
子供の頃、家族旅行に出掛ける時は車での移動がほとんどだった。兄弟がそれぞれ好みのレコードから録音したカセットテープを聴くのが楽しみだった。その時どこに向かって何を聴いていたか、なんて事を20年以上たった今でもふと思い出す事がある。70年代のサディスティック・ミカ・バンドを聴けば夏に行った長崎を思い出すし、冬に大分の親戚に会いに行った場面を思い出すのはロニー・スペクターの歌声を聴いてる時だったりする。オーティス・レディングやミッチ・ライダーを聴けば免許を取ったばかりの兄と流していた街の風景が甦る。自分でハンドルを握る様になった現在も、変わらずいろんな音楽を聴いて過ごしている。幸いな事にバンドでツアーに出る時はメンバーの持ち込んだ膨大な枚数のCDを楽しめるし、プライベートでドライブをする時は友人のくれた音源を何枚も再生している。これからも時の場面と共に、新たな記憶が蓄積されて行くのだろう。
おかげで、既に自分の中で名曲名盤は数えきれない程存在しているが、“残念ながらどれも聴きたくない!”と言うわがままな瞬間がたまに訪れる。その時に必ず戻れる場所とでも言うのか、移動する密室の中で心を高揚させてくれるのが、『The Sun Sessions CD』だ。RCA以降のゴージャスなエルヴィスは小学生時代から聴いて来たが、後に出逢ったSUN RECORDS時代の若きサウンドはいつ聴いても新鮮で、決して色あせる事がない。 タイトルの響きとは逆かも知れないが、真夜中に独りで聴きながら走行距離を伸ばしたくなる…そんな作品だ。

ヴォーカリスト/ギタリスト
1971年生まれ。福岡県出身、福岡県在住。活動10周年を迎えたバンドthe Travellersは98年の初リリース以降、国内にとどまらず海外にも独自のサウンドを発信し続けている。
2008-03-24 Mycar-life *「Music*car=life」は毎週月曜日更新予定です。