サウンドステーション アンティフォン 松居 邦彦の『カーオーディオ そこんとこ、実際ど~なのよ?』 #80: デモカー・Audi ハイレゾ化への道 #10 番外編 Part.4 | Push on! Mycar-life

サウンドステーション アンティフォン 松居 邦彦の『カーオーディオ そこんとこ、実際ど~なのよ?』 #80: デモカー・Audi ハイレゾ化への道 #10 番外編 Part.4

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サウンドステーション アンティフォン 松居 邦彦の『カーオーディオ そこんとこ、実際ど〜なのよ?』
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アンティフォンのデモカー・Audiにおける取り組みに関連して、松居さんの心に浮かんだとある思いについて綴っていただいている。松居さんが考える、“ハイエンド”について、である。じっくりとお読みいただきたい。



当社のデモカー、Audiをハイレゾ化したことに際して感じたことを綴らせていただいている。この取り組みにより期待以上の成果が得られた。“ハイエンド”の領域に達したとまで感じられたのだ。と、思わぬ形で“ハイエンド”という言葉を意識したこのタイミングに際し、“ハイエンド”とは何なのか、考えてみたくなった。今回は、その続きである。





アンティフォン デモカー・Audi





そもそも“ハイエンドオーディオ”という言葉は、『ザ・アブソリュートサウンド』というアメリカのオーディオ雑誌を創刊したハリー・ピアスンという人が唱えはじめた表現だ。それは、それまでのオーディオの価値感とは違う新しい世界を形容する表現であった。



氏いわくそれは「生演奏を再現する装置」を指し、この目的を達成するための装置には、「低歪、高いS/Nだけではなく、存在感を感じさせないことが必要になる」と定義した。この「存在感を感じさせないようにする」という部分がまさに、それまでの価値観をリセットしなければいけない部分だった。



その頃僕は、その言葉を身をもって体験した。とても刺激的で、「目から鱗」な体験だった。



アメリカの家電見本市『コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)』での出来事だ。今では冬だけの開催となっているが、以前は夏・冬2回行われていて、初めて連れて行ってもらった95年の『サマーCES』でそれは起きた。



当時の日本のオーディオシーンではまだあまり注目されていなかった、“テール”、“バンダースティーン”、“MBL”などの、「プレーナー型のパースペクティブをダイナミックスピーカーで可能にする」、といった製品に出会い、そこで、「装置の存在を感じさせない、生演奏を再現する」音を体験したのだ。



それまでの僕は、より心地良い音色や刺激をオーディオ装置に求めていた。ターンテーブル & トーンアーム、針、プリアンプ & パワーアンプ、そしてスピーカーシステムの組み合わせを考え、そのバランスを工夫し自分の音楽感を満足させ、さらに進化させる。装置を取り替えるのはそのためで、その遍歴を含めて、それによって表現される世界を楽しんでいた。レコードは譜面、オーディオ装置はオーケストラ、自分がマエストロ、なのであったのだ。



つまり、装置の能力、装置の個性、その装置がどのような音を出すか、それらを重視していたのである。主体が装置になっていたのだ。それに対して「いかに生演奏を再現できるか」という概念の中では、装置の個性は必要ない、というわけなのだ。



以後僕は、とことん自己満足を追求していた世界から一転し、ただただ「生演奏の再現」を追求することに向かっていった。



心地よく鳴り響くスピーカーユニットを求めるのではなく、そのスピーカーの存在がなくなること、つまり生演奏と錯覚するような音を求めなくてはいけないと考えた。音色は、含まれる倍音成分の割合でその違いを感じ取るべきだ。深く楽器の音色を感じ取るためには、スピーカーユニット自体の倍音成分がそれを妨げないことが重要である。



それまでの選択を考え直した。それ以前は、ドライで味気ないと思っていた装置が実は、楽器の音色を細かく描き出す高性能な装置なのだと。






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以来、約20年間にわたって僕はそれを目指し続けている。近年、ある機会に僕のクルマの音を聴いてもらって感想を聞かせて頂いた時、「このクルマの音は乾いていて味気ないですね」と言われたことがある。



その通りなのである。僕のクルマの音は、それを目指した結果の音なのだ。20年前に、何事にも染まりやすい僕がアメリカで影響を受けたオーディオの流儀…、それをクルマで再現出来ないかと、ぼくは試行錯誤しているのである。



けれども、その方の気持ちも十分理解できるのである…(次回に続く)。


《松居邦彦》

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