
多くの人がカーオーディオになんとなく面倒くささを感じてしまうのは、色々と交換しなければならず、もちろん自分ではできないからショップに頼むわけだが、それがいくらぐらいかかるのかわからないといったことがあるだろう。あるいは純正システムを外すのが事実上不可能といった事情もありそうだ。それにシステムを換えてどれくらい違いがあるのか、それもわからないといった理由も考えられる。いずれにしても未知・不明の部分が多すぎて、おいそれと手を出せないというのが本当のところではないだろうか。
純正システムを悪くいうつもりはないが、後付けのオーディオ・システムとはやはり歴然とした違いがあるのも事実である。それは聴いてみれば誰にでも明らかなはずだが、仮に“あぁいい音だなぁ”と思ってもそのコストや手間を考えると二の足を踏んでしまうケースが一般だろう。そこで最も簡単な方法、カーオーディオの第一歩として、スピーカーに注目してみたい。

carrozzeriaのコアキシャルスピーカーTS-J16A

スピーカー中心部に高域を担当トゥイーターがあるのが特徴

carrozzeriaのセパレート2wayスピーカーTS-C06A。中低域を担当するミッドバスと高域を担当するトゥイーターが別々なのが特徴
スピーカーはカーオーディオの中でも最も交換しやすいパーツである。サイズが合えば、純正スピーカーと取り替えるだけでいい。もちろんハイエンドになるとバッフルを作ったり穴を開けたりという作業が必要になるが、もっと簡便に単に取り替えるだけで済むケースも少なくないのだ。エッと驚くほど容易で、自分でもやろうと思えばできないことではない。
スピーカーにはコアキシャル(同軸)タイプとセパレート・タイプがある。コアキシャルというのは2つにユニットを同軸状に一体化したもので、外見は1個だが実際には1個のユニットでできているもの。セパレート・タイプはユニットをバラバラにしたもので、もちろん取り付ける場所も別になる。また2ウェイだけでなく3ウェイの場合もある。
このうちとにかく簡単なのがコアキシャルだ。純正スピーカーはドアに取り付けてある場合がほとんどだが、コアキシャルならそこにそのまま取り付けることができる。1個だが2ウェイだから、それで完結なのである。配線も変える必要がない。コアキシャルには通常簡単なネットワークが付いているから、スピーカー・ケーブルをその端子に接続するだけで済む。後はドアにネジ止めするだけ。自分でもできるというのは、このことを指している。またショップでやってもらうにしても、コストはそれほどかからないはずだ。ユニットも込みで、〜10万円もあれば余裕で足りるのではないか。
カーオーディオは初めてという人には、このコアキシャル・タイプをとりあえずお勧めしたい。もちろん自分の車にそのまま付くかどうか、寸法とかネジの位置といったことがあるから調べておく必要はある。しかしそれらが適合すれば、あとは簡単この上ない。
便利なコアキシャルだが、それならなぜセパレート・タイプがあるのかということになる。残念ながらコアキシャルには、2つのユニットが同軸状に近接しているため干渉を起こしやすいという問題がある。だから音質的にはセパレートの方が多少有利なのだ。もちろん設計によってこの問題点をクリアすることは可能だし、そういう製品も少なくない。

セパレートスピーカーのトゥイーターはダッシュボードなどに取り付けることも可能で自由度が広がる
セパレートのもうひとつの理由は、取り付け位置が自由に選べるという点にある。低音を担当するミッド/バス(大きいほうのスピーカー)と高域を再生するトゥイーター(小さい方のスピーカー)とでは、取り付けの最適位置が必ずしも一致するとは限らない。むしろ別々の場所に取り付けて相互干渉をなくし、周囲の反射なども考慮してそれぞれに適したポジションを探す方が得策ともいえる。カーオーディオの場合、ホームオーディオと違ってひとつのキャビネットに入っているわけではなくユニットそのままでは半完成品の状態だから、取り付けによってスピーカーが完成すると考えていい。つまり車全体がスピーカーなのだ。その意味で取り付け場所が限られるコアキシャルよりも、自由度の高いセパレートの方が音質を追求しやすいということがいえる。
ところでもうひとつ、セパレートの場合は必然的に配線も別々になるから、ネットワークではなくデジタル・クロスオーバーが使いやすくなるということもある。コアキシャルでもそれは不可能ではないが、どうせデジタルにしたいのなら初めからセパレートにしておくのが普通だ。デジタルならばクロスオーバーだけでなくタイムアラインメントも使えるし、いっそう細かな調整が利く。それもセパレートの効用といっていい。
さて同じスピーカーで価格に大きな開きがあるのはなぜか。それは要するにコストの違いということになるが、例えば振動板の素材ひとつ取ってみても違いはある。単純なポリプロピレンなど合成樹脂系のコーンと、精密に漉き上げられたパルプ・コーンとでは、手間が違う。コストも自ずから異なるのは当然だ。またフレームも簡便なプレスとアルミ・ダイキャストでは大幅にコストが変わる。こういった素材や製造方法の違いが、コストの差を生むことになるわけだ。そしてそれは確実に音質に反映される。


写真上はcarrozzeriaのフラッグシップスピーカー TS-M1RS(¥105,000)のフレーム。写真下はcarrozzeria TS-C06A(¥31,500)のフレーム。見た目の質感が違うのはもちろんのこと、端子やマグネット部分にも大きな違いを見ることができる
もちろん素材や設計だけで音が決まるわけではなく低コストでも驚くほど音のいい製品もあるが、一般的にはいい製品を作ろうとすればコストは上昇する。それが音の差となって跳ね返ってくると思って差し支えない。さらにコストには量産効果というものもある。工業製品は大量に作るほどコストが下がるから、大手メーカーのものと手作りのような製品とでは量産効果が違う。この点も考慮しておいて損はない。逆に専門メーカーでしかできないような高級品は、どうしても高くなるのが普通である。
こういった価格と音の差とを比較して自分の持ち物を選ぶのがカーオーディオという趣味である。スピーカーはその第一歩として、簡単だが奥の深いパーツだというところが面白いわけである。
次週は各社コアキシャルスピーカーを実際に試聴して音質のレポートをお届けするので楽しみにして欲しい。