主催者インタビュー:第10回を終えて

パイオニア・カーサウンドコンテストは今年で第10回を終えた。1997年の第1回以来、10年という節目の年を迎えたわけである。カーオーディオの発展に対してこのコンテストの果たした役割は大きい。その目的はそもそもなんだったのか、そしてそれがどのように達成されてきたのか、HQプロジェクトの担当部長豊田邦夫氏にお話を伺った。

パイオニア株式会社 豊田邦夫氏

パイオニア株式会社モーバイルエンタテインメントカンパニー事業企画部 HQプロジェクト オーディオ担当部長 豊田邦夫氏

「サウンドコンテストが始まったのは1997年ですが、その背景にはカロッツェリアXという存在があったのです」

と豊田氏は言う。

「1991年にカロッツェリアにXシリーズができましたが、これはカロッツェリアXではなかったんですね。あくまでカロッツェリアの中のXシリーズ。カロッツェリアXというブランドができたのは1993年のことです」

シリーズとしてのXとブランドとしてのカロッツェリアXは違うのだ。そしてカロッツェリアXの中核となるポリシーにODRシステムがある。オプティカル・デジタル・レファレンス。システムを可能なかぎりデジタル化し、光ケーブルでリンクすることによって車室内の過酷な条件を克服する。このため精密なデジタル・プロセッサーとデジタル入力搭載のアンプが必要となった。

「1996年にデジタルアンプの音質改善が行われ、その可能性を試してみよう、ショップさんの実際のインストールを見てみようということで始まったのがサウンドコンテストだったのです」

第1回の参加車両は、ピュアデジとデジアナを合わせて26台だった。当時はまだシアタークラスはなかった。

井上千岳氏

面白いのは、その時点でパイオニアのスピーカーを搭載していた車は皆無に等しかったということだ。

「もちろんパイオニアにもスピーカーはあったんですよ。ところが蓋を開けてみたら1台もない。これではいけないというので、東北パイオニアの人達が真剣に取り組んだんですね」

実際には開発に4年かかったという。RSスピーカーの誕生は2002年。それまでにもデジタル・プロセッサーやCDプレーヤーに新しいモデルが送り込まれ、カロッツェリアXのラインナップは急速に充実していた。

回を追うごとに、インストールの水準が向上してきたのは当然のことである。

「始めの頃は、とても聴いていられないようなのも中にはあったんですよ。でも、今年あたりはそういう車は1台もない。それだけレベルが上がったのは確かです」

ショップのレベルが向上すれば、次はそれよりいい製品を出さなければならない。その追いかけっこによって、製品もインストールもよくなってくる。これがコンテストの果たした大きな役割のひとつだと豊田氏は言う。

「それに加えてショップさんとのつながりができるのも大きな成果だったと思います」

技術開発や企画に携わる人間は、普段あまりショップとの交流がない。その機会が持てたこともコンテストのおかげだというのだ。

コンテストの初日には、ミュージシャンを呼んでコンサートが開かれる。また最終日はお待ちかねの審査発表で盛り上がった後、懇親会が催される。こうした中でショップの人々との間に密な交流ができあがる。

「第1回、第2回の頃は、朝までしゃべってましたね」

みんな熱心なのである。たっぷりアルコールが入っているのももちろんだ。

「最近ではみんな歳を取ったせいか朝までいる人はいなくなりましたが、今年でも4時ごろまで話してました」

毎年どれだけこの機会を楽しみにしているかということだろう。それに交流はショップとメーカーの間だけのことではない。当然ショップどうしの横のつながりも生まれる。

「地域ごとに勉強会や講習会を開いたりしてるんですね。今年はあの地方でプロセッサーの勉強会をやっていた、こっちの地域ではシアターの研究をしていた、ということがあると、それらの地域はピュアデジが強かったりシアターが強かったりと特色が出ます。そういう地域ごとのつながりができてきたのも、コンテストがあったからこそだと思うのです」

審査員の講評では、技術的な優劣だけでなくやっと音楽性が語れるような水準になってきたという言葉も聞かれた。10年という年月はそれだけの長さなのだ。

この後のコンテストはどうなってゆくのだろうか。例えばユーザーの参加をどうするかといったことも課題のひとつだろう。

現在このコンテストは、一般には公開されていない。実際問題、参加車両だけで150台を越えるところへ、それを上回るギャラリーの車が押しかけたのでは収拾がつかない。だから一般参加は無理にしても、例えば各地で行われる各種のコンテストと連携して、その上位入賞車に参加してもらうということなども可能なのではないだろうか。オーナークラスとでもいった新しいジャンルが必要になるかもしれない。

ショップと製品の水準が向上したなら、次はユーザーに目を向けてほしい。それによってさらにカーオーディオ界が一体となって盛り上がるように思うのである。

2006/9/28 [TEXT:井上千岳 / PHOTO:伊倉道男]