“本格カーオーディオ”のススメ 第1回“デッドニング”と“アウター化” | Push on! Mycar-life

“本格カーオーディオ”のススメ 第1回“デッドニング”と“アウター化”

ライトにカーオーディオを楽しんでいる方々に向けて、“本格”をお薦めする短期集中連載を開始する。一歩踏み込んだ方法にトライすると、カーオーディオという趣味をより深く楽しむことが可能となる。その具体策を、毎回テーマを絞り多角的に解説していこうと思う。

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ドアスピーカーを“アウター化”した例(製作ショップ:サウンドウェーブ)。
  • ドアスピーカーを“アウター化”した例(製作ショップ:サウンドウェーブ)。
  • ドアスピーカーを“アウター化”した例(製作ショップ:サウンドウェーブ)。
  • “アウター化”しない場合でも、ドア内部の“デッドニング”を手厚く実行すると、音に効く。

ライトにカーオーディオを楽しんでいる方々に向けて、“本格”をお薦めする短期集中連載を開始する。一歩踏み込んだ方法にトライすると、カーオーディオという趣味をより深く楽しむことが可能となる。その具体策を、毎回テーマを絞り多角的に解説していこうと思う。

第1回目となる当回では、ドアに取り付けるスピーカー(ミッドウーファー)をより“本格”的に鳴らすためのポイントとして、“デッドニング”と“アウター化”について考察する。

なお当特集は毎回、全国の実力カーオーディオ・プロショップを講師と仰ぎ、プロ視点でのアドバイスをもらい、紹介していく。今回は、茨城県の老舗“サウンドウェーブ”の根本さんに教えを請うた。じっくりとお読みいただきたい。

■ドア内部の音響的なコンディションを整えるために、“デッドニング”を実行すべし!

まずは、“デッドニング”の必要性について根本さんに訊ねた。スピーカーを簡単に取り付けたいと考えたときには“デッドニング”が行われないこともあるが、“本格”を目指そうとするならば、これはやっておくべきなのか、否か…。

「“デッドニング”はぜひとも実行していただきたいですね。なぜなら、そうすることで装着するスピーカーの性能を十分に引き出すことが可能となるからです。

クルマのドアは、ホームオーディオのスピーカーでいうところの“エンクロジャー(箱)”の役割を担います。でもドアは音響機器としては設計されていないので、スピーカーボックスとしてのポテンシャルが低いんです。しかし“デッドニング”を行えば、音響的なコンディションを整えられます。

そしてできることなら徹底的に、つまりはより“本格”的に行えたらベストです。いろいろな考え方があり、軽めにした方が良いとされることもありますが、当店では、できる限り手を尽くすべきだと考えています。

スピーカーは振動板を前後に動かして音を発するのですが、裏側でも同様のメカニズムが働いています。なので裏側からも音が放たれていて、そしてそれはさまざまな悪さをしでかします。特に問題となるのは、ドア内部の鉄板を“共振”させることです。鉄板は案外薄く、簡単に共振してしまいます。共振するとビビリ音が発生したり表側の音を濁らせたりします。まずはその可能性を、とことん潰しておきたいと思うんです」

■裏側から発生する音をドア内部に“閉じ込める”作業も重要!

“デッドニング”には他にも、以下のような目的があるのだと言う。

「ドア内部には、各種スイッチ、コネクター、ケーブル等も設置されていますが、垂れ下がっている状態になっているものは固定すべきですし、これらについてもガタついたりビビったりする可能性は徹底排除しておきたいですね。

また、スピーカーの裏側から発せられた音をドア内部に“閉じ込める”ことも必須だと考えています。ドア内部の鉄板には“サービスホール”というメンテナンス用の穴が開いていますが、ここにはビニールシートしか貼られていないケースが多く、その場合には裏側の音が、内張りパネル側にいとも簡単に入り込んできます。

そうすると、内張りパネルがビビったり。さらにはパネルが振動して表側にも音を伝えてしまうのですが、特にこれはなんとしても阻止したい。

理由は以下のとおりです。表側の音と裏側の音は耳で聴く分には同じ音なのですが、音波としては真逆の関係にあります。それが同一空間で混在すると、“キャンセリング(打ち消し合い)”が起こってしまうんです。

しかし、サービスホールを塞いで裏側の音を閉じ込めておけば、ネガティブな要因を摘み取ることが可能となります。

さらには、内張りパネルにも手を掛けると万全です。制振材や吸音材を駆使して、ビビリや音漏れに対策するとより良い音で音楽が楽しめると思います。

高音質を目指すなら“デッドニング”はマストです。そしてどうせなら徹底的なメニューを実行して、“本格”度を高めていただきたいですね。満足度も高まるはずです」

■“アウター化”はハードルは高いが、効果は絶大!

続いては、“アウター化”について教えてもらった。

「“アウター化”とは、スピーカーの取り付け面を内張りパネル面まで立ち上げるスタイルのことを指しています。これの効果は絶大です。スピーカーを内張りパネル内に収める取り付け方をする場合でも、できる限りの工夫を凝らして良い音が楽しめるようにしていますが、音に有利なのはどちらなのかと聞かれたら、断然、“アウター化”です。

ただし、ハードルが高いことも事実です。内張りパネルをカットする必要があり、よりコストも掛かります。製作においては注意しなくてはならない項目も多く、技術的な難易度も高いです。しかししっかりと手を掛けて“アウター化”を完成できれば、スピーカーから放たれる音をダイレクトにロスなく車室内に届けられ、確実に良い音が楽しめるようになります。多くの方にお試しいただきたいと思っています。

スピーカー交換をする際に一気に“アウター化”まで行えたらベストですが、後からでも良いと思います。最初の段階では予算の多くをスピーカー代に当て、さらに予算ができたときに“アウター化”を実行すれば、音が良くなる感動を2度味わえます。“アウター化”の良さをはっきりと感じ取れますし、むしろお得かもしれませんね」

■“本格”度合いがもう1ランク上の“アウター化”がある!?

ところで“サウンドウェーブ”では、“アウター化”のスペシャルメニューの用意もあるという。

「当店では、“アウター化”のさらなる“本格”仕様を実践することも少なくありません。それは、スピーカーに“角度を付ける”というやり方です。こうすることで得られる情報量を増やすことが可能となり、一層の高音質化が果たせるんです。

音は、音程が高くなるほど“指向性”が強くなります。そして“指向性”の強い音ほど、角度がずれたときの減衰率が高まってしまいます。なので、ミッドウーファーが真横を向いた状態で取り付けられていると、中高域の情報量がどうしても減衰しがちになるんです。しかし少しでも角度を付けられれば、つまりリスナーに向けられれば、減衰量を減らせます。

これについてもいろいろな考え方があり、角度を付けることが絶対的な正解ではないのかもしれませんが、当店ではそのメリットは大きいと考えています。ただ、取り付けの難易度が上がることは確かです。強固に固定すること、裏側の音エネルギーを上手く抜くこと等々、配慮しなくてはならない項目も増えていきます。

しかし、それらへの対策が万全に行えれば、もう1ランク上のサウンドを獲得できます。ドアスピーカーの取り付けにおいての“本格”を追求されたいというお客様には、当店では“ミッドウーファーの角度付け”をお薦めしています」

根本さんから訊いた話は以上だ。合理的にサクっとスピーカーを取り付けることにも利点はあるけれど、より“本格”的な取り付けスタイルにトライすれば、より良い音が得られることもまた事実。参考にしていただけたら幸いだ。

さて、次回以降もさまざまな“本格”について考えていく。乞うご期待。

《太田祥三》

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