タイムアラインメントとイコライザーは、現代のカーオーディオにとって欠かせない基本的な信号処理である。ことに前者は、デジタル・システムならではのメリットだ。これがあるからこそ、車でも本格的なオーディオが楽しめるようになったのだといってもいい。なぜか。それは以下の説明を読んでもらえば自然にわかるはずである。
タイムアラインメントというのは、時間的な整合という意味だ。整列と言い換えてもいいが、つまり時間的に一致しているということ。何の時間かというと、耳に到達する音波の時間である。
ホームオーディオではリスニング位置について、左右のスピーカーの真ん中、三角形の頂点ということをよくいう。つまり両方のスピーカーから等距離ということだが、なぜそれが必要か。もし左右からの距離が同じでないと、それぞれのスピーカーから出る音が左右の耳にずれて到達することになる。本来同じ瞬間に放射されたはずの音波が、左と右で違う瞬間に聴こえる。これでは正確なステレオにならない。このため等距離ということをやかましくいうのである。
カーの場合はどうだろうか。運転席でも助手席でも、必ず左右のどちらかに寄っている。つまり左右のスピーカーからの距離が等しくないという状態である。例えば運転席なら(国産車の場合)右のスピーカーの方がずっと近い。だから左のスピーカーの方が遅れて聴こえることになる。ところがリスニング位置は動かせない。そこで信号の方でどうにかしなければならないわけだ。
同じことは片方のチャンネルのユニットどうしでも起きる。普通トゥイーターとウーファーは別々の位置に取り付けられる。トゥイーターはミラー裏とかピラーなど比較的上の方だし、ウーファーはドアが一般的だ。さらにサブウーファーとなるとリアに取り付けられることが多い。こうなるとそれぞれのユニットからの距離はバラバラになる。ユニットどうしのずれは、ステレオになるならない以前の問題だ。音が変わってしまう。極端な場合は歪みが出る。調整不足のシステムで、サブウーファーだけ遅れて感じることがあるのもこのためである。
このようなユニット間の距離の差、左右の距離の差を解消するために行うのが、タイムアラインメントという信号処理である。
原理的にはそう難しいことではない。信号を適宜遅らせるだけのことだ。ディレイといって信号を遅延させる回路がある。この回路を通して、信号を遅らせるのである。デジタルでは比較的簡単にできる。
音波は温度によっても変わるが、ほぼ毎秒300mで空気中を伝わる。すると1秒の1000分の1つまり1ミリ秒で30cmという計算になる。これに基づいて各スピーカーまでの距離と時間差を計算し、それに合ったディレイをかけるのである。
ただしデジタルとはいっても信号を早めることはできない。遅らせるだけだ。そこで普通は一番遠いユニットを基準に、それとの距離の差を測ってディレイをかけることになる。例えば左のウーファーが一番遠くて、運転席上の人間の耳までの距離が2mだったとする。これに対して右のウーファーまでの距離は80cmだとしよう。この場合距離の差は120cmだ。すると右のウーファーには120÷30=4ミリ秒のディレイをかければいいことになる。
普通ヘッドユニットやプロセッサーでは、距離を入れれば自動的にディレイをかけてくれるようになっている。機械が自動的に計算してくれるわけだが、実際に聴いてみてしっくり来なければ微調整を行うのが一般的だ。すべてのユニットからの音が一致して同じ瞬間に聴こえるのが理想である。

<図左:タイムアライメント前> 車に座るとスピーカーとの距離は等間隔ではない。右ハンドルであれば必ず右側のスピーカーが近いはず。これだと右側からの音が強く聞こえてしまう。 <図右:タイムアライメント後> タイムアライメントを施すと、擬似的にスピーカーまでの距離が等間隔になる。これにより左右から聞こえて、まるでステージが目の前に広がっているように聞こえてくる。
次にイコライザー。一般的にはグラフィック・イコライザーのことを指す。信号をいくつかの帯域に分けて、その帯域ごとの強さを視覚的に表示する。棒グラフのようなあれである。そしてこの帯域ごとのレベル(信号の大きさ)を増減するのがイコライザーの機能だ。
というのも、車の中は普通の部屋と違って狭い。しかも特殊な形をしている。このためスピーカーからいくら平らな音を出しても、車室内の反射や何かで必ずしも平らに聴こえないことが多い。またスピーカー自体のくせというものもある。こういった現象を矯正して平らに聴こえるようにするのが、イコライザーの役割である。
普通はユニットごとに特性を調整するのではなく、左右両方の音を一括して調節するようになっている。少し精密なものになると左右別々に調整できるものもある。またどの程度のステップで調節できるかという点も、製品によって変わる。細かい方がより精密だということは確かだ。
それならイコライザーで全く平らな音にできるかというと、それは不可能だ。
イコライザーには中心周波数といって、各帯域の中心となる周波数がある。それを中心に山型のカーブでイコライジングが行われるのである。いわばたるんだロープのところどころを棒で支えているようなものだと思えばいい。だから完全に平らにすることはできない相談である。だからイコライザーの使い方は、特に耳に付くレスポンスの凹凸をある程度抑えることだという程度に思ってほしい。
ただし測定値に基づいて自動的にイコライザーを調整してくれるシステムがあれば便利だろう。実はそういった製品はすでに発売されている。聴感だけで調整するのは意外に難しいので、こうした機能を使った方が正確なイコライジングが行える可能性が高い。
なおグラフィック・イコライザーとは別にパラメトリック・イコライザーというものもある。これは中心周波数や山の形(カーブの傾き)を変えることのできるイコライザーのことで、グラフィック・イコライザーより一段精密な調整ができる。ただそれだけに聴感だけで調整するのはいっそう難しい。製品によってはパラメトリックとグラフィックの両方を併用しているものもあるが、いずれにしてもある程度の経験が必要である。