【期待が外れた】トヨタ オーパ…財布の紐を緩められなかった“新種” | Push on! Mycar-life

【期待が外れた】トヨタ オーパ…財布の紐を緩められなかった“新種”

年末年始の読み物「期待外れの車」シリーズ。ディスるわけではありません。関係者の期待を背負って登場したものの市場は反応してくれなかった、いわば隠れた名車、悲運のモデルを紹介していきます。

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トヨタ・オーパ(1999年の東京モーターショーに展示、2000年発売)

年末年始の読み物「期待外れの車」シリーズ。ディスるわけではありません。関係者の期待を背負って登場したものの市場は反応してくれなかった、いわば隠れた名車、悲運のモデルを紹介していきます。筆者はおなじみ岩貞るみこさん、一番手はトヨタ『オーパ』。ありましたねえ、そんな車が---。

トヨタ・オーパが登場した1999年。バブルはすっかり崩壊し、クルマ業界は混沌のなかにあった。なにが混沌かというと、クルマ・ヒエラルキーがなくなったということだ。「いつかはクラウン」。その言葉に代表されるように、クルマすごろくの上がりは、高級セダンだったはずだ。『クラウン』、『セルシオ』、欧州の高級車たち。バブル期に“六本木カローラ”といわれたBMWも、男の甲斐性を見せ付けるかっこうの材料だったわけだし。

けれど、コンパクトカーからこつこつとすごろくの駒を進めてきたというのに、バブルの崩壊と同時に、これ以上、上に上がるのは無理。行き場がなくなった男の甲斐性を気にする部族は、まさか駒をうしろに戻すわけにはいかない。困窮し、クルマ選びに右往左往した結果、一筋の逃げ道への光を見つける。ミニバンである。これなら「いやあ、家族のためにさあ」という自分の上の世代にはなかった価値感を差し込むことで、さげすみの視線から逃れられるからだ。バブル経済のかげりと同時に発展していったミニバン時代。

でも、やっぱりミニバンだけじゃね、と登場したのが、オーパのような、ミニバンでもセダンでもワゴンでもない、新種である。新しい価値感でつくられたクルマは斬新で、後部座席が広くて荷物スペースも使いやすい。ミニバンにはなじまなかった人も、おお、これは、ついに新時代の幕開けか! と、心をおどらせた(と思う)。

しかし、残念なことに、日本人は見慣れないものへの抵抗感が強かった。なんたって日本人は、みんないっしょが大好きだからだ。「これって、どのクルマと比べればいいの?」「みんな、このクルマのこと知っている?」。当時、私が周囲の女性からたずねられた質問だ。いや、好きに乗ってくれればいいんだけどさ。乗りやすいよ。そう答えても、立ち位置のわからないクルマは、敬遠されたようだ。

クルマ選びには、理由が必要で、どうして数あるクルマのなかから、このクルマにしたのか、相手を簡単に納得させられる説明ができることが大事なのだ。カテゴリーに属さない、新種の生物は、生き残るためには、よほどムーブメントを作らないとだめだという典型パターンである。きっとバブルど真ん中なら、「ノリで買っちゃった」という「理由と説明」が成立したのだろうけれど、財布の紐が堅くなる時代では、ちょっと難しかったかも。いいクルマなのに、一代で姿を消しちゃって残念である。

《岩貞るみこ》

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