新製品に見る技術と先進性:井上千岳の「BEWITH、その実力に迫る」

第1回「A-110Sに驚愕する」

超高性能部品群

BEWITH A-110S

BEWITH A-110S

これだけだとどこがすごいのかさっぱりわからないだろう。しかしまずパーツの性能を見てみるといい。例えば信号系のコンデンサーはポリプロピレン・タイプだが、電極のアルミ箔から鉛フリー無酸素銅のリード線がじかに出ている。そして外装に特殊樹脂を使用し、信頼性と温度特性を高めた構成である。

あるいは金属皮膜抵抗。リファレンス・シリーズでは許容差1%以内だったが(これでも非常に高精度だ)、ここでは許容差0.1%以内という超精密抵抗を使用している。実に10倍の精度。パーツといのは精度を上げれば上げるほど音質が優れたものになる。回路がそれだけ設計どおりに動くからだ。また個体差がなくなるため、回路全体の誤差が小さくなる。それが低ノイズで解像度の高い再現力を生み出すことになるわけである。

入力段のオペアンプにも米国TI(テキサス・インスツルメント)社製が採用されている。オペアンプというのはアンプ回路を1個のICの中に集約したパーツだが、製品によってグレードの違いが大きい。オーディオ用に使われるのはそれでもハイグレードなパーツだが、A-110SのそれはTHD(全高調波歪み)0.00003%という超低ノイズのオペアンプだ。またレスポンスもリファレンス・シリーズの約6倍という。入力段は信号を取り込む部分だが、ここでの劣化はその後増幅されるから影響が極めて大きい。パーツ自体のノイズを極限的に減少させることによって、アンプ全体のノイズや歪みを徹底して低減する仕組みである。

出力トランジスターは東芝製の2SA1987および2SC5359というハイスピードなスイッチング速度を誇るデバイスである。これも通常のトランジスターより10倍ほどコストがかかるという。超精密・超高速なレスポンスを持ち、色付けのない音調と立ち上がりの速いレスポンスになくてはならないものとなっている。

このほか専用に開発された大型トロイダル・トランス、ルビコン社製の超低インピーダンス電源コンデンサー、70μm厚のパターンをR形状で引き回した回路基板など、ひとつとして凡庸なパーツは使われていない。全てが精度の塊のように一体として動作する。A-110Sはそういうアンプである。

BEWITH A-110S

いい音のするアンプはほかにもあるだろう。しかしA-110Sを聴くと、アンプの音というものが感じられない。信号がそのまま大きくなってスピーカーから出てくるという印象しかないのだ。アンプの理想は増幅作用を持ったケーブルといわれるが、この製品はまさにそれを地で行っている。いま(ホームも含めて)最も理想に近いアンプといっていい。

さてA-110Sは本来、ミラーメディアMM-1を鳴らすために作られた。ここで聴いた音もMM-1だからこそ得られたといってもいい。次回はそのMM-1について掘り下げてみることにしたい。

2006/3/2 [COPY・井上千岳 PHOTO・伊倉道男]