

フォーカル・JMラボはフランス国内最大シェアを誇るスピーカー・メーカーだ。自社ブランドのフォーカルからエントリー・クラス〜1000万円級の高級機までのホームオーディオ用システムを展開、カーオーディオにおいても幅広い製品群をラインアップし、近年ではアンプもリリースしている。さらに各国のブランドへのOEMを行うなどスピーカー造りに関して方墳なキャリアとノウハウを有している。世界中にスピーカーブランドは数多く存在するが、ユニットからエンクロージャーまで一貫生産できる会社は意外に少ない。同社はそんな数少ないメーカーの一つである。
そんな同社のカーオーディオ用スピーカーのトップエンド機がUtopia Be Carだ。同シリーズは13cm口径2ウェイのKit No.5、16.5cm口径2ウェイのKit No.6、16.5cm口径ウーファーをベースにした3ウェイ構成のKit No.7、そして13cm口径&21cm口径サブウーファーという5モデルで構成されている。同シリーズの最大の特徴はホームオーディオ用の超高級システムGrand Utopiaで搭載されたにベリリウムツィーターを採用している点にある。ベリリウムは理想の振動板素材として認知され、30年ほど前から日本製システムなどで採用されていたが量産が難しくコストが嵩む傾向がある。
ウーファーは同社独自のサンドイッチ構造Wコーンに改良を加え、十分な剛性と適度な内部損失を確保し従来以上にナチュラルな質感を実現したという。しかしベリリウム振動板トゥイーター以上に特徴的と思えるのは、本機のために新しく開発されたパッシブ型のクロスオーバーネットワークだ。高精度パーツを投入し高音質化を図っているが、マルチコイルエアコアインダクターをLRチャンネル一体型、ホームオーディオ用のシンプル&スリムなプリアンプのようにも見える筐体の「クロスブロック」は車内で同シリーズのスピーカーの性能を十二分に発揮させるべく設計・開発されたという。2ウェイシステムの場合、フロントパネルに装備した4つのツマミによってウーファー側のローパス周波数とQ特性、トゥイーター側のハイパス周波数とレベルをコントロールするもので、なんと4,480通りのフィルターコンビネーションをセレクトできる。スピーカーをインストールした後に緻密な調整を行うことが可能で、同シリーズスピーカーの性能をフルに引き出すこともユーザーの好みのサウンドに仕立てることもできるのが「クロスブロック」なのだ。これだけの機能を有しながら小型化(といってもかなり大型だが…)が可能になったのは10本のタップを持ち、複数のコイルを統合できるマルチコイルエアコアインダクターの投入に因るところが大きい。
聴感でウェルバランスとなる調整を施して聴いたKit No.6の印象は中低域に同ブランドのホーム機に通じる豊かで深みのある響きが感じられ、ウッドベースの音像を量感豊かに再現しながら輪郭やビートの切れを曖昧にすることがない。また高域はベリリウムトゥイーターらしくハイエンドまでスムーズな伸びと、滑らかさ、肌理の細かさが感じられ、シンバルの余韻やホールの残響成分を強調することなくリアルに引き出してくる。また女性ヴォーカルは適度にマイルドなトーンで艶やかさや瑞々しさが感じられる。デジタル方式のような精細な調整範囲は持たないが従来のパッシブネットワークでは得がたい緻密な調整を可能にした本機は大きな存在感を持つといえるだろう。