夏休み特集 〜自作卓上スピーカーを作ってみよう〜

自作スピーカー企画の最後は、“イノウエ・ダ・チタケンジェロ”井上千岳氏に、作ったスピーカーを批評していただく。さて、各作品の成績はいかに?

各作品の評価結果

作品群を前にしたイノウエ・ダ・チタケンジェロ

(井上千岳氏総評)

コークのボトルにスピーカー・ユニット着けたら音出ませんかというから、そりゃ出るでしょうと言った。スピーカーだもの、線つなげば音は出るに決まってる。それが悪かったらしい。いつの間にかほんとにコンテストやることに決まっていた。バカなことは止めなさいと言ったんだけれど、けっこうみんな乗り気らしい。よくよく暇なのかヤケクソなのか、ともかく3つの作品(?)ができあがってきてしまった。

最初はボトル・スピーカーだったはずなのに、そのうち「ボトル」の3文字が抜けてただのスピーカー・コンテストに変貌した。そして音は抜きにしてどれだけ面白いかという点をポイントにしていたのが、ジークで測定までするという。中島さんも何考えてるんだろうね。会社の機材と時間使って、こんなもんの測定して。ロクな結果が出るわけないじゃないの。

で、すらりと並べられた作品は、意外にまともの仕上がりになっていた。まともすぎて、「どれだけ笑わせてくれるか」という最初の基準からははっきり外れてしまっている。これじゃ笑えないじゃないか。どうしてくれる!?

それにしてもトレイだの花瓶だの、どっから見つけてくるんだろうね。どれもちょうどぴったりのサイズだ。世の中、探せばいろんなものがあるもんだね。それじゃひとつずつ聴いてみようか。

豐乳型癒し系ロンリースピーカー 広告代理店代表:Mr.永松(スタジオ180)

豐乳型癒し系ロンリースピーカー

豐乳型を判定する井上氏

丸いものが二つ並んでるとすぐオッパイを連想するのが、オッサンらしい安直ないやらしさともいえるけど、確かにこの微妙な膨らみ方がそれっぽいといえばそれっぽい。トレイなんだそうだが、どこでこんなもん売ってるんだろ。それよりこの丸い形をよくくり抜いたもんだ。トレイの厚みだけで貼りあわせてあるので、よく見ると多少ずれていたりするのがご愛嬌ではある。この部分、ゴムの輪か何かを嵌めてしまえばもっときれいに仕上がったんではないだろうか。

容積もそれほどないしどんなものかと思っていたら、案外素直な音だったのが面白い。低音がそこそこちゃんと出て、厚みのある落ち着いた音調。測定値から想像するようなドンヨリしたものではなく、声や楽器の音色がナチュラルに出ておりました。

スケルトンスピーカー・ドイト通い詰め仕様 編集者代表:Mr.熊崎(af imp)

スケルトンスピーカー・ドイト通い詰め仕様

スケルトン型を判定する井上氏

花瓶の底に穴を開けたんでしょうな。大変だったとは想像します。だからといって音がいいとは限らないけど。

夏向きで涼しそう? 確かに。それなら中に風鈴でも吊るしといたらもっとよかったかもしれないね。ナニ、一応スピーカーだって?

見た目の涼しさに似て、軽くて可愛らしい音調だ。容積は比較的あるからもっと低音が出てもよさそうなものだが、少し内部の吸音が足りなかったかもしれない。やっぱりガラスの共振というものが乗るんだろうか。

発想はまともすぎるくらいまともだから、ちょっと手を加えるだけで相当よくなるだろうと思うよ。ただ机に置いたときに、ゴロゴロしちゃうのは困るね。次は台座も一緒に製作するべし。

近代アート美術館用超合金ステンレス製ミミズ形スピーカー カメラマン代表:Mr.伊倉(フリーランス)

近代アート美術館用超合金ステンレス製ミミズ形スピーカー

ミミズ型を判定する井上氏

ビール工場とか行くとありますよ、こういうの。でっかいパイプがあっちこっち走ったりもぐったりして。違うの?

煙突だって。

ミミズというんなら、グネグネ自由に曲がると面白かったんだが。触ってみると硬いんだな、これが。で、重い。重石に金が入ってるという噂もある。

外側に黒いゴムが嵌まっている。ステンレスとのコントラストも明瞭で、造型的にはこれが一番決まってるといえる。ユニットがぎりぎりのサイズなので、バッフルの幅が取れずに苦労したらしい。取り付けには確かに必要だが、でもバッフルなんてなくてもいいんだけどね。

測定では最もまともだったらしい。ただもう少し低音が出てもよさそうな気もした。ベースとかドラムとか、ちょっと音程が上がっちゃうんだけど、しかし音はくっきりして解像度は高い。そこは重石が利いているようだ。内部に吸音材をぎっしり貼ったそうだけど、それが裏目に出たかもしれないね。いずれにしてもアナタの美学は評価しますよ、ハイ。


イノウエ・ダ・チタケンジェロ総括

みんなそれぞれ楽しませてくれました。見た目にも音でも。それにしてもスピーカー・ユニットというのは大したものだね。どんな容れ物に入れても鳴っちゃうんだから。もっと貧弱な音しかしないと思ってたんだが。

値段付けてくれといわれて、これは困った。みんなけっこうコストがかかってるんだ。売るとすればそれ以上の値段付けないわけにいかないでしょう。だから思ったね。メーカーさんというのはエライものだ。材料費より高く売れるものをちゃんと作ってるんだから。付加価値を付けるっていうのは難しいものなのである。

ま、それぞれよくやったというべきではあろう。はな丸とはいえないまでも、二重丸ぐらいはあげてもいいんじゃないでしょうか。でも最後にこれだけは言わせてほしい。

「許さーん!」

2006/7/20 [TEXT:井上千岳 / PHOTO:伊倉道男]