Hi-Fiオーディオフラッグシップモデル:井上千岳の「carrozzeria X、新たなる領域への提案」

デモカーを聴く

carrozzeria X デモカー・メルセデスベンツC230

新しいカロッツェリアXの全貌を細かく見てきたが、最後にそのシステムを搭載したデモカーを聴くことができた。ベンツのC230ワゴンで、ヘッドユニットとプロセッサーにニューバージョンが使用されている。

スピーカーは同時に発表されたTS10シリーズではなく、従来からのトップモデルTS1シリーズだ。フロント3ウェイにサブウーファーを2本組み合わせている。つまりトゥイーターがTS-T1RS、ミッドがTS-S1RS、ウーファーがTS-M1RSという具合で、トゥイーターとミッドは4チャンネル・アンプRS-A70X1台で駆動。ウーファーには同じくA70Xをブリッジで使用している。またサブウーファーはTS-W1RSが2基で、これもRS-A70Xのブリッジでドライブする。

carrozzeria X デモカー装備・ヘッドユニット

carrozzeria X デモカー装備・アンプ

トランクを覗くと、サブウーファーが両サイドに1本ずつ。アンプは2台しか見えないが、おそらくもう1台は隠れているのだろう。

フロントはミラー裏にトゥイーター、ドアにウーファーというオーソドックスなアレンジだが、ミッドがダッシュボードからはみ出すように取り付けられて存在感を示している。全体にTS1シリーズのユニットはサイズが大きめだが、音質には代えられないもの。このトゥイーターとミッドの配置も、工夫を重ねた末の結果なのかもしれない。

carrozzeria X デモカー装備・トゥイーター、ミッドレンジ

carrozzeria X デモカー・ウーファー

聴いてみてあらためて実感するのは、鮮度の高さとS/Nのよさである。これがRS-D7XIIIとRS-90Xの賜物であることは確かで、試聴室で感じたのと同じ静かで瞬発力に富んだ再現がそこに現れていた。

3ウェイの威力というものはある。2ウェイに比べると明らかに余裕があるし、それぞれのユニットに無理がかからない。ただ2ウェイよりもクロスオーバーが増えるだけ、つなげるのが難しいということはある。そこが調整のしどころでもあるわけだが、このデモカーのように車自体の作りがしっかりしていてスペースが十分ならばそのメリットが大きく生かされる。実際ここで聴く音は楽々として弾みがいい。音楽が生き生きと鳴っている印象である。またサブウーファーが2本も加わっているだけに、低域の力強さにも不足がない。ゆったりとして緻密な音調である。

静かさというのはいろいろなところに出るものだ。コーラスとかバロックといった音楽だけではなく、例えばジャズのドラムやベースでも聴こえ方が違う。アタックの弾け方が鮮やかだし、またきめ細かい。そして芯が立っているというのか、叩いた瞬間の感触がじかに耳に届いてくるようなシャープな切れがある。あるいはボーカルの表情の生々しさ。すぐそこから聴こえてくるような生の手触りが、やはり背景の静かさに大きく関係するのである。音の一番基本的な部分といっていい。

このデモカーは、いわゆるデジアナ・システムだ。TS1シリーズを搭載していることで、いわばデジアナの最高峰といってもいい音が実現された。ニュー・カロッツェリアXの威力を実感するには、恰好のシステムであった。

新しいシステムを聴いて感じたのは、設計の狙いどおりの結果がきちんと得られているということだ。ジッターの低減や徹底したノイズ対策といった配慮が、全て音に反映されている。やっただけのことが全部生かされているという印象だ。工業製品というのはこうでなければならないと思う。無駄なところにコストをかけたのとは正反対の、製品作りの真髄を見せられた気がしたものである。


さてカロッツェリアXと同時に発表されたのが、スピーカーの新しいラインナップRS-TS10シリーズである。少しだけ予告をしておくと、TS10シリーズはこれまでのTS1シリーズのジュニア・バージョンとして開発された。価格もそれだけ抑えられているが、TS1ではサイズが大きい、コストがかかるといった声に応えて設計されたものと聞いている。それだけにトゥイーター、ミッドバス、サブウーファーのそれぞれに徹底した高音質・高信頼設計が施され、稀に見る完成度を獲得した。実際にどんな製品ができ上がってきたのか。次回からはこの新RS-TS10シリーズに焦点を当てて、山形県天童市にある東北パイオニアでの取材も交えながらお伝えしてゆくことにする。ご期待いただきたい。

2006/4/27 [TEXT:井上千岳 / PHOTO:伊倉道男]