
ヘリックスは独オーディオテック・フィッシャー社のブランドで、ブラックスのジュニアモデル的な位置づけとして知られてきた。一般になじみの深いのは、薄型のコンペティション・シリーズだろうが、ほかにもプレシジョン、エスプリなどラインアップが豊富だ。単にスタイルがスリムだというだけでなく、力強さと緻密さを兼ね備えた再現力で、広くファンを獲得してきた。

ヘリックス E40 Esprit 85W×4chハイブリッド真空管パワーアンプ ¥136,500
このエスプリE40は、打って変わって管球ハイブリッドである。ヘリックスと管球式はどう考えても結びつかなかったため、最初は何かの間違いではないかと思ったほどだ。しかし製品を見てみれば確かにヘリックスだし、音を聴いて納得したのも事実である。
構成は双3極管4本をドライバー段に使用し、出力段は半導体としている。ハイブリッドといっても通常は双3極管1本で入力段を賄ってしまう安易な構成のものも目につくが、本機はその点でもかなり本格的な設計であることがわかる。出力は85W×4。一般的なシステムには十分すぎるほどのパワーである。

ともかく音が素晴らしくいい。真空管の暖かさを柔らかさを生かしながら、現代的なスピードと力感にも富んでいる。ハイブリッドとしても最も成功した例といえそうだ。
例えばジャズではトロンボーンの音色が厚手の輝きを持ちながら、ぼってりと膨れた感触がなく、ちょうどいい響きで明るく吹き上がる。ウッドベースはピアノは切れがよく、しかも鋭い棘は影を潜めて手触りがいい。
ボーカルやアカペラでは、人の声がなんとも精妙なニュアンスに満ちている。肉質感が厚く、余韻が繊細な響きで充満する。オーケストラやコーラスは分離が鮮明で、音場の奥行も深い。柔らかなエネルギーといったらいいのか、歪みや濁りのない力強さが音楽に生命力を与えている。
価格も大変手頃だが、このクラスで管球式の瑞々しさがたっぷり味わえるとなると、ちょっとほかには見当たらないコスト・パフォーマンスの高さである。多くのファンに聴いてほしいものだ。
2008-03-06 [TEXT:井上千岳/ PHOTO:クラスA]
*記事中の価格表示は特記がない場合、税込標準小売価格です。