中卒両親が娘の難関中受に挑戦、桜井氏が語る「下剋上受験」メソッド | Push on! Mycar-life

中卒両親が娘の難関中受に挑戦、桜井氏が語る「下剋上受験」メソッド

 両親ともに“中卒”。そんな家庭に育った子どもが、塾にも通わず親子二人三脚で猛勉強。桜蔭学園受験に挑戦した軌跡を描く「下剋上受験」(産経新聞出版)という本をご存知だろうか。著者の桜井信一氏が講演を行ったようすを紹介する。

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公演会場のようす 2016年12月6日
  • 公演会場のようす 2016年12月6日
  • 小学5年生、6年生の受験相談「あるある」
  • 知識が定着していないと覚えたことを忘れてしまう
  • 逆指導などにより基本をしっかり確認させ、わかったつもりをなくす

 両親ともに“中卒”。そんな家庭に育った子どもが、塾にも通わず親子二人三脚で猛勉強。偏差値41から難関中高一貫校のひとつ、桜蔭学園受験に挑戦した軌跡を描く「下剋上受験」(産経新聞出版)という本をご存知だろうか。創作ではなく、著者の実体験をもとにしたノンフィクション作品だ。

 その勉強方法や教育方針は受験生をもつ多くの保護者の共感を呼び話題となり、2017年1月からTBS系列でドラマ化も決定している。

 ドラマ化を記念し、著者の桜井信一氏監修のマイナビ家庭教師・中学受験対策のコース(下剋上算数コース)を提供するマイナビは12月6日、桜井氏による講演「勉強は、人を、家族をここまで変える」を開催した。ブログからの書籍化、そしてドラマ化と話題を読んでいる「下剋上受験」メソッドについて迫った。

勉強で“もがく”ことで「生きる力」を身に付けよ

 「中卒の父」こと桜井氏は、名が知られるようになった今でも社会の偏見で苦労するという。講演依頼などでも失礼な依頼主、オファーも少なくないそうだ。それでも現在の成功があるのは、学歴がなくても「生きる力」が高かったからだと自己分析する。

 昨今の世の中は、たとえ大卒者でも“いい就職”ができるとは限らない。一定の年齢になると、仕事がないという話も聞く。しかし桜井氏は、「仕事がないとは思わない。それは勉強が足りない、生きる力が足りないからではないか」と問う。自身は、娘さんの学費のため、週末はチラシ投函のアルバイトをしたそうだが、収入を上げるため複数社からの依頼をまとめて作業を効率化するなど、工夫や努力を惜しまなかった。

 ちょっとしたことだが、前向きな工夫とその実践が生きる力を高めてくれる。この力は、ただ勉強して成績を上げるだけでは身に付かない。「勉強して成績を上げるために、もがき苦しんだ努力が、知恵となり生きる力になる」と桜井氏は主張する。そして、これが勉強をする意味だとする。

反骨精神で受験はさせたくない! 私立中を選んだ理由

 もがき苦しむことが、課題や問題を克服する能力につながる。桜井家の場合、父娘でもがき苦しんだが、娘さんも「勉強で小学生の楽しみが犠牲になったかもしれないが、今の学校も勉強も楽しいので後悔はしていない」と言ってくれているそうだ。だとしても、中卒だから、貧乏だから、という反骨精神は不要だという。「娘にはそういう気持ちで受験をさせたくはなかった」そうだ。負の側面をバネにしなくとも、勉強がわかれば学校や授業が楽しくなるからだ。

 経済的な理由から国立校の受験という選択肢もあったが、私立校の受験を選んだ理由は、「娘に裕福層の人たちとの交流で、自分たちと違う世界を体験してほしかったから」だという。国立校にも裕福層の生徒は少なくないが、やはり経済的な理由から国立校を選択する層もいる。そういった面からも、私立の中高一貫校なら、新しい学びや学校生活に触れることができると考えたそうだ。

 この選択は正解だったと桜井氏はいう。入学してみると、親の学歴や職業などで遠慮をする必要はなく、目立ったいじめもなく、良い友達にも恵まれた。下剋上入学でも、なんら遠慮する必要はなく、いじめなどの問題もなかったという。桜井氏は、このような学校の雰囲気や環境も、私立校にあえて挑戦する理由になると考えている。

 上の子が中学を受験すると、下の子も受験するパターンは多い。子どもを入学させたあと、次の子も同じような学校に入学させたいと思うのはなぜか。そう思わせる理由は、やはり指導者の違いではないかというのが桜井氏の分析だ。もちろん学校にもよるだろうが、難関校の受験を勝ち抜いた子どもは、自分に対して自信をもっている。「いじめはNO」と言う言葉で終わらせない指導。画一的ではなく、個性・自主性を伸ばす教育。これらと相まって、リテラシーの高い子どもが多ければ、いじめが起こる可能性は低いだろう。

 そう考えると、私立の学費も決して高いものとはいえない。親として子どもにできるだけのことをしてやりたいので、自分も頑張ることができたと桜井氏は語る。

できない子どもへの接し方

 親が受験勉強を支援する際の「あるある」に、「勉強しているのに結果がでない」「うちの子は出来が悪い」といった悩みを相談されることがある。桜井氏は、「このような発言を子どもの目の前でする親がいるが、それはよくない」と指摘。勉強や受験で自信をつけさせてやることが、次の勉強につながり、本人を変えることにつながるので、ネガティブに否定するだけでは解決にはならない。桜井氏の娘さんの場合は、書籍で紹介している「人生表」がモチベーションアップに効果的だったという。

 実際の勉強方法については、講演の最後に行われた「下剋上算数コース」(提供はマイナビ家庭教師)の解説が参考になった。このコースは、桜井氏が監修したマンツーマンの算数指導メソッドを受けられる特別コースだ。この説明の中で、「範囲が決まっているテストでは点が取れるのに模擬試験では点がとれない」「模擬試験で解けなくても家で復習したら解けた」といった悩みに対する対策が述べられた。

 このような問題が起きるのは、問題の本質を理解できていないから、復習するタイミングが悪いからだという。単元が終わるごとにそこでわかったつもりになっていても、単元が進むごとに忘れていってしまう。知識の定着に問題があるわけだ。

 そこでマイナビ家庭教師では、単元ごとの本質理解に重点をおき、わかったつもりを排除するようにしている。ある現役大学生(横浜国立大)は、生徒に習ったことを逆に教えてもらうような授業を導入しているという。聞いてわかったつもりになっていても、自分で説明しようとすると、知識の不完全さに気がつくことはよくある。それを克服するような授業で対応するそうだ。

反抗期を回避する方法は?

 講演では、受験生をもつ保護者のもうひとつの問題、反抗期についても触れた。

 誰にでもあると言われる反抗期だが、桜井氏の娘さんには反抗期らしきものはなかったという。それは異常だという考えもあるが、同級生の保護者との話でも「うちも反抗期はない」という家庭が少なからず存在するという。

 理由は、勉強が忙しいという面もありながら、子どもの不満への向き合い方に鍵があるのではないか。ならば、防ぐ方法があると桜井氏は考える。子どもが親に反抗するのは、何かがうまくいかないなど、不満があるからだ。そして、小・中学生レベルでは、それを自力で解決するのは難しいことが多い。親がこの悩みや不満をサポートできていれば反抗期を抑えることができるのではないか。

 確かに、子どもの不満や要求にただ応えるのではなく、しっかり向き合い解決を支援してやれば反抗期はコントロール可能かもしれない。ただ、通常はそれが難しいから反抗期に悩まされるのかもしれない。逆説的だが、子どもの問題に向き合う努力が重要ということだろう。

 桜井氏が最後にもう一度繰り返したのは「もがき苦しむことが子どもを成長させる」という点だ。難関私立受験はその手段のひとつであって目的ではない。最終的には生きる力を子どもに身に付けてほしい。そんなメッセージが伝わった講演だった。

《中尾真二》
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