【三菱 アウトランダーPHEV 新型試乗】上質さ、走り、存在感、フラッグシップに相応しい1台だ…中村孝仁 | Push on! Mycar-life

【三菱 アウトランダーPHEV 新型試乗】上質さ、走り、存在感、フラッグシップに相応しい1台だ…中村孝仁

◆先代を上回るパワーと上質感
◆圧雪路でもビビらず走れる
◆三菱のフラッグシップに相応しいモデル

自動車 試乗記
三菱 アウトランダー PHEV 新型
  • 三菱 アウトランダー PHEV 新型
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三菱のSUVと言えば何といっても忘れられないのは『パジェロ』で、パリダカールラリーでも優勝し、三菱の絶対的なモデルとして世界にその名を轟かせたモデルである。それゆえ、三菱自動車もパジェロの名声にあやかろうと、『パジェロミニ』、『パジェロジュニア』、『パジェロイオ』、『パジェロスポーツ』等々、何とかすそ野を広げて販売しようとしていた節がある。つまり、パジェロは従来まで三菱のフラッグシップSUVであったことを否定する人はいないだろう。

そんなパジェロに代わって新たな三菱のフラッグシップSUVの座に就いたのが『アウトランダー』である。日本市場では2019年で撤退していたパジェロだが、実は2021年まで海外向けには生産されていた。だから新しいアウトランダーの出現は、まさにそのパジェロの後を継いだモデルともいえるわけである。

こうした系譜を見ていると、今回のアウトランダーを三菱が如何に力を入れて作ったかがおおよそ見えてくる。

先代を上回るパワーと上質感

日本市場は新たにPHEV仕様のみとされ、そのエンジンだけは先代から受け継いでいるが、それ以外は全くのニューである。プラットフォームはアライアンスの力を借りて、ルノーと日産が開発したCMF-CDと呼ばれるものが三菱のモデルとして初めて採用された。そして、PHEVに関して言えばエンジンは4B12と呼ばれる2.4リットルの直4エンジンに(これだけは先代からのキャリーオーバー)先代よりも強力なモーターとこれまた大容量の20kwhのバッテリーを搭載。前後に配分されるパワーは確実に先代のそれを上回る。

見ての通りボディも完全なニュー。ダイナミックシールド顔もだいぶ板について、一目でそれが三菱のクルマであると認識できる。インテリアはそのグレードアップ感が著しい。P、G、Mという3種のグレードを揃えているが、最上級のPではセミアニリンの黒地にサドルタンのステッチが入ったレザーシートが奢られ、インテリア全体がこのコンビカラーで統一される。オプションとしてホワイトまたはブラックのレザーも用意される。BOSEのプレミアムサウンドもPでは標準装備。水平基調でシンプルなデザインとされたインパネも好感が持てる。

アウトランダーPHEVとしては初めて室内は3列7人乗りとなったが、残念ながら3列目は完全なオケージョナルシートで、レッグスペース、ヘッドスペースとも大人には不向きだ。そもそも2列目のシートがいとも簡単に後ろまで下がり、そうした場合は3列目のレッグスペースが皆無になる。子供などが乗っている場合、その操作は注意が必要だ。3列目のシートをもっと後ろに構築するスペースはあるのだが、3列目下にはPHEV用のメカニズムがあって、床面に段差ができてしまうことから現状以上に後方に構築することはできないのだそうである。

圧雪路でもビビらず走れる

短時間の試乗はすでに試乗会で体験済みだったが、この新しいフラッグシップをたった1時間の試乗であれこれ論ずるのは失礼だと思い、改めて借り出し数日間使用させていただいた。三菱のPHEVはある時はEV、ある時はシリーズハイブリッド、そしてまたある時はパラレルハイブリッドとして縦横無尽に使える。走行のほとんどはモーターで駆動する方法がとられているから、普通に走る限りは実にスムーズで静かである。

満充電で可能なEV走行は試乗車のPでは83km、ベースグレードのMで87kmとあるが、実際に使ってみる限りは70km程度が限度。家で一日フル充電した結果表示される数値は72kmであったから、おおよそそんなもんである。ただ、PHEVの走行距離としてはかなり多い。だから、ちょっと出かける限りガソリンはまず出番がない。今回は群馬県の往復で400kmほど走行したが、ガソリンの燃費はコンピューターの表示では19km/リットルと非常に良好であった。

群馬県内は完全圧雪路、部分凍結、部分シャーベット路など色々なシーンの雪道を走行したが、スタッドレスタイヤとS-AWDのコンビネーションはこうした条件下でも盤石で、都会育ちの雪道にひ弱なドライバーでもビビる必要は全くなかった(かく言う私も)。

三菱のフラッグシップに相応しいモデル

ドライビングが楽しめたのは予想以上と言っては失礼だが、非常に高い運動性能というかハンドリング性能を見せることである。コーナリングに関して言えばターンインでステアリングを切ると切り始めに関して言えばその挙動は比較的おっとりとしたものだが、さらに切り込んでいくとなかなか鋭敏で動きがシャープになる。この特性をつかむと転舵の量を加減して面白いようにスポーティーに走ることが可能であった。

しかも切り始めがおっとりしているから、高速などでもナーバスな面は全く見せず、直進安定性が実によく快適なドライブを楽しめる。さらにアライアンスの力はプロパイロットならぬ「マイパイロット」が全車に標準装備で、高速での移動に対する疲労を大幅に軽減してくれた。

その上質感、その性能、その走りそして見た目の存在感などすべて、三菱のフラッグシップに相応しいモデルに仕上がっている。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

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