【トヨタ アルファード/ヴェルファイア 新型試乗】40系はかつての「白いクラウン」なのか…渡辺敏史 | Push on! Mycar-life

【トヨタ アルファード/ヴェルファイア 新型試乗】40系はかつての「白いクラウン」なのか…渡辺敏史

『アルファード』&『ヴェルファイア』、俗に言う「アルヴェル」はここ日本で、三代をかけていわゆる高級車の数的総代の座を射止めるに至った。今や乗るにせよ乗せられるにせよ、それはかつての「白いクラウン」のような満たされ感や憧れ感を供する存在でもある。

自動車 試乗記
トヨタ アルファード 新型
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  • トヨタ アルファード 新型(エグゼクティブラウンジ)
  • トヨタ ヴェルファイア 新型(Zプレミア)
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◆ハンパない状況での船出となった40系アルヴェル

『アルファード』&『ヴェルファイア』、俗に言う「アルヴェル」はここ日本で、三代をかけていわゆる高級車の数的総代の座を射止めるに至った。今や乗るにせよ乗せられるにせよ、それはかつての「白いクラウン」のような満たされ感や憧れ感を供する存在でもある。

こうなると全刷新という施しそのものが相当難しい話になる。ましてや先代30系はコロナ禍からの半導体不足というイレギュラーを挟みながら、最後の最後まで需要を充分に満たすほどの生産キャパが無きまま販売終了に至り、40系は膨大な既納客も含めて待ちの数はハンパない状況での船出となった。発売直後から納期は1年以上となり、今や注文を停めている販売店も多数だという。色もグレードも極端に抑えて納車効率を最優先にしたのだろうが、それをも上回るエントリーがあったということだろう。

国内販売網の統合もあって、当初は既定路線だった日本市場でのアルファード一本化は見送られたうえ、ヴェルファイアにはエンジニアリング的な差別化で動的な質感を違えるという手間が加えられたのも40系の大きなトピックだ。

20~30系では唯一最大ともいえる差別化はエクステリアデザインだったが、それはむしろ抑え気味になっている。代わりにガソリングレードのエンジンは2.4リットル直4ターボユニットのT24A-FTSを搭載。279ps/430Nmを発するそれは、従来の3.5リットルV6の代替的位置づけとなり、アルファードには設定されないヴェルファイアのみに与えられるパワートレインだ。

このパワーに合わせるかたちでコアサポートとサイドメンバーを繋ぐフロントブレースの追加、19インチタイヤの標準化、サスには専用チューニングを施すなど、アルファードに対してスポーティさを大きく押し出したキャラクターとなった。対してアルファードの側はベーシックな2.5リットル直4自然吸気ユニットが用意され、2.5リットル直4ハイブリッドは両モデルに設定されるという算段だ。

◆“乗せられる側”も走り出しから実感できる変貌ぶり

グレードはアルファードが「Z」と「エグゼクティブラウンジ」、ヴェルファイアが「Zプレミア」と「エグゼクティブラウンジ」の各2つで構成される。Zプレミアはシートがナッパレザーになるなど(Zは合成皮革)内装でも差別化を図られるが、エンジンや車体の差別化も含めてアルファードZに対する価格差は115万円とかなり大きなものとなっている。

前述の通り色はアルファード白・黒・ブロンズ系の3色、ヴェルファイアは白・黒の2色のみとなっているが、納車状況が落ち着けば8人乗りを含めたグレード追加や多色化などの展開も考えられているようなので、慌てず機をうかがう買い方を検討するのもいいと思う。

新しいアルヴェルはようやくTNGA世代のGA-Kプラットフォームを得たことで、骨格レベルから走りの質感を大きく進化させた。Bピラー側の環状構造を強化しながら仕向地向けの25%オフセット衝突に対応すべくAピラー周りの構造を変更、更にスライドドア開口部の構造や形状を工夫するなどして捻れ剛性は約50%高まっているという。

30系を知る方々、特に“乗せられる側”の方にとって、その変貌ぶりは走り出しからあらかたに伝わってくるはずだ。持病でもあった2列目フロアパネルからの微振動はほとんど気にならないレベルまで収まり、路面変化に対するリアサスの応答性も向上、静粛性も確実にレベルアップしており、ショーファードリブンとしての期待に応えるものに仕上がっているといえるだろう。

また、乗り心地の向上についてはトヨタ初となる2列目シートフレームのラバー支持や、エグゼクティブラウンジについてはクッションを専用の低反発フォームにするなど、造作面での工夫も加えて対処している。ちなみに姿勢の自由度や直感的な使い勝手という点でみれば、Z系グレードのセパレートシートはエグゼクティブラウンジに勝るとも劣らない。特に3列目シートを多用する向きには、2列目席間も動線にできるのは大きなポイントとなるだろう。

◆かつてのクラウンを再現したとも言える棲み分け

新型アルヴェルは運動性能の伸びしろも著しい。明確に快適性重視のアルファードであってもハンドリングは加減速の応答遅れも小さく操舵と動きの一体感が俄然高まっていることが伝わってくる。これがヴェルファイアのターボグレードにもなれば、高負荷領域でのロール量やスピードも定常的に推移し、サスの追従性やタイヤの接地感も高く…と、動きの比較対象もセダンやワゴンを指すことになるほどだ。

スポーティなミニバンといえばガチガチに締め上げて窮屈な動きになったものを思い浮かべるかもしれないが、ヴェルファイアのそれはピッチやバウンドの収まりもしなやかで、ことによればショーファーユースでもアルファードより快適だと思う方もいるかもしれない。

かつてのクラウンがロイヤルサルーン系とアスリート系でその性格を違えていたような棲み分けを、新しいアルヴェルは再現しているともいえるだろう。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

渡辺敏史|自動車ジャーナリスト
1967年福岡生まれ。自動車雑誌やバイク雑誌の編集に携わった後、フリーランスとして独立。専門誌、ウェブを問わず、様々な視点からクルマの魅力を発信し続ける。著書に『カーなべ』(CG BOOK・上下巻)

《渡辺敏史》

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