iPadは文房具、主体性を重んじた聖徳学園のICT活用と効果 | Push on! Mycar-life

iPadは文房具、主体性を重んじた聖徳学園のICT活用と効果

 世界を舞台に活躍するための力を、ICT教育・グローバル教育・アクティブラーニングなどを取り入れた最先端の学びにより実践、新時代にはばたく生徒の育成に取り組んでいる中高一貫校、聖徳学園中学・高等学校(東京都武蔵野市)。

教育 教育
PR
聖徳学園中学 システムセンター長 ICT支援員・教育ビッグデータエバンジェリストである横濱友一先生(撮影:稲葉九)
  • 聖徳学園中学 システムセンター長 ICT支援員・教育ビッグデータエバンジェリストである横濱友一先生(撮影:稲葉九)
  • 横濱友一先生(撮影:稲葉九)
  • ALTによる中1の英語の授業でもiPadと電子黒板を活用(撮影:稲葉九)
  • ALTによる中1の英語の授業(撮影:稲葉九)
  • ALTによる中1の英語の授業では、授業支援アプリ「ロイロノート・スクール」などを利用(撮影:稲葉九)
  • 中1の英語の授業のようす。ここでも電子黒板とiPadを活用(撮影:稲葉九)
  • 中2の英語の授業では、海外研修旅行で訪れるニュージーランドで発表する内容について能動的な話合いを行っていた(撮影:稲葉九)
  • 横濱先生の自作によるiPad充電収納庫(撮影:稲葉九)

 世界を舞台に活躍するための力を、ICT教育・グローバル教育・アクティブラーニングなどを取り入れた最先端の学びにより実践、新時代にはばたく生徒の育成に取り組んでいる中高一貫校、聖徳学園中学・高等学校(東京都武蔵野市)。

 iPadを「文房具」と位置づけ、すべての授業で活用している同校では、積極的にタブレットを活用した授業を展開している。期待の一方で、保護者として気になるのは、ネット利用によるトラブルや依存などではないだろうか。

 同校では、生徒たちへどのような配慮がなされているのか、情報システムセンター長 ICT支援員・教育ビッグデータエバンジェリストである横濱友一先生に聞いた。

iPadは保護者が購入し、生徒は親から貸与

 「一昨年、試験的に共用の貸出iPadを導入し、全教職員にも配布。昨年入学した現在中2の生徒たちから1人1台の活用を始め、現在2年目を迎えています。現在のiPadの活用法は、中1、中2はBYOD(私物端末の利用)で保護者に購入していただき、保護者から生徒が借りている状態で活用しています」と、ユニークな導入方式を語る横濱先生。

 実際は、保護者が学校に購入代金を支払い、学校がまとめて購入。モバイルデバイスを管理運用するための管理システム(MDM)である「MobiConnect for Education(モビ・コネクト・フォー・エデュケーション)」とフィルタリングソフト「i-FILTER ブラウザー&クラウド(アイ・フィルター・ブラウザー・アンド・クラウド)」をインストールしたあとに配布、生徒が安全に使えるように配慮している。

 「生徒は、親のお金で私立の学校に進学し、勉強させてもらっています。そのうえで、iPadを用意していただき、使う機会を与えていただいていることを理解させることも、教育の一貫だと考えています」と、横濱先生は「iPadは親からの貸与」としている理由を述べる。

希望にマッチしたフィルタリングやプロファイル機能が決め手に

 教育ICTに不可欠であるフィルタリング、そしてMDMについては、自らが調べて横濱先生自らが選定した。「i-FILTER」は国内製で歴史も古く、さらにブランドとしての認知度の高さ、そして何よりカテゴリーフィルタリングに注目したという。「i-FILTER ブラウザー&クラウド」の理由を、フィルター対象のサイトを「単にブロックするのか、注意を促すのか、パスワードで見られるようにするのか、3段階のフィルター設定を選べるのが決め手でした」と語る横濱先生。

 「学校として、怪しいウェブサイトはすべてシャットアウトしてしまうという方法もあります。しかしそれでは、聖徳学園のICT理念「使える生徒を育てる」に沿ったICTリテラシーが育ちにくい。警告を与え、見ていいもの、いけないもの、それを自分で判断することも勉強のうち」と横濱先生は説明する。

 また、モバイルデバイスの管理システム、MDM「MobiConnect for Education」導入の決め手となった点はほかにも、時間でプロファイルを切り替えられるということや、それを翌週月曜日から元に戻すなどあらかじめ予約ができること、さらにApp Storeの開閉設定が容易ということだと横濱先生は語った。

安定したシステムと生徒目線の授業展開

 教育現場は、厳密なカリキュラムで動いているため、予定した授業が機材トラブルやシステムエラーで実施できなかった場合、その1時間はもちろん、翌週以降にも影響が出てしまう。

 横濱先生は、「モバイルデバイスの管理システム『MobiConnect』は、不具合が少なく安定して使えます。また、担当者からのレスポンスもすぐ返ってくるので、非常にありがたいですね。授業をストップさせない安定性も魅力です」と、教育現場へのスピーディな対応にも満足しているようすだ。

 一方、「i-FILTER ブラウザー&クラウド」においてフィルタリング機能はもちろんだが、意外にも先生たちが注目しているのは、日ごとに出てくる検索単語ランキングだ。生徒の考え方や頭の中がデータとして表れ、それをもとに関心の高いキーワードを授業に取り入れると、生徒の食いつき具合が違うという。授業とこれらのデータをフィックスすることで、より伝わりやすいものになるのだろう。フィルタリングといえば「安心・安全」のためのツールだが、このようなユニークな活用法もある。

【次ページ】教育ICTのメリットや具体的な活用

教育ICTに不可欠な「i-FILTER ブラウザー&クラウド」と「Mobi Connect」

 では、教育ICTのメリットについて、教育現場ではどのように感じているだろうか。「2時間かかっていた職員会議が30分で終わるようになり、残りの時間をICTのスキル、グローバル教育、アクティブラーニングなど、授業対策や先生のスキルアップに使えるようになりました」と、横濱先生はあまりあるメリットを述べる。事務作業についても、先生の出張報告などの書類をPDF化し、オンライン押印のしくみを取り入れたシステムも開発中という。

 ひとつ気になるのは、iPad導入後の生徒の学力についてだろう。今まで使用していなかった学年の生徒と、導入した年度に中1だった生徒の英語の成績を比較した結果、下位層の成績が向上したという。「勉強の仕方がわからない、つまらないという生徒もいます。それを何とかするのもICTならではの力だと考えています。iPadを取り入れてから、楽しそうに勉強している姿が多く見られるようになりました」と、タブレットによる学習効果が確実にあることを実証したという。

研修旅行や情報共有、拡張し続ける教育ICT

 聖徳学園ではさらなる活用を考え、社内(校内)SNS「Talknote」を導入。全員がiPadを持参した中2による関西研修旅行では、モバイルWi-Fiをレンタルし、全20数班に分かれ、班ごとに京都市内で自由行動を実施。Talknoteを経由し、教員はもちろん、生徒同士の情報共有も積極的に行い、充実した研修旅行になったそうだ。

 さらに、保健室を訪れた生徒の来室・退室情報も教員がリアルタイムで共有。誰がどんな症状で訪れたかという情報が、クラス担任にプッシュ通知され、それ以外の先生も把握することが可能になった。生徒たちは自分のことを気にかけてくれている先生がいる、というアットホームな聖徳学園らしさを実感できているという。

授業支援アプリを活用、iPadを駆使した授業を展開

 2014年から3年間、ICT先進教育の研究指定校である「学校情報化優良校」として認定、その次の「学校情報化先進校」を目指し研究を重ねている同校。少子化の時代、入学希望者が減る学校もあるなか、ICTやグローバル、アクティブラーニングの導入によって注目を集め、躍進している。「来年は新しいこと、やらないんですか?」と、次の取組みに期待している保護者も少なくないという。

 実際に、中1と中2の英語の授業を見学。ALT(外国語指導助手)による授業では、時間制限を設けてiPadで自己紹介カードを制作。授業支援アプリ「ロイロノート・スクール」を使いながら、ネット検索で適切な画像を選び、それに添える英文を入力。制作したカードはクラスで共有され、電子黒板やプロジェクターに映し出される仕組みだ。

 また、別のクラスでは、自分が作ったカードを電子黒板で発表したり、海外研修旅行で訪れるニュージーランドで発表する日本の祭りや伝統についてディスカッションし、iPadを積極的に活用しながら、能動的な話し合いを行っていた。

 「ICTリテラシーは体験しないと覚えません。だから、間違えることも大切ですし、学校は間違えてもよい環境です。生徒には、今のうちにたくさん失敗してもらいたい。それを私たちがサポートし、心を育ててあげたいです」と微笑む横濱先生。他の学校に先駆ける聖徳学園は、教育ICTを今後も牽引し続けていくだろう。

《船田るみ子》
page top