
LINN レコード AKD-306
M1.ウォーキング・ワウンデッド、M2.ミック・ザ・フィッシュ、M3.キャプテン・カレイジャス、M4.タンブルダウン、M5.ロブスター・ポット999、M6.ドント・インプロヴァイズ、M7.サラス、M8.セレニティ、M9.アドリフト、M10.シレニティ、M11.ブロードサイド
アーニー・ソモギイ(b)エディ・ヘンダーソン(tp,flh)ポール・ブース(ts,ss,b-cla)ティム・ラプソーン(e-pf,melodica)デイヴ・スミス(ds)ロブ・タインゼント(ts,ss,a-fl,cla)
アナログ・プレーヤー・システムでスタートし今や総合オーディオ・メーカーとなった英国LINNレコードの最新作だ。ベーシスト、アーニー・ソモギイをリーダーとして結成されたARNIE SOMOGYI's AMBULANCEの新作。本作はオリジナル・メンバーに加え若い頃に病院でのインターン生活と平行してトランペットのクラシック奏法を学び後にマイルス・デイビスの演奏によってジャズに開眼したという異色のトランペッター、エディ・ヘンダーソンがゲスト参加しているのが注目される。すべての収録曲はメンバーのオリジナルで変拍子を採り入れた曲やフリー・フォームな曲など多彩でアレンジも巧く親しみやすい作品に仕上がっている。オリジナル・メンバーの息が合っているのは勿論だがゲストのエディ・ヘンダーソンもベテランらしい堅実で味のあるプレイを展開している。サウンドはDレンジ、Fレンジともに十分に確保されナチュラルな質感を実現。一般のジャズ作品のようにオンマイク・セッティングでアタック音を強め、さらにリミッターやイコライザーによってパワー感を演出するような傾向がない点に同レーベルの音質への拘りと良識が感じられる。

ユニバーサルクラシックス&ジャズ UCCM-1142¥2,500
M1.エンギンギラエ&テ・ディカロ、M2.キヴ&スニンガ、M3.カラバンコロ、M4.サマオウマ、M5.オ・セン・セン・セン、M6.インディスクリーションズ&プリーズ・ドント・ストップ、M7.ジョンベ&回想&トレインズ、M8.テ・ディカロ、M9.テ・ディカロ
リチャード・ボナ(b,vo)エティエンヌ・スタッドウィック(key-b)アーネスト・シンプソン(ds)サミュエル・トーレス(perc)テイラー・ハスキンズ(tp)ジョン・ケイバン(G)
超絶的なベース・テクニックと独創的なヴォーカルで人気の高いカメルーン出身のベーシスト、リチャード・ボナ初のライブ録音盤だ。過去4作のリーダー作品から楽曲を採り上げているので彼の現在までの集大成的作品といえるかもしれない。バックはニューヨーク、ブラジル、パリの三都市で録音し2005年にリリースされた『ティキ』のツアー・メンバー中心に構成されているようだ。本作は2007年7月11日と12日に行われたハンガリーでのライブの模様が収録されている。リチャード・ボナはテクニシャンではあるが早弾きのテクニックを駆使するだけでなく何処かゆったりとしたグルーヴ感を感じさせる。本作はライブ録音ならではのノリの良さがありメンバー全員が一丸となってオーディエンスの心と身体を動かしているように感じられた。サウンドはコンテンポラリー系のライブ盤だけにリミッターなど電気的な処理が施されているがトランジェントの良さがあり圧迫感を覚えることがない。低域は20Hz付近までのレスポンスが確保され中高域にかけても強調感がないのが好ましい。

プランクトン VIVO-242¥2,500
M1.12年目、M2.イット・ハド・トゥ・ビー・ユー、M3.人生、M4.バット・ノット・フォー・ミー、M5.真夜中のジュリア、M6.リヨラ・ボッサ、M7.スウィング48、M8.夢の館、M9.回りくどい呼び出し、M10.真夜中のポール、M11.アンディサイディッド、M12.サマータイム、M13.ミレ・プラル、M14.チャボロの憂鬱
チャボロ・シュミット(g)コステル・ニテスク(vln)マヨ・ユベール(g) クロディウス・デュポン(b)ジアニ・リンカン(ツィンバロム)
本作はジプシー系音楽とジャズを融合させたギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトとヴァイオリン奏者、ステファン・グラッペリが中心となって1934年に結成されたフランス・ホット・クラブ五重奏団の現代版といえる楽器編成だ。そしてリーダーでありギタリストのチャポロ・シュミットの第4作となるが、彼はジャンゴが創成したジプシー・スウィング(マヌーシュ・スウィング)の正統的な継承者といえるだろう。切れの良い軽快感のあるリズムを刻むギター、哀歓のあるヴァイオリンとギターのメロディなどが所謂モダン・ジャズとは異なる新鮮さを感じさせる。2本のギター、ツィンバロム、ヴァイオリン、コントラバスなど純アコースティック楽器のみで編成され色彩豊かで深みのあるサウンドを構築している。十分なFレンジを確保したナチュラルで鮮度の高い響きが彼らの独特なグルーヴィーな演奏がより一層輝きを増しているように思えた。

エピック ESCC4
女声5部によるアカペラグループとして知名度を上げてきたアウラが、ついにメジャーデビューを果たした1枚である。待望の新録音といっていい。タイトルの「パストラーレ」はベートーヴェンの「田園交響曲」に因むものだろうが、ほかにもヴィヴァルディの「四季」やドビュッシーの「月の光」など、自然に関係あるナンバーが多い。それがこのCDのテーマともなっている。
過去2枚の録音に比べて、ハーモニーが非常にまろやかにふっくらとしてきたのが特徴で、またアンサンブルは異例なほど複雑精緻なものとなっている。通り一遍のグループではできそうもないほど高度な仕上がりといってよく、アカペラの技法を様々な角度で展開しているのが目覚しい。
モーツァルトやシューベルトのおなじみの歌曲もふくまれているが、いずれも伴奏音型まできめ細かく歌い上げている。完成度が高くひとつひとつのナンバーも魅力に富む。そしてクルマにとって大変厳しいソフトとなったことも確かである。

エイベックス AVCL-25192
須川展也(サクソフォン) 金聖響(指揮) 東京交響楽団 他
サックスといえばジャズの楽器というイメージがあるが、須川展也はクラシック・サクソフォンの第一人者である。ジャズとは違ってどちらかといえばクラリネットのような柔らかな音色が特徴で、もちろん大きく吹き上がるときの華やかさも持ち合わせているが、それでも決して荒れることはない。クラリネットの音域の広さに金管の瞬発力を加えた非常に表現力の高い楽器として、クラシックでももっと見直されていいように思う。
このCDではオペラのアリアを中心にプログラムが組まれているが、もともとが「歌う」ための作品であったものを、サクソフォンでも実によく歌っている。あるいは華やかな技巧を駆使した楽しいナンバーも含まれ、聴く人を飽きさせない。サクソフォンの別の魅力を味わってみてはどうだろうか。

デノン COGQ-31
シューベルトとシューマンというピアノ五重奏の代表的な作品を1枚に収めたCDである。「ます」は変則的な構成で、第2バイオリンがなくコントラバスが含まれている。ピアノの低音部を補強する目的といわれるが、この録音ではそのコントラバスが非常にたっぷりとした量感で聴こえる。補強なわけだからもう少し控えめに収められるのが普通だが、このCDはずいぶん思い切ったものだ。それがちょっとした聴きどころともなっている。
ピアノの音は響きがふくよかでタッチが瑞々しく、清新なイメージに溢れている。またニュアンスが大変デリケートで、タッチの瞬間的な変化にも富む。ホールの雰囲気を感じさせる録音といってよく、直接音だけを鮮明に入れたものとは趣が異なり、音場の空気が感じられる音質となっている。
2作品とも親しみやすく、特にシューマンはロマンチックな香りが濃厚だ。ぜひ手元においておきたい1枚である。
2008-05-01 [TEXT:井上千岳,小林貢]
