小林貢お薦め高音質CD

「マンハッタン・アフェアー/マイク・カタラーノ」

ビデオアーツ VACM-1356¥2,625

M1.ライト・オン・タイム M2.ビューティ・アンド・ザ・ビースト M3.シンキング・オブ・ユー M4.アーバン・ディライト M5.ザ・フール・オン・ザ・ヒル M6.ミスター・スゥイング M7.テイク・ミー・バック・トゥ・リオ M8.スムース・アズ・シルク M9.レレナ M10.ジンジ M11.ムーンライト・イン・バジャ M12.ジ・エンド・オブ・エラ M13.ジンジ

マイク・カタラーノ(k-b)ウィル・リー(b)ロブ・マウンジー(k-b)ピーター・アースキン(ds)スティーヴ・ガッド(ds)ランディ・ブレッカー(tp)イヴァン・リンス(vc)

マンハッタン・アフェアーマイク・カタラーノ

N.Yを拠点に活躍する東海岸のスムース・ジャズ界で人気の高いマイク・カタラーノの新作。本作はベーシスト、ウィル・リーとの共同プロデュース作品だがマイクがボサノヴァの創生者といわれるアントニオ・カルロス・ジョビンの影響を受けたことからブラジルの香りが感じられる作品に仕上がっている。参加アーティストも豪勢でウィル・リー、ロブ・マウンジー、ピーター・アースキン、スティーヴ・ガッド、ランディ・ブレッカーと全員がリーダー・クラスといえるメンバーで構成されている。さらに本作はブラジル音楽界の大物といえるイヴァン・リンスがゲスト参加しジョビンの名曲「ジンジ」を英語とポルトガル語で歌うなどブラジル系フュージョン&スムース・ジャズ・ファンにとって嬉しい内容となっている。オープニングから軽快なビートを叩き出すリズム・セクションをバックに透明度の高いピアノの洗練されたメロディが流れ出す。低音域は30付近まで緻密なエネルギーが感じられ低音楽器の重心は低いが決して鈍重でなく軽やかさがある。特に M6.では20Hzまでの伸びが感じられるが低音のビートが軽やかに立ち上がってくる。ピアノやサックスのメロディ楽器も質感がナチュラルで個々の音像や細部の響きもクリアーに捉えている。これからの季節、ビーチウェイや高原などを走る時の絶好のBGMになるのではないかと思う。

「明るい表通りで/L.A.ジャズ・トリオ」

キング KICJ-538¥3,000

M1.レディー・ビー・グッド M2.誰も奪えぬこの思い M3.アイ・ゴット・イット・バッド M4.プレリュード・トゥ・ア・キッス M5.ラッシュ・ライフ M6.Cジャム・ブルース M7.明るい表通りで M8.スピーク・ロウ M9.マイ・フーリッシュ・ハート M10.いつか王子様が M11.ヒアズ・ザット・レイニー・ディ M12.チャンズ・ソング M13.フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン

L.A.ジャズ・トリオコリー・アレン(p)ケビン・アクスト(b)デイヴ・タル(ds)シェリル・ベンティーン(vo)

明るい表通りでL.A.ジャズ・トリオ

「マンハッタン・トランスファー」で活躍するシェリル・ベンティーンの夫君のコリー・アレンを中心としたピアノ・トリオの新作。1曲だけシェリル・ベンティーンがゲスト参加し素敵なヴォーカルを聴かせ華を添えている。また本作は「明るい表通りで(On The Sunny Side Of The Street)」というアルバム・タイトルからも解るように著名ジャズ・スタンダード集といえる内容の誰もが楽しめるジャズ作品といえる。演奏は何処にも気負いがなく軽妙にスイングする大人のジャズという味わいがあるのが好ましい。またバラード系ナンバーではしっとりとした曲ではピアノの音色も美しくドラムスのブラッシュ・ワークなどもしなやかなタッチが感じられた。録音もジャズ作品にありがちなパワー感やアタック音を強めることがなく、広いfレンジとDレンジが確保されナチュラルな響きが得られている。低域レンジも十分に確保されていてウッドベースやキックドラムの胴鳴りや空気感をクリアーに引き出すが不自然さが感じられない。またリミッターやコンプレッサーによるDレンジの圧縮も過度ではなくピアノの余韻なども透明感のある美しい響きが聴ける。

「ソングス・オブ・アワ・タイム/シェリル・ベンティーン」

キング パドルホィール KICJ-535¥3,000

M1.マスカレード M2.ゲット・ヒア M3.アイ・キャント・メイク・ユー・ラヴ・ミー M4.ドント・ノウ・ホワイ M5.クロース・トゥ・ユー M6.イット・マイト・ビー・ユー M7.ウィル・ユー・スティル・ラヴ・ミー・トゥモロー M8.ハート・オブ・ザ・マター M9.タイム・アフター・タイム M10.青春の光と影 M11.コーリング・ユー M12.エリー・マイ・ラヴ

シェリル・ベンティーン(vo)コリー・アレン(p、kb)ケビン・アクスト(b、e-b)デイブ・タル(ds、perc)ギャニン・アーノルド(g)トム・マッコーリー(g、perc)ダグ・ウェブ(p、recorder)

ソングス・オブ・アワ・タイムシェリル・ベンティーン

トップクラスの実力と人気を誇るジャズ・コーラス・グループ、マンハッタン・トランスファーに1970年代後半から参加シ、同グループが送り出した一連のヒット曲に大きく貢献しソロでの活躍の幅を広げているシェリル・ベンティーンの・リーダー作。本作は一般的なジャズ・ヴォーカル作品の定番的なスタンダードを採り上げず70年代から80年代にかけての比較的新しいヒット曲を採り上げた新時代のスタンダード集という趣だ。オープニングが70年代初頭にカーペンターズがヒットさせ、70年代後半にはジョージ・ベンソンが歌い彼のヴォーカリストとしての地位を確立した感のあるレオン・ラッセルの名曲「マスカレード」という辺りに本作のコンセプトが現れているといえる。またエンディングはサザン・オールスターズの「いとしのエリー」だが、その間に挿入される10曲も絶妙でホリー・コール、シンディ・ローパー、キャロル・キング等のヒット曲が収められているのでシェリルや我々の世代にとって楽しくもあり懐かしくもある作品といえる。そんな楽曲を彼女自身が慈しむように歌い上げ聴き覚えのある曲に新しい魅力を付加している感がある。両エンドがスムーズに伸び、特定の帯域に強調感のないナチュラルなサウンドという印象。またリミッター、コンプレッサーなどで極端にDレンジを圧縮していないので圧迫感のない音が聴けるのが好ましい。

井上千岳お薦め高音質CD

「カルメン・ファンタジー/渡辺玲子」

エイベックス AVCL-25197

渡辺玲子(バイオリン),江口 玲(ピアノ)

カルメン・ファンタジー渡辺玲子

渡辺玲子の技巧が冴え渡る1枚だが、単なるテクニックの誇示に終わっていないところが聴かせどころだ。「カルメン・ファンタジー」もそうだが、「ツィゴイネルワイゼン」のたっぷりとした歌い回しを聴けばそれが納得できるはず。超絶的な技巧で難所もあっさりと切り抜けてしまうが、それを土台に情感に溢れた歌が展開されている。

それにも増してカーオーディオファンにわかってほしいのが、この録音の素晴らしさである。通常独奏バイオリンだけに焦点の合いがちなこの種の録音の中で、このCDは伴奏のピアノにまでぴったりとしたフォーカスが絞られている。音色が鮮明なのはもちろん、バイオリンとピアノの双方がくっきりと定位し、その距離間や位置感がことのほか明瞭だ。

もしクラシック系で音のわかりやすいソースが欲しいということなら、迷わずこの1枚を推奨したい。この音が理想的に出てくるようなら、おそらくそのカーオーディオは本物の音がしているはずである。

「風の都/KOBUDO-古武道」

コロムビア COCQ-84474

風の都KOBUDO-古武道

古武道というのはなにも柔術や鎖鎌のようなものを指しているわけではなく、グループ3人の名前から一字ずつ取ったもので、その点ではコブクロと同じだが、もちろん何の関係もない。ピアノとチェロ、そして尺八という異色の取り合わせは、しかし確かに「和」のテイストを感じさせるものではある。いってみればフルート三重奏のフルートを尺八に置き換えたものとも考えられるが、音楽の広がりはそんな狭いものではない。

ポップス、クラシック、邦楽という異なる分野で活躍する3人が集まっただけに、取り上げられる作品はクラシックから日本歌曲、オリジナルと幅が広い。そのアレンジはもちろん独自のものだが、よく知っている曲が思いがけない響きで聴こえてくるのも楽しい体験だ。全体に癒し系のフィーリングが流れているが、その音楽はただ快いだけでなく時に刺激的でもある。尺八とチェロというユニークな取り合わせが意外なほど多彩な表現を引き出していることも新鮮な発見である。

「木陰の散歩道/東京メトロポリタン・ブラス・クァルテット」

マイスターミュージック MM-2017

木陰の散歩道東京メトロポリタン・ブラス・クァルテット

弦楽四重奏や木管四重奏と違って、金管楽器つまりブラスだけによる四重奏というのはあまり聴く機会がない。この場合はトランペット2本とホルン、トロンボーンという組み合わせになるが、このCDはその珍しいカルテットである。

演奏の東京メトロポリタン・ブラス・クァルテットはつまり東京都交響楽団の金管奏者で構成されたアンサンブルだ。これがブランスバンドでもなければビッグバンドでもないのがミソ。あくまでもクラシック音楽の基本である四声体であることが重要である。

弦楽四重奏を金管に置き換えるとこんな感じになるだろうかという予想はちょっと外れることになる。やはり金管には金管特有の持ち味やジャンルというものがあって、4曲収められたバッハのコラールなどにその特徴がよく現れているが、この響きの厚みと柔らかさは他の楽器では得られない。

タイトル曲の「木陰の散歩道」は軽快なマーチだが、途中でボーカルによるコーラス(?)が入るのは、おそらくメンバーの肉声によるものだろう。楽しい1枚である。

2008-07-03 [TEXT:井上千岳,小林貢]

高音質CD紹介