
ティートック・レコーズ ¥2,800
M1.ユーヴ・ゴット・ア・フレンド M2.ヒール・ザ・ワールド M3.フラジャイル M4.イッツ・ユア・ワールド M5.リーン・オン・ミー M6.ラヴズ・イン・ニード・オブ・ラヴ・トゥデイ M7.ホワット・ア・ワンダフル・ワールド M8.ア・プレイス・イン・ザ・サン M9.アイ・アム・フリー M10.スムース M11.アイム・イン・ユアーズ
彩花-iroha-(vo)ロデリック・ロス(pf)ケイコ・ボルジェソン(pf) M7. M8.デレク・ショート(b)M1. M2. M3. M4. M9.トミー・キャンベル(ds)ラティール・シー(perc)M1. M2. M3. M4. M9.トニー・サヴィオリ(g)金野貴明(g)オマー・ハキム(ds,key-b) M10. M11.ジェリー・ブリックス(b)アブドゥリ・ズーリ(g) M10. M11.
本年5月にベース、パーカッションのみをバックにした「The Simple」でCDデビューを果たし実力の高さを見せ付けた女性ヴォーカリスト彩花-iroha-のセカンド・アルバムだ。収録曲をみると本作はキャロル・キング、M.ジャクソン、S・ワンダー、Stingなどポピュラー系、R & B系アーティストのカバー集という印象を受ける。しかし様々なジャンルの曲を採り上げたのは、国籍や年齢、性別を超えた大きな愛をテーマとしているからだ。また本作は彩花が自ら交渉しゲストとして参加したオマー・ハキム(ds)のトリオをバックにした2曲のオリジナルも収められている。さらにトミー・キャンベル、ブラジル出身のトニー・サヴィオリといったアーティストが参加、同レーベルの代表でありプロデューサーの金野貴明氏も2曲でギターを披露するなど彩りのある作品に仕上がっている。
M1.などイントロの雰囲気から一転しミディアムアップの4ビート〜サンバのリズムに移行する斬新なアレンジが施されや懐かしい楽曲から新たな魅力を引き出している。そして勿論、全曲通して彼女の持つ高いパフォーマンスが如何なく発揮されている。サウンドは、その音量レベルから考えてリミッターを使用していると思えるが一般のジャズ作品のような圧迫感や歪みを感じさせない自然で伸びやかな響きが得られている。そして細部の音や表情も明晰に描き出す解像度も確保されているのが好ましい。本作は通常のCDだが同レーベルではマスターレコーダーから1枚ずつ手間をかけてCD-R化したマスターCD-R盤(MCDR-2007¥9,800)も発売している。これはマスター音源に近い情報量と音質の鮮度の高い生々しいサウンドが聴ける高音質盤といえる。両方入手して比較試聴をするのも良いのではないかと思う。

ビデオアーツ・ミュージック VACM1398¥2,6258
M1.リフレクションズ M2.ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド M3.フォール M4.イースト・コースト・ラヴ・アフェア M5.アスク・ミー・ナウ M6.アナ・マリア M7.モア・ザン・ユー・ノウ M9.ユーヴ・チェンジド
カートローゼン・ウィンケル(g)エリック・リーヴス(b)エリック・ハーランド(ds)
ジャズ・ギター界に新しい風を送り込んだ感のあるギタリスト、カートローゼン・ウィンケルの久々の新作だ。バックは様々なバンドで活躍するエリック・ハーランド(ds)とブランフォード・マルサリス・バンドにも参加し堅実なプレイを聴かせるベーシスト、エリック・リーヴスの二人のみのギター・トリオ編成を採っている。シンプルな編成だけにカートローゼン・ウィンケルのパフォーマンスが存分に発揮されている感がある。収録曲はウェイン・ショーター(sax)、セロニアス・モンク(p)の楽曲が2曲、自身のオリジナル1曲、そして隠れた名曲といえるスタンダードの3曲、計8曲だ。曲目だけを見るとジャズ・スタンダード集という雰囲気であるがスローテンポのバラードで演奏されているが中にはボサノヴァのリズムも使うなど変化をつけている。一聴すると淡々とした演奏に感じるが一音一音を大切にしてフレーズを紡ぎ出している。その結果、従来からのストレートなジャズ作品とは異なる魅力を古い楽曲から引き出しているように感じられた。
その結果、従来からのストレートなジャズ作品とは異なる魅力を古い楽曲から引き出しているように感じられた。
サウンドはDレンジの圧縮やEqによる加工が少ないナチュラルな響きが得られギターも伸びやかで透明度のさが感じられる。ベースは深みがありドラムスもアタック音などを強調することなくタッチやニュアンスを正確に捉えている。

キングレコーズ KICJ-567¥3,000
M1.ラブ・フォー・セール M2.イッツ・ディ・ラブリー M3.マイ・ハート・ビロングズ・トゥ・ダディ M4.イッツ・オール・ライト・ウイズ・ミー M5.ナイト・アンド・デイ〜ファインド・ミー・ア・プリミティブ・マン M6.アイ・ラブ・パリ M7.オール・オブ・ユー M8.アイ・コンセントレイト・オン・ユー M9.ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ M10.エブリタイム・ウィー・セイ・グッドバイ M11.ビギン・ザ・ビギン M12.恋とは何でしょう M13.ジャスト・ワン・オブ・ゾーズ・シングス M14.レッツ・ミスビヘイブ
シェリル・ベンティーン(vo)L.A.ジャズ・トリオ:コリー・アレン(p)、ケビン・アクスト(b)、デイブ・タル(ds)ジェームス・ムーディ(ts) M10. M12.ダグ・ウェッブ(ts) M1. M4.クリス・テデスコ(tp) M2.ラリー・クーンス(g) M4.他
人気、実力No.1のジャズ・コーラス・グループ“マンハッタン・トランスファー”で活躍するほかソロでも活動の場を広げ日本へも度々訪れ素晴らしいステージを展開している女性ヴォーカリスト、シェリル・ベンティーンのコール・ポーター作品集だ。バックはL.A.ジャズ・トリオを中心としてベテラン・サックス奏者ジェームス・ムーディ等を加え、小細工のないジャズ・スタンダード集に仕立て上げている。著名なスタンダード・ナンバーで幕を開けるがイントロはマイルス・デイビスの”オール・ブルース“を思い出させるリズム・パターンで、サックスの間奏部になると一般的な3拍子のリズムに変わり、後メロディで元のリズム・パターンに戻る斬新なアレンジが施されている。また、ヘレン・メリルの歌で超有名になった M9.のイントロでは軽快なブラッシングをバックにバッハの楽曲をスキャットで披露するなど所々に楽しい仕掛けがある。彼女のヴォーカルをはじめ個々の楽音は自然な響きが得られる。また適度な温もりが感じられる落ち着きのあるトーンにより粋な大人のジャズといった雰囲気を漂わせている。

エイベックス AVCL-25475
波多野睦美(メゾ・ソプラノ),高橋悠治(ピアノ)
以前紹介した「サイレント・ヌーン」はイギリスの近現代歌曲によるアルバムだったが、今回はフランス近代がテーマになっている。モンポウ、プーランクなどが中心だが、ピアノに高橋悠治を迎え、その作品もいくつか収録する。声を抑えた歌い方はクラシックの人にはちょっと珍しい感じで、それがとても自然で耳に優しい。静寂感が全編を覆うようなひっそりとしたアルバムに仕上がっている。モンポウの作品はあまりポピュラーとはいえないが、ナイーブな哀しみに満ちた旋律が心に訴えてくるようで、ぜひ知ってほしいものだと思う。
ステージのイメージ、特に声とピアノの位置感が大変生々しく捉えられた録音は、質感も響きもナチュラルそのものだ。ホールの残響も空間の遠近を実感させ、立体的な実在感に富んでいる。この音が正確に再現できれば言うことはないはずである。

フォンテック FOCD9443
国松竜次(ギター)
フランシス・タレガは、「アルハンブラの想い出」で知られる19世紀後半のスペインの大ギタリストである。現代のギターの技法はほとんどタレガが発明したといわれ、バイオリンのパガニーニ、ピアノのリストに匹敵するような存在なのかもしれない。
「アルハンブラの想い出」でもわかるように、ロマンチックで優美な作品が多く、また様々な技巧を凝らした奏法も、弾く方には大変だろうが聴く分にはとても楽しい。演奏者の国松竜次は、タレガに縁の深いバルセロナに留学し、同地のコンクールで優勝したという。じっくりと腰を落とした演奏は、上辺だけのロマンチシズムではなく、重く深い情感を湛えて時に沈みこむようだ。ギターのデリケートな音色と表情の変化を、ありのままに捉えた録音も素晴らしい。一人で静かに浸りたい世界である。

マイスター・ミュージック MM-2049
藤森亮一(チェロ),カール=アンドレアス・コリー(ピアノ)
N響首席奏者の藤森亮一が久々に録音したソロ・アルバムである。タイトルの「エレジー」はフォーレの名曲。チェロ小品の定番となっている作品だが、ほかにも「ジョスランの子守唄」やサン=サーンスの「アレグロ・アパショナート」など、チェロの名曲がいくつも収められている。
このアルバムでは、マイスター・ミュージックでおなじみのピアニスト、カール=アンドレアス・コリーが伴奏を務めている。一般の伴奏ピアニストと違って、ソリストの弾く伴奏は表現力が深く、それが演奏全体を立体感のあるものにしているように感じる。美しいメロディーを美しい音色で弾いたというだけの演奏ではなく、1曲1曲に音楽としての主張がある。やはり音楽はみんなで作るものという気がしてくる。
この録音では鮮度が第一。システムがよくなればなるほど、汚れっぽさのない瑞々しい音が出てくるはずだ。そこを目指してほしいものである。
2009-11-05 [TEXT:井上千岳,小林貢]
