
10万円のスピーカーというとかなりのものである。というのはカーオーディオではキャビネットは付いていないから、ユニットだけの価格である。仮にホームオーディオで10万円のユニットを使ったとしたら、スピーカーとしては50万円ぐらいになってもおかしくない。ちょっとした高級機である。
そういう価格帯なのだが、意外に目を向けられることが少ないのも事実である。というのは音質追求派のハイエンドファンはもっとずっと高額な主として海外製品へ行ってしまうし、そうでなければ純正と入れ換える程度の入門クラスで満足してしまう。本当はこの価格帯が一番選び甲斐があるものなのだ。
純正との交換といったが、それならトレードイン・タイプと呼ばれる種類がある。これはユニットをエンクロージャーに収め、純正位置にそのまま取り付けるだけで済むという製品である。エンクロージャーに入っているのでそれだけ価格は高くなるが、システムとして設計されているので音が整っている。また内装を大きく変える必要がないし、取り付けも比較的簡単だからインストールのコストも抑えることができる。エンクロージャーに入っているということは、音質の点でも有利である。
エンクロージャーはあった方がいいわけだ。しかしユニットのサイズが限られるし、小口径で高音質な製品はかえって高額にもなる。このクラスには入ってこないことも多い。トレードイン・タイプはそうした中で、お買い得なジャンルといっていい。
2ウェイか3ウェイかというのも、ユーザーにとって悩ましい問題であるようだ。インストーラーにしてもそうらしいが、どうかすると2ウェイでは不安に思うケースらしい。つながりが悪くなるとか音が薄くなるといってことである。しかしスピーカーというのは、本来ユニットの数が少ないほど理想的なのだ。クロスオーバー・ポイントが減るからである。
車のように狭いスペースに取り付ける場合、基本的には2ウェイの方が有利だ。無理に3ウェイにしても音の密度が上がるどころか、混濁が増える場合の方が多い。特に本来2ウェイで使うところを、別のユニットを挟んで3ウェイにしてみても、違和感が大きくなるだけで決していい結果にはならない。どうしても3ウェイにしたいならば、元から3ウェイとして設計されているものを選んでアンプその他にもコストをかけなければならないが、それは上級クラスでやることである。
この価格帯では海外製品は少ない。どうしても国産に比べれば割高になってしまうのが普通である。しかしそれ以上に、国内メーカーの力というものをもう少し認識しておいてもいい。ホームへ別として、海外でも日本ほどカーオーディオでハイファイを追求している国はないからである。多くは音圧系が支配的で、いい音で音楽を聴こうという指向性とは多少のずれがある。
こういう日本の製品が多く集まっているのがこのクラスである。だから意外なほどC/Pが高い。メーカーあるいは製品個々の違いはあるにしても、そこを聴き比べて選んでゆくことができるのがこのクラスの楽しみである。ショップでのパネル試聴でもいいから、できるだけ音を確かめて選んでほしい。 (井上千岳)