です(これはデンマークが舞台ではないですが…)。

北欧からまたひとつ素晴らしい映画が届きました。今年のカンヌ国際映画祭・ある視点部門でグランプリを受賞したアイスランド映画『ひつじ村の兄弟』です。アイスランドの雄大な自然を舞台に、そこで牧羊を営む人々の人間模様を描いています。

主人公はアイスランド辺境で羊飼いとして暮らすグミーとキディーの老兄弟。親から譲り受けた優良種の羊を育てていますが、実は40年間も口をきいてない不仲の兄弟。やがて、彼らが会話をする機会がやってくるわけですが、皮肉なことにそれは自分たちの羊が疫病に侵されてしまい、大切に育ててきた羊を殺処分しなくてはならなくなったことがきっかけでした。

美しい自然のなかで走り回るかわいい羊たち──そんな風光明媚な情景のなか徐々に人間の内面がえぐり出されていきます。羨望、挫折、欲望…と、兄弟の絆。この大地からもきっとオーロラは見えるんじゃないかと想像させる美しい自然と、そこで渦巻く人間のさまざまな感情、その対比も面白くて。そして、そう来ますか…!! というラストシーン。真っ直ぐで深いあの感情表現は忘れられないワンシーンとして記憶に刻まれるはずです。

最後にこぼれ話をひとつ。映画に登場する羊たちにもオーディションがあったそうなんです。選ばれたのは、とある牧場の羊たち。彼らがとても人懐こい気性なのは、飼い主である酪農家さんがものすごく愛情を注いで育てていたから。監督は「動物役者の賞があれば、この映画の羊たちは間違いなく賞に輝く」と絶賛。愛くるしい羊たちの演技も必見です。オーロラだけでなく、羊に会いに行く北欧アイスランドの旅もありですね。(text:Rie Shintani)

《text:Rie Shintani》
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