
自作でカーオーディオをやっている人は意外に多いようだ。確かに少し器用で工具がひと通り使えれば、ユニットを買ってきて取り付けるぐらいは誰でもできるだろう。またイコライザーをいじって音を変えるのが好きな人も結構いる。それはそれでいいことだが、例えば車では右と左で条件が変わる。それをきちんと揃えるのは、専門家といえども聴感だけでは不可能に近い。
つまり自作でやるのは限界があるということだ。スピーカーにしてもただ取り付ければいいというものではなく、バッフルやデッドニングといった加工も必要になる。さらに内装まできちんと仕上げるとなると、一般の人間には手に負えないことも多い。
まずはスピーカーについて考えてみよう。なんといっても音が一番変わるのはこの部分。それにとりあえず交換するだけなら、最も簡単に手が着けられる部分だ。
手っ取り早いのがいわゆるポン付け。純正と口径の同じユニットを買ってきて、付け換えるだけの作業だ。基本的にドライバー1本あれば済むことで、これでも立派なスピーカー交換である。特にコアキシャル(同軸)型だと取り付け位置も一箇所だ。コネクターを接続すればそれで音が出る。簡単なことではこの上ない。

プロショップにある工具の一部。全ての作業を行うためにはこれだけの数が必要。
ただポン付けの場合は、ドアの内張りを外して内部鉄板にじかにスピーカーを取り付けることになる。この鉄板自体それほどの剛性があるわけではないし、振動という面から見ても好ましいものではない。そこでインナーバッフルというものが使われる。
バッフルというのはスピーカーを取り付けるための板のことで、ホーム・オーディオのスピーカーでは前面の板がそれに当たる。カーオーディオではスピーカーのサイズに合わせたリング型の板で、MDFなどで作られているのが普通だ。
インナーバッフルは内部鉄板にネジで取り付け、そこにスピーカーをマウントする形になる。こうすることで鉄板の剛性を高めることができるし、振動もかなり削減される。またバッフル自体もカー用品店などで手に入るし、作業もポン付けと大して変わらない。コストもかからず、最もよく行われる取り付け方法である。
インナーバッフルは手軽で効果的な方法だが、もちろん万全というわけではない。デッドニングなどを加えればもっとよくなるのも確かだが、バッフル自体の面積は限られているからどうしても限界がある。またスピーカーによっては奥行がありすぎてスペースに収まらないことも少なくない。そこでアウターバッフルという方法が考えられる。


バッフルは一枚一枚お客様のクルマに合わせて作っている。プロショップはどのようなクルマが来ても対応できるように木工室が整えられている。左右対称に作るのは当然、素材や角度などプロショップの技が活かされる重要なスペース
アウターバッフルは内張りの外へ板を飛び出させて作るもので、当然板1枚をどこかに貼り付ければいいというものではない。ドアの外側(室内側)に箱を作るようなもので、工作はずっと面倒になる。しかし音という点から考えるとインナーバッフルより有利であることは間違いない。
バッフルの厚みや材質をある程度自由に選ぶことができるし、強度を持たせることも可能だ。内部鉄板に貼り付けるのとは違って、車自体の振動からもかなり逃げることができる。さらに取り付け位置が低い場合など仰角を持たせて最適な角度でマウントするなど、手法がぐっと多彩になる。その代わり内張りをかなり犠牲にするので、きれいに仕上げるのは相当難しい。実際アウターバッフルで自作している人の車を見ると、とても内装までは手が回らないという仕上がりのものがほとんどだ。さすがに高級車や欧州車で自作のアウターバッフルを付けている例はほとんどないといっていい。
ドアをスピーカー・ボックスとして見た場合、インナーにしろアウターにしろバッフルだけで取り付けていると、内部鉄板と外装との間の空間がボックスということになる。これが大体30〜50リットルぐらいあるだろうか。それに水抜きの穴などもあって、ほとんど開放状態である。13cmや16cmのスピーカーに対しては大きすぎるといわなければならない。スピーカー・ボックスは大きければいいというものではなく、適切なサイズというものが必要だ。
こういうわけで理想的な状態に近づけるためには、バッフルだけでなくボックスそのものをドアの中に作ってしまうことが考えられる。それがエンクロージャーである。

カーオーディオではドアの内張りなど張替えが必要なことが出てくる場合がある。そのときにもすぐに対応できるように準備してある。
エンクロージャーとは、スピーカーのキャビネットがドアの中に入っているようなものだ。どれくらいの容積が取れるのか、実際には車によりけりだが、ある程度の容積が確保できるならエンクロージャーのメリットは大きい。適切なサイズにできるだけでなく、密閉性が高い。だからスピーカーに適度な制動を与えることができる。あるいはバスレフにすることも可能だ。そして強度という点でも、ただの板ではなく箱になっていることでずっと強靭になる。
自作でエンクロージャーを作っている人がいるのかどうかわからないが、そこまでは一般のカー用品店では対応してくれないだろう。まして自分で作るのは無理ではないかと思う。
こういう具合で、最も手軽なスピーカー交換でも、自作でできることの限界があることがわかるだろう。プロショップの存在意義はそこにあるわけだが、では実際にはどんなところが違うのか。また一定以上の水準にするためにはどれくらいのコストがかかるのだろうか。次回はショップでの話をお伝えしたい。