カーオーディオを楽しむためのソフト選び

#3 竹内賢治「原音再生を可能としたデジタルシステムが奏でる音楽の魅力」

このユニットは何々向きとか、何々向きシステムとか、何々向きチューニングという言葉をよく耳にするが、何々向きという言葉は逃げや手抜き時の言葉と解釈している。クラシックを再現できるシステムは何でも再生できし、ジャズやロックでも同じことが言える。J-POPに最適なシステムという言葉を雑誌などの評論記事で目にするが、これはJ-POPしか聴けないという意味と理解している。勿論対価という問題も有るのだが、相応しいと言う言葉も存在するのだから、対価に相応しく有りたいし、価格破壊という概念もあり、対価以上のシステムも実際存在している。

軽く再現され深く沈み情報量豊かな低音は音楽的快感を呼ぶからこそ、30Hz付近の超低域が記録されているソフトを再生しえた喜びが生まれるのがオーディオの醍醐味とも言える。今では古い話と言えるが、IASCAというカーオーディオ競技に参加していた頃、低音とは背中にドンと感じた後ドドドとフロアを伝って行くモノだ。と審査員に言われ、音楽を聴くという概念はカーオーディオでは異次元の世界のと感じてから8年。最先端を行くカーオーディオシステムはタイムアライメントという概念が定着し、位相がきちんと揃えられデジタル処理により実存的な音場感が獲得可能と成っている。デジタル・プロセッサーを使えば実存的な音場感が獲得できる訳ではない。キチンとした取り付けと位置、ユニットの取り付け角度、位相管理が出来てこそ為し得る結果である。

試聴時によく聴くソフトはまずは「ヨーヨー・マ・プレイズ・ザ・ミュージック・オブ・ジョン・ウィリアムズ」。チェロ協奏曲の冒頭からアコースティック感溢れるオーケストラ音場が眼前いっぱいに広がり、ヨーヨー・マのソロとオーケストラのバランスが絶妙。音楽的快感を呼ぶ低音(大太鼓)も量感豊かで心地良く、無伴奏チェロのソロも自然な音場感が楽しめる。次に「マーラー 交響曲第5番」アルミンク(指揮)新日本フィル。全員が参加するトゥッティの迫力と弱音部の対比を正確に表現出来るか? 特にピアニッシモ時の低音再生、大太鼓が心を打ってくれるシステムを聴くと幸せになる! は大げさだが感動モノだ。

トリノ冬期五輪の開会式に歌われ荒川静香で人気を博したプッチーニのオペラ「トゥーランドット」、世界三大テノールの中でも「キング・オブ・テナー」の異名を持つルチアーノ・パバロッティが歌う「誰も寝てはならぬ」は感動モノでしたネ。そこで「ティ・アドーロ/ルチアーノ・パヴァロッティ」を聴いて欲しい。オブリガートのbasso continuo(通奏低音)、軽くて深く沈む低音に支えられたパヴァロッティのテノールは圧巻。これを再現したシステムのセッティングは測定器などの導入で可能と成った昨今のカーオーディオは楽しいの一言。

最後に鈴木慶江を聴いて欲しい。第29回イタリア声楽コンコルソ第1位ミラノ大賞受賞、第3回国際声楽コンクール"デビュー・イン・メラノ"(イタリア)オペラ部門最高位受賞、第31回V・ベッリーニ国際声楽コンクール(イタリア)最高位受賞などなど輝かしい経歴の持ち主で現在、東邦音楽大学特認講師でミラノ在住。

2002年、東芝EMIより「Fiore(フィオーレ)」にてCDデビュー。同年の大晦日にNHK紅白歌合戦に出演したので、その美しい容姿とソプラノにファンとなっ方も多いと思う。再生のポイントは透明感、響きとディテールの木目細かな感触を大事にしたい。通奏低音と車内に声がしみわたるような鳴り方を目指したい。2ndアルバムは「ニンナ・ナンナ〜大人のための子守歌」。3rdアルバムは「Calore〜ぬくもり」。荘厳な趣を醸し出す斬新なサウンド・プロデュースにより、美しいクラシックの名曲やポップスを、鈴木慶江ならではのやわらかな美声で歌っている。Track1の「月光」がいい、透明度が高く張りのあるヴォーカルとストリングスのピチカート音、プログラミングによるボトムエンドの超低音成分がチェックポイント。そしてベスト・セレクション。テレビで好評オンエアされたCM曲の私を泣かせて下さい(ヘンデル/石田編)や別れの曲(ショパン/三宅編)、G線上のアリア2005〜花王ロリエ エフ CMソング(J.S.バッハ/奥居編)などを収録した「レガーロ」が昨年発売されている。初恋や中国地方の子守唄を聴いていると心和み、カーオーディオの楽しさにドップリ填ってしまう。

2007/3/15 [TEXT:竹内賢治]