【三菱 アウトランダー 500km試乗】「優秀なSUV」で選ぶか、「三菱テイスト」を求めるか…井元康一郎 | Push on! Mycar-life

【三菱 アウトランダー 500km試乗】「優秀なSUV」で選ぶか、「三菱テイスト」を求めるか…井元康一郎

自動車 試乗記

三菱 アウトランダー
  • 三菱 アウトランダー
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今年6月にビッグマイナーチェンジを受けた三菱自動車のミドルクラスSUV『アウトランダー』。同モデルは大型バッテリーを装備し、都市走行で2時間程度であればEVとして使用可能なプラグインハイブリッドが注目を集めることが多いが、ガソリン車もこのチェンジでかなりの改良を受けたという。そのアウトランダーのコンベンショナルなエンジンモデルで地方取材がてら中距離ツーリングする機会を得たのでリポートする。

アウトランダーの通常モデルは大きく分けて2リットル直4SOHC(150ps/190Nm)を搭載するFWD(前輪駆動)と2.4リットル直4SOHC(169ps/220Nm)のAWD(4輪駆動)の2種類があるが、今回ドライブしたのはAWDのほう。グレードは最上級の「24Gナビパッケージ」で、さらにロックフォードフォスゲートのプレミアムサウンドシステムを装備していた。

ドライブルートは東京・葛飾を出発し、埼玉県秩父から雁坂トンネルを抜けて山梨県甲府へ。その後、富士山の西側を経由して伊豆半島の修善寺に至り、起点に戻るというもので、走行距離は465.8km。うち103kmは高速・有料道路。1名乗車、エアコンオート、行程の半分はエコノミーモード。また操縦安定性の違いをみるため駆動力配分システム「S-AWC」について適宜NORMALとAWC ECOを切り替えながら走った。


◆マイナーチェンジの成果

アウトランダーがデビューしたのは2012年秋。発売直後にプラグインハイブリッドのアウトランダーPHEVと普通のモデルの両方を短時間ドライブした時には、普通モデルはPHEVに比べてパワートレインからのノイズが大きいことを差し引いても、静粛性や防振性など快適性の面で少なからず見劣りするのが気になっていた。三菱自関係者によれば、マイナーチェンジでは商品性向上のためのファインチューンを相当頑張ったとのこと。

実際にドライブしてみて、とくに大きく改善されたと感じられたのは静粛性・防振。エンジンはコンベンショナルなポート噴射式でもともと直噴に比べるとノイズの点では有利なのだが、マイチェンでエンジンルーム・客室間の隔壁の遮音性を高めたのか、騒音レベルは極小となった。平地の一般道クルーズでは無音走行に近く、高速走行の追い越しや秩父の山奥の急勾配などでようやくうなりを上げる程度である。

エンジンスペックは169ps/220Nmと、中量級SUV向けとしては必要最小限レベルだが、低回転域の力感は結構豊かで、秩父~雁坂トンネル、甲府~本栖湖の急勾配区間でも2000rpm台半ばくらい回せばゆうゆうと登り切ることができた。高速における100km/h巡航時の回転数は平地の軽負荷運転では1800rpm。

ロードノイズの遮音レベルも格段に上がった。舗装面が綺麗な幹線道路では今日の3ナンバーSUVとして平均的レベルにとどまるが、コンディションの悪い道路でも騒音レベルが大幅に悪化することがなく、ハーシュネスの抑え込みも秀逸で、平均を大きく上回る出来であった。今回はラフロードは走行していないが、舗装が割れて穴になったような箇所が散在する道路を走ったフィーリングから、グラベルやダートでも悪くないものと推測される。

次に乗り心地とハンドリング。こちらもショックアブゾーバーのフリクション特性が変わっているのか、ホイールの上下動は旧型に比べてかなりスムーズになっていたのは好感が持てた。また、快適性も現代のSUVとして十分に及第点が付く。

オフロードを走らなかった今回のドライブのなかでもっとも素晴らしく感じられたシチュエーションは高速巡航だった。段差やアンジュレーシ(うねり)をものともせず、クルーズは終始滑らかで快適。ちなみに80km/hより90km/h、90km/hより100km/と、速度を上げるにつれて滑らかさが増す。前後のトルク配分が良いためか、直進安定性もSUVとしては同クラスのライバルと比較しても秀逸の一言だ。


◆三菱の生真面目さが走りにも

一般道でも同様の印象が持続すれば、アウトランダーの足には太鼓判を押せたのだが、一般道では状況次第となる。端的に言って、これぞ三菱自のSUVと納得させられるような決まり方ではない。当たりはそこそこ柔らかく、数ミリの段差が連続する減速舗装のようなところも上手くいなすのだが、細かい路面のうねりにともなうホイールの上下動がもたらす振動の押さえ込みが足りず、良路、悪路を問わず終始何だかブルついているような雑味が残る。操縦安定性も、大入力を長い足で余裕でいなすようなフィーリングではなく、かといってオンロード重視のセッティングで高重心のSUVらしからぬ俊敏性を実現させているわけでもない、ちょっと中途半端な感があった。

同じ三菱自の重量級SUV『パジェロ』や、シャシーの基本部分をアウトランダーと共有するミニバン『デリカD5』は、たっぷりとしたサスペンションストロークを生かして車体上部をゆっくり、大きく動かすようなチューニングが施されている。それが生み出す、強固な鉄板の下で四輪が自由運動をしているような乗り味は、オフロードにこだわり続けた三菱自ならではの個性となっていた。アウトランダーはその両モデルと比べると重量が軽いため、車体の慣性の大きさを生かした味付けとなると少々不利なのは致し方ないのだが、それでもオンロードでのアジリティを気にしすぎたのか、コーナーで変にロールを止めようとするような動き方をするなど、全体的に少し突っ張ったような動きだ。

それならそれでオフロードを捨て、徹底的にオンロード志向に振れば、もっと良い乗り味に出来たのだろうが、三菱自のエンジニアの生真面目さゆえか、オフロードでの操縦安定性を切り捨てられず、その結果こういう味付けになったのだろう。アウトランダーはハイパワーエンジンを搭載しているわけでははなく、これで山岳路のワインディングをスポーツハッチのように駆け抜けたいというカスタマーが選ぶクルマではない。コーナリングでフロントサスペンションが大きくロールすることによる姿勢変化をきっちり感じながら走ったほうがリズミカルに走れるから好きという“SUV通”のカスタマーに刺さるような味付けのほうが三菱自の個性、見識を出すことができていいのではないかと思えてならないのだがいかがだろうか。

三菱自ご自慢の電子制御トルク配分システムAWCSはAWC ECO、NORMAL、SNOW、LOCKの4モードを持つ。今回は後者2つについては試すシーンがなく、ECO(通常はFWD走行)とNORMALだけを使ってみたが、山岳路においては走行フィールは結構異なる。普通のクルマの動きに慣れた身にとっては、終始強めのアンダーステアを自分でコントロールするECOのほうが自然に感じられた。NORMALで走ると、コーナリングをグリッと回る動きが明らかに強まる。運転を重ねて動きの癖がつかめてくれば、軽快な挙動が好ましく思えてくる時も来るであろう。


◆SUVを求めるなら購入リストに入れてもいい

燃費は直噴でもミラーサイクルでもない普通の2.4リットルエンジンを積む1.6トンAWDのSUVとしてはかなり優れたほうであった。JC08モード燃費はマイチェン前から0.2km/リットル改善されて14.6km/リットルとなったが、465.8km走行後の燃費計の数値は14.4km/リットルと、それに近い数字。給油量は32.87リットルで、満タン法による実燃費は約14.2km/リットル。非ハイブリッドのSUVとしては十分に許容できる経済性と言えよう。行程の中には平均車速が20km/hにも満たない東京~埼玉エリアのような混雑した道路も少なからず含まれていたが、そのようなベタ混みの道路でも無駄な加減速をしないようちょっと気をつければ11~12km/リットル台の燃費で乗り切ることが可能で、その都市内走行での燃費の良さがトータル燃費を押し上げる大きな原動力になった。

室内は5+2の7人乗りとして十分以上にスペーシーであった。運転席での操作系も比較的すっきりとまとめられ、操作頻度の高いエアコンやオーディオは使いやすい。オプションの高品位オーディオ、ロックフォードフォスゲートは、ジャズ、ロック、ポップスについてはそのハイパワーぶりが存分に生きて、とても良いパフォーマンスを示した。半面、クラシックについては中音域の音質がややがさつなことが裏目に出て、あまり艶のある再生音にはならなかった。

室内でもう一息クオリティを上げてほしく思われたのはシート。フレームの設計は悪くないのだが、座面のパッドの弾力が弱く、ドライブ時間が長くなると潰れてうっ血気味になる。ウレタンパッドをもう1ランク上のものに変え、表皮にもう少し摩擦の強いものを使うだけで印象は激変するだろう。この点についてもパジェロやデリカは生理的な疲労がたまるまではどこまでもノーストレスで行けるようなシートにできているのだから、アウトランダーももう一息頑張ってほしいところだ。

最後にデザイン。ビッグマイナーで内外装は大きく変わった。サイドやフェンダーアーチなどにプロテクションモールが配され、ルーフにもキャリアベースが設けられたことで、これまでのノッペラボーなイメージから一転、SUVらしい雰囲気になった。これはPHEVにはない、ガソリンモデル特有のデコレーションである。

ただフロントエンドについては、三菱自の新しいアイデンティティマスク「ダイナミックシールド」は、自然の中に置いてみると少々うるさいイメージがある。形状自体もひと目で惹き付けられるような魅力があるようには思えず、ホンダの「ソリッドウイングフェイス」と見分けがつかない。たまたま三菱自本社のショールームで見かけた、ダイナミックシールド顔に無理矢理変えられたパジェロに比べればまだ似合っているほうだが、このアイデンティティマスク自体が今後10年単位でブランドの看板とするに耐えうるような素晴らしいものと自信を持って言えるかどうか、引き返せるうちにもう一度考えてもいいのではないかとも思う。


給油前後の移動を含めて500km強走らせた印象としては、ガソリン車としては十分なエコノミー性能、ほどほどの快適さ、必要十分な走行性能を持っているアウトランダーのビッグマイナーモデルは、SUVの購入を考えているカスタマーがバイイングリストに入れていいだけのモデルになった。ロングドライブ時の疲労蓄積度もまずまずだ。ただし、パジェロ、デリカD5のような、これぞ三菱自のSUVというダイナミズムのあるテイストを期待すると若干肩透かしを食らうかもしれない。

もうひとつ欲を言えば、PHEV以外のパワーソースの選択にもう一段の幅が欲しい。たとえば欧州向けにラインナップしている最高出力150psの2.2リットルターボディーゼルと6速ATないし6速MTの組み合わせがあれば、かつてディーゼルSUVの雄というべき存在であった三菱自の普及型SUVとして、今の何倍も注目を浴びるであろう。今後の更なる改良や展開にも期待したい。
《井元康一郎》

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